goo blog サービス終了のお知らせ 

映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「サカタ食堂 おまかせ定食 坂田靖子よりぬき作品集 」坂田靖子

2012年02月17日 | コミックス
永遠の謎、プディング

サカタ食堂 おまかせ定食坂田靖子よりぬき作品集 (ピュアフル コミックス)
坂田靖子
ジャイブ


                    * * * * * * * * * *

先に見ました「サカタ食堂」の第2弾です。
坂田靖子さんの食べ物にちなむ作品を集めたもの。
そこで、出てきました!! 
なんと言ってもサカタ作品で一番印象に残っている"プディング"。


タルカム夫妻のシリーズより。
プディングはイギリスの伝統料理。
ついカスタードプリンを思い浮かべますが、それとは別物です。
しかし
「小麦粉でつくったタルトパイみたいな地に
シチューや煮込みを入れたり、フルーツやジャムを混ぜたりして
煮たり蒸したりしてあるヤツ」

と解説があるだけなので、
想像がつくようなつかないような、微妙なところがまた、好奇心をかき立てるのですが、
私にとっては何十年を経ても未だに謎です。
中でもクリスマスプディングと呼ばれるものは
「ドライフルーツと洋酒と香料がふんだんに使ってある、
とても密度の濃いナッツのパウンドケーキみたいなもの」

とのこと。
シュトーレンみたいな感じでしょうか。
相当甘く濃厚そうですが、ちょっぴりでいいので食べてみたいですね。


「ヨーグルト」では月のきれいな夜に、おけにいっぱいの新鮮なミルクを用意して、
それを月の光の当たるところにおいておくと、
絹のように冷たくて美しいヨーグルトができる、とあります。
絹のように冷たくて美しい!! 
「おいしい」でなくて「美しい」というところが普通じゃない。
それはもう言うまでもなくおいしいにきまってる、ということですね。


「さくらもち」は全4ページの超短編です。
全ページに桜の花びらが舞い、ほんわかしたムードに包まれています。
江戸時代。
お殿様のお小姓の鶴丸が桜の木の上で天邪鬼(あまのじゃく)に出会いますが、
天邪鬼は鶴丸がよほど気に入ってしつこくくっついてくる。
あまりに無礼なので鶴丸がなぐると、
桜餅をどっさり置いて逃げていきましたとさ。
それだけのお話なのですが、なんだかのどかでいかにも楽しい。


「バラエティギフト」は、さみしく一人のクリスマスを迎えた青年のところに、
「クリスマスの楽しいお茶詰め合わせ13ピースセット」が届きます。
どこから来たのかは謎。
しかし肝心のお茶の相手がいない。
そこでなんと、彼の片思いの女性とその彼氏を招くことに。
そうこうするうちになぜか、
青年は姫を守るナイトに、彼女はお姫様になっている。
さあ。彼はお姫様を無事にお城まで送り届けることができるかな?
ドタバタファンタジーをお楽しみください。


「サカタ食堂 おまかせ定食 坂田靖子よりぬき作品集 」坂田靖子 ジャイブピュアフルコミックス
満足度★★★★☆

「ブラック・ジャック創作秘話」宮崎克・吉本浩二

2012年01月05日 | コミックス
修羅場で生まれたブラック・ジャック

ブラック・ジャック創作秘話~手?治虫の仕事場から~ (少年チャンピオン・コミックス・エクストラ)
吉本浩二,宮崎 克
秋田書店


                  * * * * * * * *

「ブラック・ジャック創作㊙話」・・と聞いて私は、
手塚氏がいかに医学的知識を取り入れ作品を仕上げたか・・・、
そういう話かと思ってしまいました。
しかしそうではなくて、これは手塚治虫氏の人間離れしたモーレツな仕事ぶりを描いた作品です。


手塚氏が「ブラック・ジャック」連載を始める前、
氏は相当落ち込んでいた時期だったのです。
アニメは経営に失敗し昭和48年虫プロ倒産。
劇画ブームとなり、手塚氏の漫画のヒットも途絶えているという・・・。
そんな中でも、原稿の依頼をしたのが、「週刊少年チャンピオン」の名物編集長壁村氏。
この本ではほとんどヤクザのように書かれていますが、
しかし、この方のおかげで、名作ブラック・ジャックが誕生したわけです。
そして「ブラック・ジャック」、「ブッダ」、「三つ目がとおる」など、
大ヒット作が次々生み出されます。
まさに手塚氏は火の鳥、不死鳥のように蘇ったわけです。


ところがです、その仕事の仕方が尋常では無い。
いくつもの連載を引き受けているものだから、常に締め切りに追われている状況。
各社の編集担当者が詰めて、今か今かと仕上がりを待っている。
しかし手塚氏のこだわりも並ではなく、
自身が納得がいかないものであれば、すべて初めから書き直すことさえするという・・・。
粘って、粘って、その上まだ待たされたある編集者が、
いらだちのあまり壁に拳を打ち付けて、壁に穴を開けてしまったという逸話があるくらいです。
しかし、ねじりはちまきで20ページを8時間で仕上げてしまうと言うまさに神業・・・。
つまりはこの本はそうした逸話ばかりを集めたものすごい本なのです。


こんなに一度に様々な作品に取り組んでいれば、
どうしても乱作になってしまうだろうと思えるのですが、
私の記憶の中でブラック・ジャックのストーリーが途中で破綻していたり、
いかにもおざなりの話だったような記憶はありません。
つねに全力を尽くして取り組んでいたのでしょう。
アシスタントは何人もいて、交代もありますが、
もちろん手塚氏は一人しかいません。
こんな状況で、いったい手塚氏はいつ寝ていたのでしょうね・・・。
結局このような無茶な仕事の仕方が氏の寿命を縮めたのだろうと、
妙に納得できてしまいます。


夢と冒険に溢れた漫画作品の裏に、
このような実に生々しい人の生き様、ドラマ・・・。
今だから語られる手塚氏の実像。
すごい本です!

「ブラック・ジャック創作㊙話」原作:宮崎克・漫画:吉本浩二 秋田書店
満足度★★★★☆

「テルマエ・ロマエ Ⅳ」ヤマザキマリ 

2011年12月27日 | コミックス
ルシウスの長期滞在

テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)
ヤマザキ マリ
エンターブレイン


                  * * * * * * * *

テルマエ・ロマエも4巻目となりましたが、なんとここで意外な展開。
ここまではルシウスが、短期間で古代ローマと現代日本を行き来していたのですが、
今作ではルシウスが戻れなくなってしまいます。


皇帝ハドリアヌスとお風呂にて(?)会談中の所、
例によって突如時空を超え"伊藤温泉"にやってきてしまったルシウス。
そして月の夜、桜の舞い散る露天風呂で、美しい女性を見てしまった。
「こんな美しい平たい顔族を見たのははじめてだ」とルシウスに言わせしめたのは、
伊藤温泉きっての才女、さつき。
彼女はなんと古代ローマおたくで、
ラテン語をも解し、
ルシウスが平たい顔族で言葉を交わし合えたのも彼女がはじめて。
しかし、このさつきさんの生い立ちがまた、実にユニークでつい笑ってしまう。
参りました。


それにしても、この作品中の日本人は皆人がよくて親切ですよね。
突如なんの持ち物も持たず素っ裸で現れた、
言葉の通じない変な外人に、なんと寛大なこと・・・。


どうしてもローマに帰れなくなってしまったルシウスは、
とある温泉旅館に住み込みで働くことに。
さつきに恋心を抱きつつ、日本の温泉の"サービス"を学んでいくルシウス・・・と、
これはまだしばらくの長丁場となりそうなのです。


ルシウスの目には日本の何もかもが新鮮。
そういう所が、私たちが読むのに非常な面白みとなるのですね。
向学心に燃えるルシウスというのも、実は日本人の気質に近い。


この巻のラストではなんと、馬に異常に好かれてしまったルシウスという、
これまた意外な展開をみせまして、いったいこれがどのように発展するのやら、見当もつきません。
うう・・・次巻が待ち遠しいですね。


さて、今作はいよいよ映画化決定、
阿部寛さんがルシウス役で、2012年4月28日公開。
う~む、なんだかんだ言いながら、みてしまいそうです。


「テルマエ・ロマエ Ⅳ」ヤマザキマリ エンターブレイン ビームコミックス
満足度★★★★☆

「チャンネルはそのまま! 4」 佐々木倫子

2011年10月30日 | コミックス
北海道のウンチクは好きですか?

チャンネルはそのまま! 4 (ビッグ コミックス〔スペシャル〕)
佐々木 倫子
小学館


             * * * * * * * *

さて、4巻目になりました。
北海道☆テレビの雪丸花子嬢は、相変わらずのおバカぶりを発揮しています。
この作品、第一巻が出たのが2009年。
ですが相変わらず仕事に無知ですね、この方は・・・。
まあ、そういう役回りなので仕方ないか。


この巻では、切れ者の山根君が情報部へ異動させられてしまいます。
彼はテレビ局の華は報道部と思っており、落ち込むのです。
情報部というのはつまり、お茶の間向け生活情報なんですね。
それで彼にはちっとも興味がないケーキの紹介などをするのです。
でも、どうも彼の撮ったケーキがおいしそうではない。
つい、そういうことなら雪丸の方が、と私たちも思ってしまうのですが。
一時はストレスでジンマシンまで作りながら、
彼はこれまでの記録や、ケーキのデータなどを研究して
どんどんノウハウを身に付けていきます。
別にケーキを好きではなくても、おいしそうに撮ることはできる。
どこまでもまじめに取り込む山根君の勝利ですねえ・・・。
若いうちにいろいろなことを研究させろという、上部の親心なのかも・・・?


「雪と雪丸」は、いかにも北海道らしいネタ満載。
山根君が雪国育ちではないので、北海道の冬に驚くことも多いようです。
雪丸が調子に乗って、先輩風を吹かしてアレこれレクチャ-。
札幌育ちの私も、これは当たり前と思っていることも、
本州の方には驚くことが多いようですね。
冬道で荷物を運ぶときはそりに載せるとか。
屋外の灯油タンクから石油が盗まれることがあるとか。
冬には冬季仕様のすべりにくい靴を履くのですが、
山根君はそれを知らず、雪道でも走り回る雪丸に驚嘆したりします。
しかし、本当に凍結路面の時は、
どんな靴を履いてもすべるので、私は冬が苦手です・・・。
お年寄りが転ぶと即、骨折という事態になってしまいます。
私もだいぶお年寄りに近くなってきているので・・・。
寒いのはうんと着込んで何とかなりますが、ツルツル路面はどうにもなりません。


最後の「同期」は、いつになくちょっとリアルなお話。
同期採用もそれぞれの持ち場に別れているのですが、
時として、それぞれの主張が食い違うことがある。
たとえば営業と報道や情報。
いつも仲のよい彼らですが、今回はぎくしゃくしてしまうのです。
そんな中でも屈託がないのは雪丸嬢で、
彼女のがんばりがみんなの気持ちを動かします。
彼女の働きは、やっぱりドジで失敗だったりするのですけれど。


毎日何気なく見ているTVですが、
日々局ではこんなすったもんだが繰り広げられているんだなあと思うと
ちょっと親近感がわきますね。


「チャンネルはそのまま! 4」佐々木倫子 小学館ビッグコミックスピリッツ
満足度★★★☆☆

「天才柳沢教授の生活 31」 山下和美

2011年10月02日 | コミックス
華子、病院の先生にびびる

天才 柳沢教授の生活(31) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


             * * * * * * * * 

やっとリアルタイムの最新刊です。


まずは、213話「パパさんたるもの」
私は、柳沢教授の長女いつ子さんの長男、まもるくんが出てくる話が好きです。
あまりにも純粋無垢なまもるくんは、
やや障がいがあるのかな?とも思えたのですが、
周りの皆の理解で、状況は少し改善したように思われます。
いつ子さんがすっかり落ち着いた母親ぶりを見せるので、
まもる君のパパの方が焦ってきます。
いつもひどく忙しくて、ろくに遊んでもあげられない。
ある休日、息子とキャッチボールをしようと川原へ出かけますが、
そんなところへもひっきりなしに電話がかかってきます。
そんな時、まもるくんは・・・・。
いつもふんわりおっとりのまもるくんがみせた、
一時の強い感情と実行力には目を見張りますね。
子供はこんな風に成長していくからすばらしい。
・・・などとオバサンは感慨にふけってしまうのでした。
それにしても、この方がケータイなくしたらホントに困るだろうと思いますが・・・。
いやいや、三雄パパもさすがです。
さて今さらですが、教授は孫と川原で遊ぶのもスーツ姿なんですねえ・・・。
チョイわる親父風に着こなしてみて欲しい気がします。
教授はクールビズをどう乗り切るのでしょう・・・??


第215話「こわい先生」
この表紙の絵になっている作品です。
こわい先生というのは、タマが行く動物病院の獣医師。
今までは別の病院にかかっていたのですが、
柳沢教授がどこかから評判を聞いたのでしょうか、
華子と共に新しい病院にタマを連れてきました。
けれど診察室から、先生の大きな怒鳴り声が聞こえてくるので、
華子はこわくてびびってしまいます。

「フェレットはまだ日本ではペットとしての歴史が浅いのに
安易に売ったり買ったりするから、
・・・だから日本のペット業界は!!」
「これだからダックスフントは!! 
また股関節脱臼だよ!!何が品種改良だ!!」


先生は華子に怒っているのではありません。
「いろんな悪いこと、全部に怒ってた・・・」そう気づく華子ちゃんは、
やっぱり賢い子ですねえ。
今時のペット業界や、動物病院のあり方にちくりと釘さす作品であります。


町内の自治会長となり、ゴミ問題に取り組む柳沢教授の話、
216話「あたらしそうな公共」も面白いのですが、
私は最後の218話「ピンぼけの思い出」が好きです。

それはまだ教授の二人目の子供が生まれて間もない頃。
長女いつ子がちょうど華子ちゃんくらいでしょうか。
お母さんは、教授が撮った写真の中に、
一人の女性が写っているのを発見します。
ややピンぼけですが、髪の長い人のアップの写真。
家事と育児に精一杯のお母さんは、
ふと自分の疲れ果てた姿を鏡の中に見て愕然とします。

こんなボロボロじゃ・・・
お父さんだって嫌気がさすわよ・・・
私なんか・・・


そしてお母さんは、子連れで大学に潜入します。
その写真に写った人物を探そうと・・・。
髪の長い美人の正体も傑作ですが、
大学をスパイするお母さんもステキ。
教授とお母さんの若い頃の一コマ。
時を自在に行き来するのも、このシリーズの魅力です。


「天才柳沢教授の生活 31」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆

「天才柳沢教授の生活 30」 山下和美

2011年10月01日 | コミックス
食事を共にする人がいる幸せ

天才 柳沢教授の生活(30) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


             * * * * * * * *

この巻はお気に入り作品が満載でした。


まずは冒頭207話「進化する表情」
教授たちが、自分の娘を嫁がせる時の複雑な心境について話をしています。
悲しいとか、悔しいとか、寂しいとか・・・。
しかし、柳沢教授はきっぱりと
「そんな気持ちは、私にはさっぱりわかりません。」
結婚した3人の娘とも、今まで通り会って話しているから何のかわりもない
というのです。
それを聞いていたヒロミツくんが、おそるおそる
「世津子さんでもそうなんですか?」と聞くと
「そうですよ。たとえ恩田ヒロミツくんが世津子と結婚したとしても
本人同士の自由ですから私は反対しません」
何かが違うと思ってしまうヒロミツくん。

そんな教授が、孫の華子ちゃんが
「どんぐり組の春男君からプロポーズされた」と聞いたとき、
ほんの一瞬見せた動揺。
父は、娘の結婚に動揺なんかしないと割り切っていた世津子なのですが、
この父の表情に考えさせられてしまった。
なんで私なら平気で、華子なら動揺するのだろう・・・。
けれど、その秘密は、さすがのお母さんならわかっています。
教授本人も解っていないのに、
やはり揺れ動いてしまう感情というものがあるんですねえ・・・。
何事にも動じない教授が、ドギマギしてしまうシーンというのが、
実は楽しかったりします。


211話「みんなの番長」
「朝焼け番長 男!!金太郎」
いきなりそういうコミックのページから始まります。
思わず何かの乱丁かと思ってしまいます。
そうしたら、ページの隅の方に小さな字で
「ご覧の作品は"天才柳沢教授の生活"です」
と、注釈が入っていたりする。
つまりこれは華子が読んでいた漫画だったのです。
パパが中学の頃愛読していた漫画なのですが、
すっかりハマって"番長"にあこがれてしまった華子。
どこかに番長はいないのかな・・・
番長を捜し求める華子。
そんなときこんな話を聞きます。
「毎朝同じ時間に起きて、一日中無駄口をたたかず、
夜は家族にたらふく飯を食わせて寝る。
そういう生活を20年一日も休まず続ける。
それが本当のタフガイだ。」

そうです、華子の探していた番長はすぐそこに・・・。
そうですね、
強くてかっこよくて・・・、
私たちはついそういうヒーローを求めるけれども、
本当にカッコいいのは、地道に家族のために働く人々。
偉くなくたって、有名じゃなくたって。
こういう振り返りは時には大切だなあ・・・と感じ入った次第。


212話「ずっとあなたが」
これは、具合が悪くて寝込んでしまったお母さんが見た夢のお話です。
お母さんは大きなお屋敷の令嬢で、教授がなんと執事!
しかし、教授が執事という配役は、ぴったりな感じはしますねえ。
慇懃無礼という感じが・・・。
令嬢は密かにこの執事を好きで、
せめて一緒に食事をとりたいと思っているのですが、
杓子定規な執事はけっしてそうしようとしない。
年月は過ぎ、次第に年をとりしなびていく「お嬢様」は
結婚もせず、お屋敷に住み続けているのですが、
思いは叶わず、いつもたった一人の食事。
何とも切ないのです。

夢から覚めたお母さんは、台所で食事の支度をしている教授に
「一緒に食べましょう」
と言うのですが、その答えは・・・?
こういうのを見ると、結婚も悪くないと思いますね。
食事を共にする人がいる。
本当にささやかだけれど、幸せってそんなものかもしれません。

「天才柳沢教授の生活 30」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★★


「天才柳沢教授の生活 29」 山下和美

2011年09月30日 | コミックス
教授、母を想う

天才 柳沢教授の生活(29) (モーニングKC)
山下 和美
講談社


             * * * * * * * *

この作品、最新刊は31巻まで出ているのですが、
私がぼんやりしていて、この巻以降まだ読んでいませんでした。
が、ここで3巻もまとめて読めるのは存外の幸せであります。
この際、3巻連続でご紹介しましょう。


さて、この巻の表紙となっているのは、
206話「母のおもかげ」。
柳沢教授は、少年時にお母さんを亡くしているのですね。
お母さんのお墓参りに来た教授が、
お母さんの亡くなったときのことを回想しています。
当時から大人びた子で、お母さんに甘えたことなどないと思っていた良則少年。
父親が仕事で不在中に息を引き取った母の、
医師への連絡や、葬儀の手配、親戚への連絡をてきぱきとやりとげる。
妹や弟が泣き悲しんでいるというのに。
そんな息子を見た父親が、
亡き母の枕元に息子を呼び、
「母さんとちゃんと話をするように」
といって、二人きりにするのです。

僕は何事も無駄なくやって
ろくに母の顔も見ないで
でも いつもほつれがかがってあって
靴はぴかぴかで
僕は甘えることもしないで
でも いつも笑っていて


本当にきれいなお母さんです。
大人びた良則少年を理解し丸ごと受け入れて、
そしてちょっぴりおもしろがっていたようにも見受けられますね。
そうした大きな愛にきづいた良則少年。
いくつになってもお母さんは、おかあさん。
ちょっぴり切なさがこみ上げる一作でした。


「205話 ペンがない」
お母さんがデパートの試着室で着替えをして教授に
「おとうさん、どうかしらこれ」
と聞くのですが、教授はひとこと
「パンダのようですね」
さて、次の朝、お母さんは怒ってひと言も口をきかないのですが、
教授はぜんぜん気づいていない。
ところが出がけに、愛用の万年筆がなくなっているのに気がついて、
うろたえてしまいます。
いつもの時間より遅れて、髪を乱して出かけた教授を
娘の世津子が不思議そうに見送る。
実は怒ったお母さんが、隠してしまっていたんですね。
そのいきさつを聞いた世津子は
「そーいうところはわたしとヒロミツも 父さん母さんも同じなんだー」。

この万年筆は、お母さんがお父さんにプレゼントしたもので、
そのため余計に教授は愛着を持ってずっと使い続けていたわけです。
夫婦の機微といいますか、長い生活の呼吸が見えるようで、味わい深い一作。
でも結局最後まで、教授はお母さんが何故怒っているのか、
というか怒っていることにも気づいてなかったみたいですが。
でも、教授の「パンダ」発言には多分全く他意はないのでしょうね。
パンダみたいに太っているとか、
パンダみたいに可愛いとか、
どちらでもなくて、ただ単に見た目がパンダに似ている。
それ以上でも以下でもないのでしょう、きっと。
この場合、一度は腹を立ててしまったけれども、
お母さんはきっとそのことに気づいたのだと思います。
ところで本作のサブストーリー、
吉田准教授の教授への推薦の件が、
ラストページでニヤリとさせられるオチがあります。


他に、教授の孫、華子がお父さんのリストラを心配して、
何とか自分もお金を稼ごうと奮闘する
「204話 労働の価値説」も大好きでした。

「天才柳沢教授の生活 29」山下和美 講談社モーニングKC
満足度★★★★☆

「海街diary 4 帰れないふたり」 吉田秋生

2011年09月03日 | コミックス
ヒマラヤのツル?

海街diary 4 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館


            * * * * * * * *

待望の第4巻です。
三人姉妹が4人姉妹となって、二度目の秋。
古都鎌倉で息づく、それぞれの生活と恋。


この巻では、すずと風太がいい感じになっていきますね。
といってもまだ中学生。
どっちも不器用で初初しくて、読者私としてはもう、うれしくてしかたありません。
誕生日にクリスマス・・・。
何をプレゼントすればいいのかな?
はい、どうぞ悩んでください。
そういうのがいいんです!

以前すずがちょっぴりあこがれていた多田君は、
彼女がいるだけあって、風太に正しいアドバイスをくれます。

「女の子」が好きなものじゃなくて、「浅野」が好きなものは何なんだよ。
ネックレスとか、浅野がそういうちゃらちゃらしたもの付けているのは見たことがないし、
第一そういうのは重いよ。


友人の将志は、「えっ、重いって、500グラムとか・・・?」
こんな奴にアドバイスを求めてはいけません。
それで、この二人が結局どんなものをプレゼントにしたのか。
それは、とても中学生らしく慎ましくてかわいらしいもの。
そしてちょっぴり二人の気の合うところも見えて、ステキです。
にくいよ、この!!


一方、年が近いだけあって、反発し合うことも多い、上の二人、幸と佳乃。
それぞれ「愛の旅人」と「愛の狩人」と呼ばれています。
本巻では、この二人にそれぞれ新しい恋が生まれたのや否や、
微妙なところではありますが、
喜ばしいことでもあります。
今度は妻子持ちでも高校生でもなく、いいんじゃないでしょうか。
クリスマスイブに居酒屋で皆が鉢合わせ。
これもまた一興であります。


そしてまた今回うれしかったのは、
かねてよりの謎、変人と呼ばれる三女、千佳さんの視線の先にあるものが見えたところです。
千佳さんの好みのタイプは「ヒマラヤのツル」みたいな人。
・・・ということで全く意味不明だったのですが、
ちゃんとその意味がわかるようになっていました。
そもそもヒマラヤにつるなんていないじゃん、と思うあなた。
ヒマラヤ山脈の高所を飛び越えて渡る鶴がいるそうですよ・・・。


この街に暮らして2年目になるすずちゃんの目を通して、
姉妹やサッカーチームの友人たちだけでなく、
付近の人、お店の人・・・いろいろな交流の輪が広がって行く。
期待にそぐわず、楽しい一冊でした。
また次が待ち遠しい・・・。

「海街diary 4 帰れないふたり」吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★★

「信長協奏曲 5」 石井あゆみ 

2011年08月19日 | コミックス
袋のねずみ・・・?

信長協奏曲 5 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


              * * * * * * * *

発売したてほやほやの第5巻!

まずはいきなり、木下藤吉郎の改名のシーンがありますね。
織田軍を四軍団に再編成し、その大将に柴田勝家、丹羽長秀、明智光秀、木下藤吉郎が任命される。
その時、木下藤吉郎がすかざず、「皆さんの名前を一文字ずつもらって羽柴秀吉と名乗りたい」と申し出る。
つまりはおべんちゃらだよね・・・。
今まで秀吉はそんなに嫌いじゃなかったけど、
この本を読んだら、だんだんキライになって来ちゃったな・・・。
それはもう、彼がはじめから今川のスパイとして登場して来ちゃったこの作品の宿命で、しかたありませ~ん。
しかし、サブローは
「秀吉」ってのは有名な人と同じ名前だからいいんじゃない?
てなもんです。
脱力~・・・


さて、それからまた、この作品がタイムスリップものだったことを思い出させる人物登場!
松永久秀という小国の大名。
強面のこの男、いきなり派手な背中の彫り物を見せて登場!!
つまりはヤーさんなんですけど・・・
う~む、この世界、一体ナニモノの意図なのか、
平成の世と戦国時代にタイムポケットがあるんだねえ・・・。
人選も何か意味があるっぽい。
興味は尽きないけれど、まあ、ここは最後まで謎なのではないかな?
ただ、きっとすべての配置には意味があるんだよ。


一方、お市の方の長女茶々は、まだ赤ちゃんだけど、すごく活発!!
今あるイメージとしては、すごく活発なのは三女の方だけどね・・・。
秀吉の妻となるなら、茶々が活発というのは納得できる気もするね。


まあ、それはさておき、この巻ではサブロー信長、ピンチです!!
将軍足利義昭が各地の大名に信長討伐令を発した!!
それを受けて、同盟を結んでいた浅井家が寝返ってしまう。
朝倉・浅井両軍から挟み撃ち、袋のネズミとなる寸前のサブローの打った策は・・・!!

的確・迅速な状況判断と決断力。
リーダーの素質はこれですねー。


今回の表紙、横顔アップのサブロー信長は、さすがにもう高校生ではなく、
そこはかとなく思慮深く、貫禄があるようにさえも見受けられる・・・
できすぎですよー。
いや、もう既に、これが私たちの知っている信長ですから・・・
次巻は2012年初頭発刊ですって・・・。
うわあ、待ち遠しい。

「信長協奏曲 5」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「信長協奏曲 4」 石井あゆみ

2011年08月18日 | コミックス
サブローとミッチー

信長協奏曲 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


             * * * * * * * *

本物の織田信長が「明智光秀」になっていた!
そういう衝撃的なところで、前巻は終わったのでした。
となれば、光秀はまず信長の配下になるわけですが・・・。
姿形だけでなく声もそっくりなんですよね。この二人。
それではまずいだろうということで、光秀は目だけを出した覆面姿で通すことにする。
肺を患っているので、皆さんに移さぬように・・・ということで。
いや~、それにしてもですよ、サブローにまともな知識さえあれば、
明智光秀とくれば心穏やかではないはずなんですが・・・。
だめですよ~、ぜんぜん。
彼は本能寺の変で信長を殺したのは「あいださん」だと思ってるし・・・。
頼みの綱、「現代」から持ってきた日本史の教科書も、この巻の中で灰になってしまった・・・。
いやあ・・・、全くどうなるんでしょうね。この二人。
ここで見る限りは光秀の方はぜんぜん野心なんかなくて、ひたすらサブローに協力的だし、
サブローも頼りにしてるよね。
二人だけの時はミッチーなんて呼んでる。
そもそも、本能寺の変で死ぬのはどっちなのか?という問題もあるよ。
まあ、今から心配しても仕方ないけどね。
この先の展開が楽しみだよねえ。


さて、先にご紹介したお転婆な信長の妹、お市さん。
彼女が浅井長政の元に嫁ぎますね。
娘が三人生まれるけれど、彼女自身は不幸なことになる。
でも、サブローのことだからそんなこと知るわけもない。
彼女は信長上洛に都合がよいので・・・ということで、兄のために嫁ぐ決心をする。
けなげだなあ・・・。
でも嫁いでも相変わらず元気いっぱいみたいですね。よかった・・・。


この巻のストーリーは、信長上洛(京都へ上がること)がメインですね。
それというのは、足利義昭が次の将軍になるよう、朝廷に取りなしをするため。
「将軍」という地位は、こんなふうで、足利家の誰かがなるもので、
実際の権力とはあまり関係がなかった。
だから、義昭が信長の働きに対して感激し、「副将軍」に付けてやるなんていっても、
「ふんっ!」てなもんです。
そうではなく、サブローは「天下布武」、
つまり武をもって天下を治めることを目指していたから!!
カッコいい!!
また、サブローはポルトガルから来た宣教師と会い、
京でキリスト教の布教をすることを許可したりします。
足利義昭は、将軍の自分を差し置いて何故信長がそんな許可を出すのか、と悔しがる。
いつの間にか京の実権は信長が握っているという・・・。
気づくのが遅いよね。
でも、このことがまた問題になっていくみたいですね・・・。
続きは次巻で!

「信長協奏曲 4」 石井あゆみ 小学館ゲッサンコミックス
満足度★★★★★


「信長協奏曲 3」 石井あゆみ

2011年08月17日 | コミックス
別にいーよ。草履はあっためなくて。

信長協奏曲 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


           * * * * * * * *

ささ、まず冒頭いきなり桶狭間の戦いに突入するのですが・・・。
非常にあっさりですね。
城の皆は信長が籠城するつもりだと勝手に思い込んで、ろくに準備もしていない。
しかし、信長は突如戦闘態勢に入り、今川義元ピンポイントで奇襲戦法。
あっさり勝利。
事が終わってから駆けつけた柴田勝家に
「よく食べて、よく寝て、戦のために力をたくわえておいてねって、いったじゃん。」
「・・・と、申されましたっけ?」
なーんてやりとりがあり、この脱力感がまた、何とも言えずにいいんだなあ。


そうして、信長の次なる目標は美濃。
美濃は道三、義竜と引き継がれて、今は道三の孫に当たる竜興が治めているのだけれど、
こいつはどうにもならないぼんくらなので、つけいる隙はありそう・・・。
サブローは、直接家臣の竹中半兵衛に信長の使いと称して対面し、
この鉄壁の守りを誇る稲葉山城をちょうだい、なんていうのですが、
もちろん、「はい」なんていうわけがない。
ここはやはりまじめに戦略を練って落とさないと・・・。


一方、例の木下藤吉郎・・・。
彼は今川のスパイだったわけですが、いわば彼の失敗によって、今川勢が敗れたんですよね。
そうなんだ。
だから彼は今度はどこぞの配下としてではなく、
個人的にいつか信長を蹴落としてやろうという野心に燃えるわけなのです。
それで、このたびの稲葉山城の攻略にも、
一晩で砦を作り上げるという功をあげ、徐々にのし上がっていく。


そんな少し前の、有名なエピソードがありましたね。
信長が外へ出ようとして草履をはくと、何だか温かい。
さてはおぬし、この上に腰掛けていたな! と藤吉郎を責めると、
藤吉郎は、殿様のために草履を温めていました・・・と、
胸元を広げ、泥でよごれたところを見せる・・・という。
そのシーンがちゃんとあるんだけどね。
実は藤吉郎はホントに、草履の上に腰掛けちゃってる。
サブローは、草履が温いことに気がついて
「まるでついさっきまで誰かがこの上にいたかのような・・・」
藤吉郎は、すかさず温めていました・・・と、いいわけ。
胸元までは見せなかったんだね。
サブローいわく、
「まあ、気が利くのはいいことだけど、別にいーよ、草履はあっためなくて。
外歩いているからね。
何踏んでるかわかんないから、あんま、ふところとかに入れないほうがいいよ。」
と、素っ気ない。
この人は、もし正直に「スミマセン、つい座ってました」といっても
「温まってちょうどよかったよ。アンガトサン」
くらいのこといったかもね。
よい方にも悪い方にも感動が薄いんだけど、
基本的にはすごくまっとうでいい奴だよね、サブローは。
顔もさっぱりとお醤油顔だけど、性格的にもごく淡泊って感じ。
でも時にきっぱりとした決断力と行動力があるので、そういうところが魅力だなあ・・・。


そうこうするうちに、意外にも頭脳戦で信長は美濃を手中にします。
まあ、この人は歴史には全くうといけれど、バカではないんだよね。
そして、なんと巻末でまた意外な人物の登場!
それは第1巻で、はじめの数ページに出てきただけだった本物の信長!!
彼はこれまでのサブロー信長の活躍を見知っていて、何とか力になりたいと申し出る。
おお! この人はもう最後まで出てこないのかと思ってました。
でも、なかなかいい奴じゃないの。
「ここまでご苦労さん」とか言って、いきなりまた立場を入れ替えようとしない辺りが・・・。
そうなんだけどね・・・しかし、問題が。
なんと、彼は今「明智光秀」と名乗っているんだよ~!
さあ、どうなる!?

「信長協奏曲 3」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「信長協奏曲 2」 石井あゆみ 

2011年08月16日 | コミックス
驚きの斉藤道三の出自

信長協奏曲 2 (少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


            * * * * * * *

さて、2巻目です。この本の表紙がすてきだよね。
表紙を横向きに使っているのが目をひきます。
この巻、サブローがこの時代にタイムスリップして以来、
淡々と時が過ぎるので、後は歴史をたどるだけ・・・と油断していたら、
いきなり虚を突かれるんだよね。
「美濃の蝮」と呼ばれ恐れられている斉藤道三と会見するんだけれど・・・。
斉藤道三は、信長の妻、帰蝶のお父さんだよね。
はい、義理のお父さんということになります。
その岳父と会うというのに、サブローは遅刻したあげく、
冠婚葬祭すべてOKという彼の思い込みで、高校の制服を着ていたりする。
その彼を一目見た道三は・・・!!
驚くべき道三の出自の秘密が明かされます・・・。
ネタ晴らししちゃいたいけど、この意外性は、実際に味わって欲しいので秘密です。
う~ん、そうなのか。
驚きでもあり、切なくもあるところだよね・・・。
まあ、とにかく、信長は道三という心強い後ろだてを得て、ますます勢力を強めていくわけだ。


信長の弟、信之との確執もあるね。
元々嫌われちゃってる・・・とサブローは解っていて、
でも一緒に天下を取るためがんばろう、なんていうんだけれど、
とにかく兄が嫌いな信之は、反抗心をあらわにして結局自滅。
一方、妹もいるよね。
そうそう、ここは今特に重要です。
妹お市、サブロー呼ぶところのおいっちゃんは、お転婆でお兄ちゃん大好き。
いつもサブローにひっついているおしゃまな子。
NHK大河ドラマでもお馴染みなので、うれしい!!


ところで、ふとサブローは考えるのです。
天下を取るって、一体どうすりゃいいんだ?
今さら、それはないでしょ・・・とは思うけれど・・・。
この時代、室町幕府は一応続いていて、
京都に足利義輝が将軍としてちゃんといるんだね。
その将軍という地位は、朝廷によって任命されるわけ。
サブローは何も知らずに、また部下たちから「うつけもの」呼ばわりされちゃうんだけれど、
まあ、この場合私もサブローを笑うことはできません・・・。
よくわかっていなかったかも。
でもね、サブローのすごいのは、じゃあ・・・といきなり思い立って、
部下20人ばかりを連れて京都へ「修学旅行」に行ってしまう。
京都まではよその領地も通らなければならないし、
普通は非常にやっかいなはずなんだけどね・・・。
しかも京都ではアポもなしにいきなり将軍に対面して、刀をもらってきたりする。

変に当時の常識とか概念がないことが逆に幸いとなっているわけだ。
お土産の「生八つ橋」は売ってなかったけどね・・・。
しかしまあ、天下を取るための手続きとか道のりのようなモノは、
何となく見えたではありませんか。
そういうことです。


さて、というところで、いよいよ桶狭間の戦いに突入します。
今川義元との戦いなんだけど・・・。今川勢4万・・・。
例の前巻で出てきた木下藤吉郎が、この今川のスパイで、
信長側の様子を探っていたのだけれど・・・。
彼にもサブローの行動は予測不能。
なーんにも考えていないように見えるサブローだけど、
さすが現代っ子、情報の重要性をよく知っている。
彼はやりますよ!
次の第3巻にも驚きがあります!!

「信長協奏曲 2」 石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス

満足度★★★★★


「信長協奏曲 1」 石井あゆみ 

2011年08月15日 | コミックス
私たちの知らない信長

信長協奏曲 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


            * * * * * * * *

この題名は、信長"コンツェルト"とお読みくださいね。
タイムスリップ時代劇といえば、今なら「JIN」を思い浮かべる方が多いと思いますが、
この作品、現代の高校生がいきなり戦国時代へタイムスリップ。
なんとそこで、織田信長として生きることになります。
けれど、ただ史実をなぞるのではなく、時に意外な展開を見せ、油断がなりません。
あまりにも面白かったので、夏休み特集として一気に5日連続、
一巻ずつご紹介しまーす!!(現在月刊少年サンデーに連載中。5巻まで)


さて、まずは第1巻です。
サブローは、運動神経がいいことだけがとりえの、やる気のない高校生。
その日の日本史の授業は、こんな感じ。
「本能寺の変を引き起こした首謀者は明智光秀・・・」などという先生の話も、
何も聞いていないサブロー。
その先生に「本能寺の変を起こしたのは?」問われて
「あ・・・、あいださん?」などという始末。
その放課後、いきなり彼は時を超えます。
気がつけば、時代劇の撮影かと思われる馬上の少年が目の前に。
しかも、なんと彼はサブローとうり二つ。
彼は織田信長と名乗り、
「自分は体が弱く、この乱世では身が持たない。
しばらく安息な地で静養したいので城をぬけだしてきたけれど、身代わりになってくれ。」
と頼み、あっという間に立ち去ってしまいます。
刀を預けられ、残されたサブローは「かっちょいい~~」と本物の刀にただみとれている。
大丈夫か、コイツ、と思ってしまうよね。
そうした波乱の幕開けですが、ここまでわずか10ページほど。
実にスピーディです。


この物語の面白さを支えているのは、このサブローの変なキャラだと思う。
彼は勉強には不熱心で、自らなにかに前向きに燃えるタイプではないよね。
世間のしきたりなどにも無頓着。
いきなりこんな見も知らないところへ紛れ込んでも、おろおろしたり悲嘆に暮れたりしない。ま、いいか・・・と飄々と現実を受け止めている風。
とりあえず「殿」とよばれて、城へ連れて行かれたのは幸いですけれど。
袴も付けない着流しスタイルは、当時でもだらしなく思われちゃう。
急におかしな言動になってしまった信長を
周りの人は「気が触れたか?」と危ぶむのだけど、誰も別人だとは思いもしない。
信長には美濃の斎藤道三の娘、帰蝶という妻がいるのだけれど、
今までかまってもらえず寂しがっていた彼女を「でえと」と称して、
外に散歩に行ったりするのです。
彼はあくまでも「彼」自身。
無理にお殿様ぶったりはしないし、話す言葉も現代の口語。
そういうかまわないところが実にいいよね。


さて、全く歴史オンチの彼も「信長」の名前くらいは知っていた。
自分は信長の身代わりなんだから、天下をとらねばならない・・・!
と、いきなりそう思い定めます。
意外と律儀で、人から頼まれるとイヤと言えないタイプ・・・?
でも、信長が「天下をとる」というのは少し違うような気も・・・。
だけど、天下を取ろうとしていたのは確かだと思うから、これでいいんだよ。
そうだね。まあ、サブローは、多少のあやふやさにも無頓着。
とにかく目標はできた。
言動が多少変だけれども、元気で行動力があり、
偉ぶらず人の心にまっすぐ飛び込んでいく「信長」は、何故か人望を集めていきます。


そんな折、織田家に人質としてやってきたのは、ふっくら顔の上品そうな少年。
松平竹千代君。
サブローは何かと竹千代を誘い、遊び相手になってやったりします。
歴史好きな人ならピンと来ると思うけれど、
この少年こそが、後の徳川家康。
歴史オンチのサブローにとってはただの少年なんです・・・。


そんなこんなで、瞬く間に2年。
信長の父、信秀が病死。
いよいよ18歳信長が家督を継ぐことに。
しかし天下統一どころか、いまだ織田家は尾張国内をも統一できていないのです。
そんな巻末で、また、意外な人物の登場!
木下藤吉郎と名乗る、怪しげな男です。
私たちの思っている秀吉とは何だかイメージが違う。
一癖ありそうなこの男は、信長の味方になるとは思えない不吉な予感・・・。
一抹の不安を匂わせ、第一巻は終わりです。
非常に先が気になりますね。
信長を知る人なら本能寺の変の信長の死もよく知っています。
けれど、作者はあえてそういう知識のまるでない、サブローを主人公に据えました。
このことが物語を非常に面白くしています。
信長を知らないサブローが、どのような信長を生きるのか。
果たして、歴史は私たちの知っている歴史どおりに動くのか。
次巻では、さっそく驚きの展開があります!

「信長協奏曲 1」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス

満足度★★★★★

「ガラスの仮面 47」美内すずえ 

2011年08月05日 | コミックス
もうチビちゃんとは呼ばない

ガラスの仮面 47 (花とゆめCOMICS)
美内すずえ
白泉社


             * * * * * * * *

前巻であまりにも盛り上がってしまったので、続きを行きます!
紫織さんの計画がことごとく裏目に出て、
豪華ワンナントクルーズ客船に乗り込み、対面してしまった真澄とマヤ。
久しぶりに二人で向かい合い、対話する時間がたっぷり・・・。
しかもロマンチックにも満天の星であったり、
バラ色に染まる朝日であったりの海上で、
嫌が応にも燃え上がる二人の心・・・。
うーん、でも二人ともうぶなんですねえ。
ここまで行けばキスくらいすればいいのに・・・。
まあ、それは先のお楽しみということで。
いやあ、ここまで長かったですが、ようやく二人はお互いの気持ちを確認しますねえ。
これはもう、紫織さまさま。
とりあえず、紫織さんのしくんだ数々の嫌がらせも、きちんと速水氏に伝わったことですし。
いや~、すっとした。


ところで、マヤはここでは何歳くらいなんだろう?
お酒も飲めるし結婚もできるなんて言ってるから二十歳は過ぎてるわけだ。
速水氏の方は?
初めて会ったとき、マヤが13歳といってる。
それから10年くらいたってるのかな。
少なくともその時速水氏はもう学生ではなかったから、若く見積もって25くらい?
10年たって35かあ・・・。
にしては若い!
そういう年なら、もう少し適当に遊んでもいいのにねえ。
客室のキーを海に投げたところは、思わず笑っちゃったよ。
そこまでしなくても・・・!
キーをなくしたら後が困るじゃん。
ま、予備くらいはあるよね。
いや、とにかくこの場合は、
紫織さんが用意した部屋もベッドも見たくもなかったということでしょう。


とにかくこの巻では、紫織さんも桜小路くんも、ただの狂言回しだよ・・・。
ただ、桜小路くんの怪我は、ただのおバカではなくて、
彼自身の演技にプラスになっていくかんじなんだね。
船上で、マヤが紅天女の1シーンを演じる場もあって、
まあ、これでマヤの演技も完成となりそうじゃない?
しか~し、マヤがこんな風に浮かれている間にも、
亜弓さんは死にものぐるいで練習している。
怖いね、この頃この人。
意外にも天才はマヤのほうで、努力の人は亜弓さんなわけ。
でも、並以上のハンデを背負った亜弓さんの存在は、限りなく不気味。
この期に及んで、ますます目が離せない、ウン十年目のガラスの仮面でした。
紫織さんとの結婚話はご破算になるとして、
紫織さんの報復はどんななんだろう。
こちらも気になるね。
こりゃ、靴に画鋲ではすまないよね・・・。

「ガラスの仮面 47 第14章 めぐりあう魂(1)」美内すずえ 白泉社花とゆめCOMICS
満足度★★★★☆

「コメットさんにも華がある」 川原泉

2011年08月03日 | コミックス
お互いがお互いを認め合いながら受け入れていく、ふんわりとした過程

コメットさんにも華がある (ジェッツコミックス)
川原泉
白泉社


            * * * * * * * *
 
久しぶりに川原泉さんの新刊が出ていまして、もちろん即購入。
「~があるシリーズ」第2弾とあります。
第1弾も読んではいるものの、ほとんど忘れかけておりますが・・・。
まあ、それはともかく、前巻と同じく、
非常に偏差値の高い彰英高校に在学する高校生たちの
ほんのりした恋模様が描かれています。
ここに登場する高校生、今時の高校生とは思えない、
スカートのまともな長さ、おしゃれっ気ナシ。
何も主人公だけではなくて、皆そうみたいです。
このために超偏差値の高い学校という設定なのかと納得できちゃいます(^^;)
そんな中でも、主役のオンナノコは特にまた、皆の流れから一拍ずれているのです。
でも、周囲もそれを認め、本人もさして気にしていなさそうなのがいいのです。
また、それこそが本人の美徳と気づく異性が登場するところがまたいい。


たとえば、表題の「コメットさんにも華がある」に登場する紗矢さんは、
愛想がなくつっけんどん。
感情が表情に出ないんですね。
人から影で「ツタンカーメン」なんていわれている。
ある日席替えでそんな彼女の前の席になったのは、
父親は映画監督、母と姉が有名女優で、自らも俳優をしているという航くん。
クラスの皆は航のそんな事情をもちろん知っていたのですが、
紗矢は知らなかったのですね。
初めてそのことを知った彼女は、友人に教えられて
彼の出演しているTVドラマをさっそく見てみる。
けれど、意外に彼はめだたず、どこに出ていたのかもよくわからない。
翌日友人に「オーラが乏しくて、華がない・・・」といったのを、
なんと本人に聞かれてしまった!!
実は、航自身がそのことを気にしていたのです。
スターは「恒星」のように自ら光り輝くべきなのに、
自分は彗星(コメット)のように、時たまスターのそばでちゃっかり光るだけ・・・。
でも、本当は紗矢はもっと別のことをいいたかった。


お互いがお互いを認め合いながら受け入れていく、
そういう過程が実にふんわりと描かれていて、
何だか幸せな気持ちになってくるのです。
この空気感が好きで、いつも川原作品を楽しみにしているんですよね。

「グレシャムには罠がある」では、
貧乏な山吹さんが超お金持ちの陣内君に、お金で買われて「部下」となる。
なんと川原作品にあるまじき展開!と思いきや、
陣内君はひもじく体力がなくて倒れた山吹さんのために
お弁当を持ってきたり、看病したり、身代わりにバイトにいったり・・・。
二人は「理念と実情が一致していない」のですが、
いいじゃないの二人が満足なら・・・ということで・・・。
なんと楽しい展開。
やっぱり川原泉作品はやめられません。

「コメットさんにも華がある」川原泉 白泉社
満足度★★★★★