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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ヴィーナス

2007年11月24日 | 映画(あ行)

やれやれ、男っていくつになっても・・・、と思ってしまいました。
モーリスは、若い頃持てはやされた俳優。
でも今は70を過ぎ、死人の役や、ほんの端役ばかり。
友人のイアンもご同様で、会えば体の不調の話ばかり。
そんな時、イアンの世話をするということで、彼の姪の娘、ジェシーがイアンの家に同居することに。
しかし、この娘がまた、思いっきり下品で無作法。
イアンは余計具合が悪くなる始末。
ところが、若い頃から女性と浮名を流してきたモーリスは、若くてぴちぴちの彼女に興味を持つ。
よこしまな気持ちは、ないでもないけど、体が言うことをきかない・・・と、そんなところでしょうか。

美術館の「ヴィーナス」の絵の前で、モーリスはジェシーに言います。
「男性にとって女性の裸は何よりも美しいのだ」、と。
モーリスは、その美しさに敬意をはらい、ジェシーを大切に扱います。
ジェシーは、親からも厄介者扱いされており、たぶんどこへ行ってもアバズレ扱い。
ボーイフレンドからでさえ、単なる便利なセックスの相手としてしか扱われていない。
そんな彼女が、正しく「女性」として愛されたときに、にわかに内側から光を放つようになってくる。
はじめは、こんな爺さん、くさくて気持ち悪い・・・そんなことを言っていたのですが。
このあたりの微妙さが、うまく描かれていると思いました。

老い、というのは残酷ですね。
若い頃はあんなにに光り輝いていた俳優。
顔はしわで覆われ、体も言うことを聞かず、体力もない。
友は一人また一人とこの世を去っていく。
そのように枯れつつも、なお、生、そして性への執着だけは残っている。
ちょっぴり、悲しくて、ちょっぴりおかしいストーリーです。

この主演、ピーター・オトゥールは、そのままモーリスに当てはまってしまう。
エーと、私、ピーター・オトゥールを昔はかっこよかったのに・・・といえる世代よりはちょっと若いです。
だから、特別思い入れがあるわけではありません。
でも、映画中の、モーリスの死亡記事に使われていた若い頃の写真も、ほんとに、ピーター・オトゥールのものだとか。
あちらの言葉では「ゴージャス」と言っていましたね。
よし、今度、「アラビアのロレンス」を借りてこよう!!是非。

少し前に、スマスマにアラン・ドロンが出ていましたよね。
あの、「太陽がいっぱい」の、完璧な美しい青年。
それを思うと、実のところこれもまた、老いの残酷さを感じてしまったものでした。
年齢を重ねることのよさは確かにあるのですが、元が美しければ美しいほど、老いは無残に感じてしまう。
そこいくと、もともとそこそこの私などは年をとってもさほどギャップは生じないわけで、まあ、それだけは幸いかも・・・です。

ステキに老いる・・・といえば、日本でいえば田村正和とか・・・。
このドラマの日本版を作るとすれば、彼がいいと思う。
ア、ちょっと失礼かな?立派にまだまだ主役を務めていらっしゃる。


2006年/イギリス/95分
監督:ロジャー・ミッシェル
出演:ピーター・オトゥール、ジョデイ・ウィッテカー、レスリー・フィリップス、ヴァネッサ・レッドグレーヴ

「ヴィーナス」公式サイト