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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「テルマエ・ロマエⅢ」 ヤマザキマリ

2011年05月25日 | コミックス
ローマの温泉街を歩いてみたい

テルマエ・ロマエ III (ビームコミックス)
ヤマザキマリ
エンターブレイン


          * * * * * * * *

ローマの温泉、第三弾。
なんとこれ、映画化が決定したそうで。主演が阿部寛に上戸彩?
どんなもんでしょうか・・・?

ところで今作、いきなりシリアスな展開になりまして、ルシウスに迫る危機!
時のローマ皇帝ハドリアヌスを良く思わない一派が登場。
近頃新機軸の浴場を開発し、大人気のルシウス。
彼の存在がハドリアヌスの人気を支えているとみた彼らは、
ルシウスの抹殺を計り、
郊外の物騒な山賊が出没する地域へルシウスを誘い込むのですが・・・。
どこまでいっても勤勉でまじめで一生懸命なルシウスです。
そもそもこの性格が日本人と通じるモノがあるのだなあ。
彼は、この、山賊でもしなければ生きていけない乏しい環境の地で、
町おこしに挑みます。
・・・そう、わき出る温泉を利用して。
なんだか壮大な話になっちゃいました。
しかし、ローマ時代に出現する温泉街。
笑えます。
どこまでも人が良くて、脳天気な"平たい顔族"の皆さんも大好き!

私はたかだか温泉の話で、そんなにネタが続くものかと始めは思っていたのですが、
既に3巻目。
まだまだ大丈夫そうですね。

今現在はシカゴ在住というヤマザキマリさま。
続きを楽しみにしていますので、よろしくお願いいたします。
日本の温泉街の緊張感のない緩さ、怠惰さ・・・そういうことも時には大事。
なるほど、だから時々妙に温泉に行きたくなるんだなあ・・・。

「テルマエ・ロマエⅢ」ヤマザキマリ エンターブレイン
満足度★★★★☆

「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」 萩尾望都

2011年04月15日 | コミックス
人の心を癒すのは、やはり人の心

ここではない★どこか 春の小川 (Flowersコミックス)
萩尾 望都
小学館


             * * * * * * * *

待望の第3巻が出ました。
萩尾望都さんの短編集ですが、
お馴染みの登場人物たちのその後も描かれています。


「水玉」、「シャンプー」、「海と真珠」と続く
舞(マイ)と夜羽根(ヨハネ)のシリーズ。
派手で軽い夜羽根に翻弄される舞の心情が、初々しいですね。
でも、こんな風に内気でお堅い少女は、
まあ、私の様なオバサンにとっては、とても身近です。
内気で自信のない(?)遠い昔の自分の少女時代を思い起こすような気がして・・・。
「好きだ、かわいい」と、彼女をなんのてらいもなく
オモチャのように扱う夜羽根に思わず舞はビンタ。
「あなたのことを今キライになりました!」
身の程知らず、王子に恋をしてしまった人魚。
それが舞なのです。


「百合もバラも」では、生方ご夫妻、奥様がご懐妊。
産めば息子サトルとは15歳離れた子供ということになるけれど・・・。
二人は相手が
「タタミに両手をついて頼むから、産むことにした」
というのをオマジナイにすることにします。
実際、いい年をして子供を作って・・・などと、世間の人は無責任に言いますよね。
その家の事情は当人にしかわからないもの。
細々そんなことを説明するより、こういう説明をする方が簡単、
と割り切ることにしたわけです。
何だか結構リアルな話です。
母の妊娠を聞いた思春期の娘と息子が、
ポッと顔を赤らめるところが微笑ましい。
・・・ということはこの先赤ちゃんの誕生のシーンがあるのでしょうか。
それもまた楽しみですね。


表題の「春の小川」は、
小学校6年から中学生になろうとする光(コウ)が、
母親を亡くし、その死をなかなか受け入れられない状況を描いた作品。
一番身近にいた絶対的な存在を亡くすというのは、
大変な喪失感を伴うものなのでしょう。
それを現実のこととして受け入れられない光は、
時々母の姿を見、会話を交わす。
満開の桜の下、卵色の着物を着た母親の姿が心に残ります。
彼が現実を受け入れるきっかけは、友人の言葉でした。
悲しみの共有。
人の心の痛みを癒すのは、やはり人の心なのですね。
母の死を語り、初めて涙を流す光。
涙は心の解放にとって必要なのだなあ・・・。

「シリーズここではない★どこか③ 春の小川」萩尾望都 小学館fsコミックス


満足度★★★★☆


「舞姫/テレプシコーラ 第2部 5」 山岸凉子

2011年01月14日 | コミックス
彼女の本当の才能は・・・

舞姫(テレプシコーラ) 第2部 5 (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
山岸 凉子
メディアファクトリー


           * * * * * * * *

「舞姫/テレプシコーラ」第2部の完結編!
考えてみると第2部は、すべてローザンヌ・コンクールの出来事でした。
六花(ゆき)ちゃんの集大成だったんですね。
しかし、前巻は六花ちゃんにはとても気の毒な展開でした。
体調を崩した彼女は、準決勝の途中で棄権をせざるを得なくなってしまう。
また、途中棄権なのでオファー(バレエ学校・バレエ団からの留学や研修の打診)の権利もないと言われ・・・。


私は思わず著者に「鬼・・・!」とつぶやいていましたね。
しかし、なんということでしょう!!
きちんと彼女の個性とがんばりが認められることに。
これから読む方のために、あまり詳しく書くのは止めておきますが、さすが完結編。
そこには第1部の顛末がきちんと生きており、
地道にバレエを続けていた六花ちゃんが報われるのです。
しかし、この子の本当の才能はバレエよりも、
限りないそのお人好しさにあるのではないかと思ったりします。
自分のことでも精一杯なのに、彼女はきちんと人の心配までして、お節介を焼いてしまう。
それであのローラ・チャンもわずかに心を開きます。
それにしても、やっぱりローラ・チャンは空美ちゃんのようですね。
結局作品中ではきっぱりとした答えは出ていないのですが、これはもう間違いない。
しかし、何がどうなってあの子がこのようになったのか・・・?! 
この物語だけでもう何冊か本が書けそうじゃありませんか。
ま、それはないでしょうけど。

このストーリーは姉の千花ちゃんが亡くなった件ではとてもショックでしたが、
まさしく現代のバレエ事情を語ってくれる作品でした。
私自身はバレエのことなど何も解っておらず、
作中のバレエ用語も意味不明のところを読み飛ばすようないい加減な読者ではありましたが、
それでも、とても興味深く読めました。
まずは満足、満足。
が、やはり「アラベスク」には及びませんけれど・・・。
うーん、でも、本当はこの先の六花ちゃんの活躍をもっと見たかった・・・。

満足度★★★★☆

「チャンネルはそのまま! VOL.3」 佐々木倫子

2010年12月22日 | コミックス
子供の頃から変わらない雪丸嬢

チャンネルはそのまま! 3 (BIG SPIRITS COMICS SPECIAL)
佐々木 倫子
小学館


             * * * * * * * *

"あんぽんたん記者、北の空を飛ぶ!!"と、あります。
お馴染みHHTV北海道★テレビに勤める雪丸花子嬢奮闘記、第3弾。

2巻目で私はこんな感想を抱いていました。

大抵はピンボケであり、ドジであるわけですが、時としてこれが思わぬ好展開を見せる。
そんな役回りの雪丸さん。
それで、この巻を見て思ったところが、どうもこの雪丸さんに生彩を欠くといいますか・・・。
どうも本当にただの「バカ」に思えてしまいまして。
単に私の思い過ごしでしょうか。
・・・非常に微妙なところではありますが、大事なところでもあると思います。
ピンボケでもいいけれど、どこか光るところがないと・・・。


しかも、このTVシリーズは長く続かないのではないか・・・などと、
大変失礼なことを・・・。
でも、立派に第3巻まで来ましたねえ・・・。
そこで、私は逆に気が楽になったのでした。
つまり雪丸嬢は天然のピンぼけで、だから面白いと割り切ればいいだけのことだと。
時々光る隠し持った才能なんてのは幻想で、
まあ、褒めるとすれば、一生懸命なところだけ。
まあ、それもいいでしょう。


さて、第20話「翼をください」で、
雪丸嬢は初めてヘリコプターに乗っての取材を体験します。
うーん、ちょっとうらやましいですね。
彼女はその前に先輩や同僚たちから、いろいろなことを吹き込まれる。
万が一のためにマイパラシュートが必要、
パラシュートがないなら傘を持っていけ、
ヘリは土足禁止、
騒音がひどいので筆談、
上空で食べるおにぎりは最高においしい・・・などなど。
すべて真に受けてしまう雪丸嬢。
始めははしゃぎまくっていた彼女ですが、次第に青ざめ緊張した様子になってきます。
パイロットは、もしやトイレを我慢しているのでは・・・と思うのですが、
実は彼女の心配事は・・・。
確かに、彼女はただの"天然"のようです・・・。


このストーリーで好きなのは、
時として、雪丸嬢のはちゃめちゃ度は置いておいて、
地味にがんばっている同僚たちが登場することです。
第18話「ウサギと獅子」では、営業担当の服部君登場。
テレビ局の営業とは、つまりスポンサーを取ってくること。
そのためにはとにかく視聴率がものを言います。
HHTVの最大のライバルはひぐまテレビ。
いや、ライバルというより北海道でもローカル局ダントツなのがこのひぐまテレビで、
実際やることが横暴でキタナイ。
苦戦の服部君。
それでも地道にがんばっております。
まあ、たいていはこういう人たちで社会は成り立っている。
雪丸嬢がそれをかき回すのは、若干の変化をもたらす起爆剤でもあるわけですね。


第16話「農家の子」は、珍しく帰省中の雪丸嬢。
彼女の実家は恵庭市郊外の農家、ということで
TV局に大量の"とうきび"が送られてきたりします。
皆はそのあまりの多さにげんなりしていますが、いいじゃありませんか。
ゆでて冷凍しておけば、当分楽しめますよー。
北海道ではけっして「トウモロコシ」なんて言いませんので、
私も"とうきび"と言わせていただきます。
ここでは雪丸嬢の子供の頃のエピソードが語られますが・・・、
なるほど、よくわかりました。
つまり、雪丸嬢は子供の頃からそのままに成長してしまっただけなんですね。
それはこの家族の影響でもある・・・と。
妙に納得してしまった一冊ではあります。

満足度★★★☆☆

「サカタ食堂」 坂田靖子

2010年12月01日 | コミックス
心ひかれるちょっとした食べ物たち

サカタ食堂 坂田靖子よりぬき作品集 (ピュアフルコミック)
坂田靖子
ジャイブ


           * * * * * * * *

坂田靖子さんの作品集。
これは食べ物にちなんだ作品が収められています。
坂田さんは特にグルメコミックを描く方ではないのですが、
そういえば、食べ物が印象に残るものは多いですね。
この中には私のお気に入りもあり、また初見のものもあり、
こういうテーマで集めたというのもユニークで、ちょっぴりお得な感じの一冊です。


私が大好きな「底抜け珍道中」からは「海のセーター」。
食いしん坊のタルカム氏と、ちょっと風変わりで好奇心旺盛のマーガレット、
このご夫妻のお話です。
ここではタルカム氏が海辺の街に出張に出ました。
奥さんがセーターを全部洗濯してしまっていたので、セーターなし。
しかし海辺の街は冷たい風が吹きすさんで寒い!!
タルカム氏はパブに入ってホットウイスキーを飲み焼きニシンを食べる。
うーん、これは心惹かれますね! 
イギリスで食べる焼きニシンってどんなの???
いや、ニシンはニシンなのでこちらで食べるのと同じか・・・。
でも、お醤油も大根おろしもなしですよ。
塩を振って、何かハーブを使うのでしょうか??
う~ん、興味あります。
でもこのストーリーの絵をよく見たら、それはイワシくらいの大きさで、
タルカム氏は手づかみで丸ごとぱくついてる。
う~ん、謎です。
しかもホットウイスキーと共に。
うー、やってみたい! 
暖まりそうですよね。
タルカム氏はここで地元の漁師さんと仲良くなって、
ニシンのおみやげをもらったりします。
また、宿のおじいさんには長年着込んだセーターを譲ってもらいます。
セーターの編み込み模様は、その家独自の模様になっていて、
万が一海で遭難したときに、死体が誰だか解るように・・・だそうな。
そういえば何故か私がイギリスに親しみを感じるのは、
このコミックシリーズをみていたからかも知れない・・・。
ビールとフィッシュ&チップスというのも、ぜひ地元で食べてみたいものの一つ。
それと、この本には出てこないのですが、
タルカム氏のお気に入り、クリスマス・プディングというのも。
イギリスにはあまりおいしいものがない、とは良く聞きますが、
このB級グルメ的なものには心惹かれます。


「謹賀新年」という作品もいいですよ。
お屋敷のいっさいを取り仕切る番頭の松岡さんは、大晦日というのでいつにもまして大忙し。
そんなとき、庭先にどこから入り込んだのか、みすぼらしげな子供が二人。
帰りをなさいといっても動かぬ二人に、
ふと思いついて砂糖をまぶしたお餅を食べさせる。
放蕩息子のこの家のぼっちゃんは、
寒そうだと言ってだんな様の一番上等な羽織を着せかけてしまった。
それでもまだいる二人を、番頭さんはやむなく自分の寝床へ連れて行く。
さて、この二人は一体ナニモノ???
ファンタスティックなこのストーリー。
でも、お金持ちの旧家のようで、
なにやら皆遊び心があって気持ちが温かで、ほのぼのさせられるお話ですね。
これぞ坂田さんの真骨頂。


ラストの「村野」もとても好きな作品です。
学生の友人たちがお正月には恒例で尾沢の家に集まり、スキヤキをいただく。
仲間のうちでも特に破天荒な村野は、この日も遅れてふらりとやってくる。
しかも、もらい物の肉の塊を持って。
皆大いに盛り上がる。
そこで村野は「俺は甘党だ」と言いつつ、砂糖をどっちゃりぶち込んでしまった。
何だこれは~!
それでもやけで食べて大騒ぎ。
大騒ぎの中、またふらりと帰りかけた村野に気づいた尾沢が声をかけます。
呼びかけられた村野はぽつりと「俺 兵隊になるよ・・・」。
この舞台での戦争は日露戦争なのですが、
「あんな大きな国と闘って勝てるわけがない。俺が行ってさっさと負けさせてくる・・・」
そうつぶやいて去ってしまう村野。
奴のいない学校はひどくつまらない場所に変貌してしまった
・・・という尾沢のモノローグがとても切ない。


・・・というようなことで、坂田靖子さん未経験の方にはとてもいい入門書になると思います。

満足度★★★★★

「ガラスの仮面46」 美内すずえ

2010年11月15日 | コミックス
面白すぎです、紫織さん

ガラスの仮面 46 (花とゆめCOMICS)
美内 すずえ
白泉社


            * * * * * * * *

あれ?・・・「ガラスの仮面」、『たんぽぽ館』では初めてだよね。
そう、ず~っと読んでたんだけどね、
この大長編のなかで、一冊の断片では、あまり書きようがなくて・・・。
それにここのところずっと「紅天女」だから、あんまり面白くない・・・。
これ、なんと一ヶ月ほど前に45巻が出たばっかりだったでしょう。
そうなんだ。
それがね、本当にあんまり話の進展もなくて、
ああ・・もうどうでもいいから早く話を進ませて欲しいと、密かに思っちゃったんだな。
でも、先日この本を書店で見てびっくりしちゃった。
えっ、もう次のが出たの?って。
だってほとんど一年に1冊出るか出ないかくらいだったよね、ここのところ。
そうだよ。月刊『ガラスの仮面』だなんて、びっくり!!
それで、もちろん買ってすぐ読んだらね、これがツボに入りまくりで面白いの!!

おもしろいって、あなた、面白い場面じゃないでしょ。
いやー、この本の紫織さんは、めちゃめちゃ面白いよ。
助演女優賞あげたいくらい。
つまり、速水氏がマヤに思いを寄せていることに気づいた彼女は嫉妬に燃えるんだね。
それで、いろいろと画策するわけです。
それがもう、あれですよ、一昔前の少女漫画にある懐かしのパターン。
お金持ちのワガママなお嬢サマが、貧乏だけれどけなげなヒロインに嫉妬して、
靴に画鋲を入れたり、財布を盗まれたと騒いでみたり・・・。
それと同じなんだもん。
レトロな手だよねえ・・・。
おとなしそうな顔してなかなかやりますね。
いやこの人、きっと子供の頃にもこの手を使ってるよ絶対。
こんな小学生の発想みたいなこと、いい年した今になって思いつくわけないよ。
いやしかし、この本の面白いのは、その話があったすぐ後で
また傑作な出来事があるからさ。
少しでも自分と速水氏の距離を縮めたい紫織さんは、
豪華客船に速水氏を誘い込み、ダブルの部屋で一晩を過ごしてしまおうと考えた。
ところが、予期せぬ交通渋滞で出航時間に間に合わない。
一方船に乗り込んだ速水氏は、なんとマヤと遭遇することになる。
マヤはいわれのない手切れ金(?!)を、紫織さんに返そうと思ってやって来たのだけれど、
うろうろしている内に船が出航してしまったんだね。
ふっふっふ、墓穴をほりましたな、紫織さん。
何というか、必死になればなるほど、とんだ道化の紫織さん。
でもこういうどんでん返しがなかったら、全国の速水ファンから総スカンを食うところだったでしょ。
この本がこのラストで幸いだと言うべきです!
・・・おや、思い切りネタばらしだね・・・。
いや、問題はこの船でマヤと速水氏がどうなっちゃうのか、ということだから大丈夫。
ほんと、どうなっちゃうんでしょ。
そもそも、この続きは来月出たりはしないんだよね・・・?
たぶん・・・。
あれだよ、紫織さんが漁船を雇って客船を追って、追突!
その映像が撮れたら、すぐYouTubeに投稿するけどね!
まあ、国家機密ではないからね・・・。
と、馬鹿なこと言わないの。
紫織さんはマヤが船に乗ってるのを知らないんだから、何もぶつける必要はないでしょ。
じゃ、ヘリコプターでやってくるかもね。お金はあるし。
う~ん、ありそうな気がしてきた・・・。
しかしねえ、どうせ政略結婚と割り切っているんだから、速水氏も据え膳くらいは食って差し上げるべきなんじゃないかなあ・・・。
いやいや、いやしくもこれは正統な「少女漫画」なんだから、それはナシなんだよ。

さて、一方それこそ誇り高い正統派お嬢様の亜弓さんは・・・
著者はまたずいぶんな試練を彼女に与えましたねえ。
ここまでやる亜弓さんは、相当てごわいなあ。
マヤちゃん、速水氏とイチャイチャしている場合じゃないぞ!!


それから、なんと「速水真澄公式ツイッター」なんていうのがあるんだね。
そうなんだよね。一体この話はいつの話だったんだ???
ともかくそれによるとね、この本、
キャンドルAYUMIと速水氏のシャワーシーンで人気があるといわれている。
いやあ、やっぱりなんといっても、この紫織さんですよ。ワタシの一押しは。
いや、一押しされても困るんだけど・・・
ファンの方、是非ご覧あれ・・・

満足度★★★★☆

「菱川さんと猫」 萩尾望都・田中アコ 

2010年11月07日 | コミックス
“ねこじゃらし”で化けの皮が・・・

萩尾望都・田中アコ短編集 ゲバラシリーズ 菱川さんと猫 (アフタヌーンKC)
田中 アコ
講談社


             * * * * * * * *

萩尾望都氏は本当に猫が好きなんですねえ。
少し前に「レオくん」という作品がありましたが、
今回は、田中アコさんという方の原作の漫画化です。
さて、この方、聞いたことのない方なのですが・・・
この作品、「ゆきのまち幻想文学賞」の佳作作品なのだそうですが、
この賞は萩尾氏が長年審査員を務めているそうです。
その関係で、この作品を気に入った萩尾氏が著者に直接オファーを取ったのだとか。
何ともラッキーな話しですが、
実際この作品、萩尾望都作品としても違和感なく、すばらしい仕上がりになっています。


元々、ストーリーは1話目「菱川さんと猫」だけだったわけですね。
ストーリーとしてはやはりこれがピカイチです。
雪深い街、穴森市。
白湯(さゆ)が会社に出てみると、菱川さんの机に座っていたのは猫だった・・・。
他の人にはちゃんと菱川さんに見えるらしいのですが、
何故か幼い頃から"化け"が見えてしまう体質の白湯には、
明らかにそれは菱川さんではなくて、猫。
会社の帰り、菱川さんに化けた猫の後をつけてみれば、
本当に菱川さんの家に入っていく。
問い詰めてみれば、この猫はゲバラという名で、
菱川さんにはお世話になっているので、
菱川さんが旅行に出ている間、替わりに仕事をすることにした・・・などという。
半信半疑ながら、白湯は様子を見ていたけれど、
いつまでたっても本物の菱川さんが戻ってこない。
さて・・・???

コミカルに描かれていますが、とても切ない物語です。
人の「死」とは何なのか。
心の奥にやんわりと語りかけます。
また、ゲバラは「化け猫」と呼ぶにはあまりにもキュート。
真剣だけれど、いい加減でもある、やっぱり基本的には猫だ。
なにしろ、白湯に「猫でしょ」といわれても、頑固に否定していたのに、
目の前でネコジャラシを振られるとついじゃれついてしまい、正体がばれてしまった・・・。
ちょっぴり出てくる津軽弁もまた、味があって、
この地方だからこんな猫もいるかな?とも思う。
元気で行動力抜群の白湯ちゃんもいいな。
他に、「ハルカと彼方」、「十日月の夜」
もちろんどちらもゲバラや白湯ちゃんが登場しますが、ステキな作品群です。

是非続編が読みたいな。

満足度★★★★★

「テルマエ・ロマエⅡ」 ヤマザキマリ 

2010年10月28日 | コミックス
寂れた銭湯の活性化

テルマエ・ロマエ II (ビームコミックス)
ヤマザキマリ
エンターブレイン


          * * * * * * * *

テルマエ・ロマエの続編が出ました。
よくお風呂の話題だけで、ネタが尽きないなあ・・・と感心してしまいます。
いつものように、古代ローマのお風呂の設計技師ルシウスが、
湯船でお風呂限定タイムスリップ、現代の日本にやって来ます。


今回の一話目が、ちょっとえぐい。
というかエロというかグロというか・・・。
でもここは、著者の解説にもあるとおり、
単に古代ローマでも古の日本でも同様にある、男根崇拝の話なんですね。
単純明快、豊穣のシンボルということで納得しましょう。
お風呂は素っ裸で入るもの。
避けて通れない話でした。

ルシウスはバナナワニ園やスライダー、
日本で見たものをどんどん取り入れてしまいます。
そうか、改めて日本のお風呂文化も奥が深いなあ・・・と思います。
ローマの浴場の遺跡・・・とは聞いたことはありますが、
映画などでも、ローマ人の公衆浴場入浴シーンなんてあまり見たことがないですね。
今度は是非そういうシーンを作って欲しい。


最後の話はなかなか切実でした。
ルシウスがどんどん画期的な浴場を作るので、
それまで地道に営業していた個人経営の浴場がすっかり寂れてしまった、というのです。
これなどはまさに今の日本の銭湯の状況を語ってもいるわけです。
さびれてしまった銭湯にどのように人を呼び戻すのか。
ルシウスは、日本へやって来て、「スタンプ」サービスの例を見つけます。
本当に、これは一例なのですが、
日本の銭湯を「遺跡」にしてしまわないよう、
私たちもいろいろと考えてみるといいですね。
本当は家からちょっと歩いて行けるくらいのところに銭湯があれば、
家のユニットバスよりも、そっちに行くかも知れません。
やはり広いお風呂は気持ちがいいですよね。
でも、わざわざ車を出して・・・というのならちょっと面倒。
その辺の兼ね合いが難しいところかな。
いっそ各町内に一カ所くらいずつ公設の銭湯があるというのはどうでしょう。
(町内に銭湯の一つや二つ・・・
これって、昔なら当たり前のことだったんでしょうけどね・・・)
今はまた、新たなコミュニケーションの場ということで。
夏にはその前にちょっとした屋台など並べて、ビールも飲める。
週に一度くらい老若男女楽しめる地域の催しがあってもいいな。
そういう企画は、是非若い人にやってもらいたい。


・・・と、話がずれましたが、
この調子だと著者のネタはまだまだ温泉のようにわき出てきそうですので、
今後も楽しみにしたいと思います。
今回の表紙、タオルとドライヤーを持った裸婦。ナイスです。

満足度★★★★☆

「テルマエ・ロマエⅠ」もどうぞ

「舞姫 テレプシコーラ 第2部 4」 山岸凉子

2010年08月27日 | コミックス
作者はまだ主人公をいじめ足りない・・・?

テレプシコーラ(舞姫) 第2部 (4) (MFコミックス ダ・ヴィンチシリーズ)
山岸 凉子
メディアファクトリー


          * * * * * * * *

ローザンヌ国際バレエコンクール本戦。
六花(ゆき)は風邪で体調を崩しながらも
何とか持ちこたえ準決選まで勝ち残りました。
しかし、ここへ来てとうとう発熱。
熱をおして準決選に出場するのですが・・・。

ううむ。
ここまでも、ずっと体調との戦いで、ずいぶんがんばっていた六花ちゃんなのですが、
意外にも作者はまだ彼女をいじめ足りなかったのですねえ・・・。
いくら何でも、もうこの辺で
"おめでとー!"ということになるのかという期待は裏切られました・・・。
つまりはどう考えても無理という最悪の体調で、
演技中転倒してしまい、
準決選の後半コンテンポラリーを踊らないまま棄権となってしまったのです。
そのため、オファー(バレエ学校・バレエ団からの留学や研修の許可)も
もらえなかったという、最悪の結果に・・・!

いくらがんばっても、必ずしも報われることはない・・・
というのは現実ですけれど・・・。
いくら何でもこれはかわいそうですねえ。
とくにいじけ虫の六花ちゃんにとっては・・・。
彼女はむしろクラシックよりもコンテンポラリーが得意そうですし。
著者はどのようにこれ以上の試練を彼女に与えようとしているのでしょうか。
そして依然謎のままのローラ・チャン。
郡を抜く実力、
六花は以前に知っている誰かを思い出さずにいられないのですが、
いったい彼女は何者??
まだまだ目が離せません。
待たれる次巻。

満足度★★★☆☆
(気持ち的にがっかりー・・・ということで。)

「雨無村役場産業課兼観光係2・3」 岩本ナオ 

2010年07月22日 | コミックス
俺、その人がいない世界が想像できない

雨無村役場産業課兼観光係 2 (フラワーコミックス)
岩本 ナオ
小学館


雨無村役場産業課兼観光係 3 (フラワーコミックス)
岩本 ナオ
小学館


          * * * * * * * *

さて、残りは一気に行っちゃいましょう。
3巻で完結です。
スミオは銀一郎に思いを告げたきり、東京へ出て役者になってしまった。
メグはスミオをたずね、思い切って告白・・・!
スミオは言う。

「ごめんメグちゃん
俺、その人がいない世界が想像できない。」


衝撃・・・。
失意のメグをそっとカバーする銀一郎も、なかなかつらいですね。

さて、銀一郎の提案した桜祭りですが、何とか村の人たちの同意を受けて、実施が決まる。
そうなるとまたいろいろ準備が大変で、銀ちゃんはちょっと弱気。
こんなに大勢の人たちを巻き込んで、失敗したらどうしよう。
本当にこれで良かったのだろうか・・・。
そんな中で、メインとなる樹齢300~500年という桜の木を、樹木医の方に見てもらうのですが、腐って空洞になっている部分があることが解ります。
でも、きちんと手当をすれば大丈夫。
樹木医さんはいいます。

「助かったのー、おまえ。
村の人が桜祭りするゆうてくれて。」


銀一郎の提案の最大の功績です。
人が来なかろうとなんだろうと、それだけで十分に意義があった。
いいシーンです。

思うに、村の人たちは本当は桜祭りなんて、失敗してもいいと思っているようです。
それよりも、一生懸命がんばっている若いもんに協力したい。
どんどん、やりたいことをやれ!
そんな気持ちが見えますね。
だから銀ちゃんもがんばることができる。

そして今まではなーんにもできなかったスミオくんが、
堂々と舞台に立って演技をしているのを見て、度肝を抜かれるメグと銀一郎。


前回はさりげなく前向き・・・と書きましたが、この辺はかなりの前向きになっています。
自分がすべきことが見えてきたら、突き進む。
やはりこれが若さだなあ・・・。
それも、自分一人じゃなくて、
周りの人の励ましがあったり、
人のがんばる姿に刺激されたり。
自分一人だけでは、勇気は出ない。

でもこういうのは、何も田舎でしかできないことではないですね。
都会が故郷になっている多くの若者。
自分たちの故郷を盛り上げる新たな仕組みが、これからできてくるのかもしれません。


一巻目、題材が新鮮ですごく面白いと思いましたが、
2・3巻目はまあ、普通に面白い・・・。
最後の最後に、垣間見える6年後の銀ちゃんとメグ。
ほほう。
やっぱりそうなりますか。
普通に生活して普通に幸せ。
これも貴重ですね。

満足度★★★★☆

「雨無村役場産業課兼観光係1」 岩本ナオ 

2010年07月15日 | コミックス
さりげなく前向きの若者たち

              * * * * * * * *

雨無村役場産業課兼観光係 1 (フラワーコミックス)
岩本 ナオ
小学館


             * * * * * * * *

少し前に、何かの紙面で紹介されていたので、このたび手に取ってみました。
東京の大学を卒業して、故郷の雨無村役場に就職することになった銀一郎。
ところがこの村の高校生以上の若い者は、
彼と幼なじみのメグミ、コンビニのバイト店員澄の3人だけ。
銀一郎はこの特産も名所もない村で観光係を命じられるのですが・・・。


今風の若者像なのだろうと思います。
決して熱血過ぎず、さりとてやる気なくぐうたらではない。
しらけてもいない。
淡々としているけれど、さりげなく前向き。
いいですよね。
こういう男子は好きです。
こういう男子は結婚しても、仕事一筋、家のことは知らんぷり、
などということにはならないだろうし、
家庭と仕事のバランスをうまくとるんじゃないかという気がします。

何しろ私がこれまで見たり読んだりしてきた漫画にしても本にしても、
団塊世代を照準としたものばかり。
その中の主人公たちは、熱血であるか、ぐうたらであるか、冷め果てているか、
どれかでした。
銀一郎のような等身大っぽい人物像を今の若い方はさりげなく描く。

そうして、「さりげなく前向き」が「やや力の入った前向き」になっていくあたりも自然で、
仕事のやりがいは何も大企業の一員でなくても十分にあるのだと言うあたりも、
うれしいのです。
若い人たちが地方で元気に活き活きと働くことができる。
そういう世の中がいいですね。


さて、これは少女漫画ですので、やはりあるのですよ。
ロマンスが。
この村では貴重な若い3人。
恋愛感情に発展しない方がウソですが、
これがまた、どうしようもなく一方方向オンリーの三角関係。
銀一郎は、ちょっと太めだけれど、気の利く世話女房タイプのメグミをいいなあと思う。
そのメグミは、澄緒にあこがれるけれど、彼は気づかない。
道行く誰もが振り向くイケメン草食系の澄緒くんは、実は銀一郎が好き(!?)
このどうにもならない三角関係を織り交ぜながら、
村おこしが進行していくのですね。
この巻ではまだ、やっと銀一郎の構想が浮かんだばかり。
とっとと次巻へ進むことにしましょう。

満足度★★★★☆

「テルマエ・ロマエ Ⅰ」 ヤマザキマリ  

2010年05月04日 | コミックス
お風呂限定タイムスリップ

テルマエ・ロマエ I (BEAM COMIX)
ヤマザキマリ
エンターブレイン


           
           * * * * * * * *

漫画大賞2010受賞というこの本。
そもそも題名が意味不明。
表紙はといえば、ギリシャ彫刻風のすっぽんぽんの男性が、
何故か風呂桶と赤いタオルを持って立っているという・・・。
しかし、妙に興味を引かれて読んでみたわけです。


テルマエ・ロマエとは、すなわち「ローマの浴場」の意味。
あ、テルマエって、つまり「テルメ」だったんですね!!
古代ローマで浴場の設計士として生活しているルシウス。
しかし近頃はマンネリで仕事もクビ。
そんなある日、浴場の底の穴に吸い込まれたルシウスは
なんと現代日本の銭湯にぽっかり浮かび上がった!!
銭湯の富士山の風景画や風呂上がりのフルーツ牛乳。
日本の入浴文化を学び古代ローマに持ち帰っては大好評を呼び、
人気の浴場設計士となる
・・・という、へんてこなお話。
しかし、確かに抜群に面白い。


日本の浴場シーンも楽しいですよ。
人のいい日本のおじさん・おばさんたちは、
突然現れた得体の知れない外国人にとても親切。
素っ裸なのはお互い様だからよかったですが・・・。
英語も通じない(ルシウスはラテン語!!)ので大変。
ルシウスは見るだけで日本の浴場を理解しなければなりません。
まあ、見ればわかりますかね・・・。
富士山の絵は、古代ローマではヴェスビオス火山の絵に様変わり。
果汁入り牛の乳飲料を売り出す・・・と。
うひゃひゃ。
こんな発想、どっから思いつくのでしょうね。

何故かお風呂限定のタイムスリップ能力を身につけてしまったルシウスは、
銭湯のみならず温泉に行ったり、
個人のユニットバスに現れたり・・・。
そもそも古代ローマに浴場があったというのは知識として知っていましたが、
そういえばいろいろな映画などでローマが舞台になっても
入浴シーンってあまり見たことが無いですね。
アメリカ人ではそもそも大衆浴場などがないから、
そういうシーンの発想もないのでしょう。
あったら面白いのにね!

満足度★★★★☆


「チャンネルはそのまま! 2」 佐々木倫子

2010年03月21日 | コミックス
ドジとピンぼけが呼ぶ好展開

           * * * * * * * *

チャンネルはそのまま! 2 (ビッグ コミックス〔スペシャル)
佐々木 倫子
小学館

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第2巻がでていて、はりきって購入。
さてさて・・・。
「バカ枠」採用でテレビ局に採用となった雪丸。
実は、私「1」の時にこんなことを書いております。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
この「バカ枠」ですが、何も本当に頭が悪いというのではなくて、
なんだか規格はずれ、というか変わっているというか、
思考や行動が普通じゃない。
まあ、大抵はピンボケであり、ドジであるわけですが、
時としてこれが思わぬ好展開を見せる。
そんな役回りの雪丸さんです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

それで、この巻を見て思ったところが、
どうもこの雪丸さんに生彩を欠くといいますか・・・。
なんだか本当にただの「バカ」に思えてしまいまして。
単に私の思い過ごしでしょうか。
・・・非常に微妙なところではありますが、
大事なところでもあると思います。
ピンボケでもいいけれど、どこか光るところがないと・・・。
では前巻では光っていたのかというと・・・う~む、
やっぱりただの思い過ごしでしょうか・・・?


さて、そんな中で私が好きなのは、
同期採用で年齢も同じなのに、なぜか皆に敬語を使われてしまう北上さん。
23歳なのに見かけがすっかりオジサンなので、
同期どころか他のスタッフにまでベテランと思われて頼られてしまう。
四苦八苦しながら地味な努力でこつこつ・・・って、
こういうキャラ、なんかいいですね。
こういう人は今時貴重です。


「海幸・山幸」
ここでは、市町村合併がテーマとなっています。
これは北海道が舞台の作品ですが、昨今日本中で起こっている話ですね。
海の町と山の町との合併話。
果たして勝算はあるのか。
TV局としては双方の住民の話を平等にインタビューし、まとめるだけですが、
雪丸が現れると何かが起こる・・・?!
あのカレーライスが妙においしそうなんだなあ・・・。
今度、北海道物産展で出してほしいくらいです。


というところで、この佐々木倫子さんの職業シリーズ。
TV局篇は・・・どうも、あまり長くは続かないのでは???
というのが私の勝手なる予想です。

満足度★★★☆☆

「海街Diary3/陽のあたる坂道」 吉田秋生

2010年03月03日 | コミックス
それぞれの揺れる思い

               * * * * * * * *

海街diary / 3 / 陽のあたる坂道 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館

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でました。お待ちかね海街Diaryの3巻目。
古都鎌倉で暮らす異母姉妹の物語。


一作目、「思い出蛍」
四人姉妹は亡父の一周忌のために山形へ向かいます。
ああ、そうなんですね。
三姉妹がすずちゃんと出会ったのがちょうどこの一年前、という物語の設定です。
あの一番始めの物語が鮮烈でした。
行き場のない思いと行き場のない身を一人で抱え込んでいたすず。
本当に彼女の嗚咽が聞こえるような気がしたのです。
お父さんとの思い出の地は、やっぱり苦い思いを呼び起こすけれども、
今きちんと自分の居場所があるすずは、思い出は思い出として割り切ることが出来る。
あの始まりのストーリーに、このような後日談があるのは何ともうれしいのです。


さて、この巻では四姉妹それぞれの思いがそれぞれに語られていきます。
特に、妻子ある医師と不倫の関係にある幸。
そしてすずが同じサッカーチームの裕也に寄せるほのかな思い。
それぞれの年齢に見合った揺れる女心。
それがやや変化をみせるのです。
緩やかな時の流れ。
変わらないように見える古都。
変わらないように見える彼女らの生活。
でも、それも少しずつ緩やかに変わって行く。

私はやっぱり風太君がオススメですけどねー。
よく気がつくし、いつも家の手伝いをしている働き者。
しかも家が酒屋なんて、もー言うことなし!!
さて、その酒屋さん。
やはり今風でHPなんか作っている。
そこにコラムを書いている「弁天」さんが、なんと次女の佳乃。
なるほど、ダテに大酒飲みではないわけなんですね・・・。
しかし、吟醸酒に「熊うっちゃり」や「熊おとし」は
ネーミングセンスがやや違うのではないだろうか・・・??? 
吟醸酒は「強さ」というよりは繊細な香りを楽しむ物、と私は解しておりますが。

しかしこの佳乃さん、意外にもきっちり仕事をこなすオツボネ信金職員だったのです。
それぞれですねー。
この巻では相変わらず三女千佳が未だにつかみ所がない。
もう少し先を期待しましょう。
一番年が近いすずにとっては、一番親しくつきあえるお姉ちゃんのようですが。


やっぱり大満足の一冊でした。
さて、いつも名前だけ出てくるドジな看護師アライさんとは、いったいどんな人なんでしょうね。
一度ちゃんと見てみたいものです!!

満足度★★★★★

「山へ行く/シリーズここではない★どこか1」 萩尾望都

2010年01月19日 | コミックス
山へ行く (flowers comicsシリーズここではない・どこか 1)
萩尾 望都
小学館

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さて、順不同になってしまったのですが、
萩尾望都短編シリーズ「ここではない★どこか」の第一弾です。
今更気づいたのですが、このシリーズ、小説家の生方(うぶかた)氏がよく登場します。

この冒頭が表題の「山へ行く」ですが、ここで、生方氏が初登場。
特別な事件があるわけではありません。
彼は朝起きるなり、「そうだ、今日は山へ行こう」と思いつきます。
ハイキング程度の近所の山なのですが、とにかく山の麓まで自転車で出かけた生方氏。
ところが、妻と娘・息子からいろいろ連絡が入ったり、用事を頼まれたり。
編集者とばったり会って仕事を押しつけられたり。
日常の雑事がいつにもまして吸い寄せられてくる。

山が薄れていく・・・、
山に行けるんだろうか・・・
行くんだ。
山の静寂・・・
山のにおい・・・・・

しかし、結局山には行けずじまい。
夕方家に帰れば奥さんに
「お父さん!おトーフは?」
「あっ・・・・忘れた」
「あーあ!」
「・・・・今日は忙しくて・・・・・」
「なにもしてないじゃない」
という具合。
それでも彼は、
いつか山に入って山の空気を吸って山にとけて、
すっかり人間を忘れるひとときを手に入れよう・・・・・・・と思う。

こういうストーリーなんですけどね。
しかし、これって私にはすごく幸せな状況と思えるわけです。
賑やかな家族、近所の人、仕事関係の人、
そういう人とのつながりがしっかりあって、
忙しい忙しいとつぶやいて、
しかし理想はやや棚上げ・・・。
だけどこれって望みうる最高の幸福なんですよね。
誰もいない山の静寂。
それもいいけれど、人の中に自分の居場所がきちんとあること。
これは生きていく上ではとても大切です。


次の「宇宙船運転免許証」もいいですよ。
この生方氏のところに宇宙船運転免許証の更新のお知らせが届く。
宇宙船の、「運転」というところが、何とも微笑ましいのですが。
生方氏と今は亡き弟の少年時代、この免許証をもらった記憶がある。
30年が期限切れなので更新の手続きにくるようにとの通知・・・。
信じられないことだけれども・・・。
不思議なテイストの一篇ですね。


時には人生の深みに切り込み、
時にはSFチック、そしてまた時には怪談めいて・・・
自由自在のストーリー展開。
やはりこれは1・2巻とも読んでみるべきですね。

満足度★★★★☆