「理由あって冬に出る」 似鳥鶏 創元推理文庫
学園ミステリです。
期待の新鋭デビュー作とありますが、確かに、新鮮。
コミック調の表紙はイヤだ、といいつつ、
この表紙は中身に非常にマッチしていて、色使いはシック。
これにも心惹かれてしまいました。
某市立高校美術部の葉山君が、このストーリーの語り手。
学園モノといえば、つき物の、七不思議・・・、
というわけでもないけれど、まず語られるのは幽霊譚。
ここの学校の芸術棟に、その昔、殺されて首を切られ、壁に塗りこめられた男子生徒がいて、
今も暗くなると壁から這い出てきて廊下を歩き回り、
人を見つけると手当たりしだいしがみついて、壁に引きずり込もうとするのだという・・・。
単に、伝説のはずが、最近、本当にそれを目撃したとのうわさが広まり、その謎を解くことになるのです。
ただし、ここでの探偵役は文芸部長の伊神さん。
彼はもっぱら「安楽椅子探偵」で、ワトソン役葉山君が手足となって推理の材料集め。
演劇部の三野や柳瀬さん、秋野さん、吹奏楽部の高島先輩等など、ユニークな人材揃いで、楽しく読み進めます。
そういえばこのストーリーには、謎の失踪者はいるけれど、血みどろの殺人事件はありません。
ただ怪談として、首無し死体はあるわけですが・・・、でも、火のないところに煙は立たないとも言いますよねえ・・・(?)
この探偵役伊神さんは、なかなか、変人ともいえる人物で、
人の思惑などお構いなし、わが道を行くところがあるのですが、なぜか憎めない。
考え事を始めるとまったく、あたりも見えなくなってしまい、食事も忘れるほどなので、なぜか葉山君はお世話をしてしまう。
ちょっと、ミタライと石岡君の関係に似てるかも、です。
しかし、このように人がよく、そこそこよく働き、気が利く、こんな葉山君みたいなコが、身近にいたらいいなあ
・・・なんて、思ってしまいました。
旦那にしたいNO.1。
それはさておき、この先も楽しみな作家です。次作を楽しみにしましょう。
満足度★★★★