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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「銀の匙 2 」荒川弘

2013年03月02日 | コミックス
こんな点数にもならないことに 俺はいったい何日費やしたんだろ。

銀の匙 Silver Spoon 2 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


            * * * * * * * * *

さて今作の冒頭はとびきり素敵なエピソード。
構内のゴミの山から石窯が出て来ました。
ピザを焼けるかも・・・と八軒がつぶやけば、
周りの友人達は口々に、ピザの宅配に憧れていたというのです。
ケータイは圏外だし、宅配ピザもあるわけない、
そんなところに住んでいる子が多いのです。
そこでつい、皆にピザを作ってやると言ってしまった八軒。
無論ピザなど作ったこともありませんが、
持ち前の学習力で研究。
チーズやベーコン、野菜、すべて学校内で生徒たちが作ったものが持ち寄られます。
その出来栄えは・・・。
う~ん、本当に美味しそうですね。
すべて自家製(小麦粉ですら!)のピザだなんて、なんて贅沢なんでしょう。
それもこれも以前にほんのちょっぴり八軒がお手伝いなどして知り合った人々のお陰です。
人と人とのつながりって大事なんだなあ・・・。
皆の満足そうな笑顔に、八軒も充足を覚えたようです。


そうして、いよいよ夏休みに突入。
八軒はやはり家には帰りたくなく、
御影さんの実家の農場でバイトをして過ごすことにします。
親なんか関係ないと言いながら、
一応家には帰らない旨、母へメールを送ろうとするのですが、
圏外のため繋がらずにじたばた・・・。
そんなところもちょっといい。
そしてここで八軒はまた大きな体験をします。
私達にとっては非日常、残酷なこと。
けれども私達が"命を食べる"以上、
知っていなくてはならないこと、目を背けてはいけないこと。
八軒にとっては非常に大きな試練なのでした。
ひ弱だった八軒が、毎日の運動や実習でどんどん体に筋肉がつきたくましくなっていきますが、
ちゃんと心の方もたくましくなっていくんですね。


さて、八軒はかなりお人好し、というか、頼まれると断れない。
「類まれなる押しの弱さ」といわれる
先日読んだ「横道世之介」くんにちょっと似ているような・・・。
周りの友人達ですら、あいつはお人好しでソンをするタイプ、とささやいています。
けれど本人は全然屈託がない。
こういうふうに育った彼の家庭はそんなに悪くはないのでは?と私には思えるのです・・・。
こんなことに関しても、この先が楽しみですね!

「銀の匙 2 」荒川弘 小学館少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「銀の匙 1」 荒川弘

2013年02月25日 | コミックス
お前らは家畜のドレイだ!!

銀の匙 Silver Spoon 1 (少年サンデーコミックス)
荒川 弘
小学館


            * * * * * * * * *

大自然に囲まれた大蝦夷農業高校に入学した八軒勇吾。
授業が始まるなり子牛を追いかけて迷子、
実習ではニワトリが肛門から生まれると知って驚愕…などなど、
都会育ちには想定外の事態が多すぎて戸惑いの青春真っ最中。
仲間や家畜たちに支えられたりコケにされたりしながらも日々奮闘する、酪農青春グラフィティ!!


            * * * * * * * * *

北海道の農業高校が舞台という今作、
以前から気になっていましたがやっと読むことができました。
すでに読んでいる方も多いでしょうし、今更・・・と言われそうですが、
一巻ずつ追って行きたいと思います。


まずは、主人公となる八軒勇吾が、大蝦夷農業高校(エゾノー)に入学したところから。
彼は札幌のサラリーマン家庭の息子で、
農業にはハナから興味もなかったのです。
彼自身は「家に帰らなくても済むから」全寮制のこの高校に来たと言うのですが・・・。
ひたすら良い成績をとることだけに費やしてきたこれまでの生活に疲れ果てたようにも見えますし、
家族とうまくいっていない様子も伺える彼。
まあ、そのへんの詳細はきっと今後語られて行くでしょう。
エゾノーに入学するのはたいていは農家・酪農家の息子・娘たちです。
皆、将来家を継ぎ、発展させることを夢として、専門分野には異常に詳しかったりします。
一方農業はもちろん、他のことに対しても何の夢も希望も持たない八軒は、
一人溶け込めず違和感を覚えるのでしたが・・・。
そんなことに悩むヒマもなく、
日々の授業や実習、部活とヘトヘトになる毎日が始まります。


私達と同様、酪農のことなど何も知らない八軒が、
少しずついろいろな体験を通して今の「酪農」を知っていく、
そして友人たちとの絆を深めていく様が、
非常に楽しく描かれています。
そしてまた、私達が普段目を背けている、
"命を食べる"ということの原点を
少しずつ掘り下げていこうとしていることも伺えます。
八軒は、目の前を走り回っていた鶏が、次の一瞬には頭をはねられてしまいショックを受けたり、
なんとも愛らしい子豚に名前をつけようとして、友人たちに咎められたりします。
あとで辛いからと。
ここは一巻目なので、まだほんの序の口。
このペース配分がなかなかよろしい。


それから、彼の友人たちのそれぞれ個性豊かでなんとユニークなこと。
ちょっと強面の駒場くん、
優しげな獣医志望の相川くん、
数学が超苦手の常盤くん、
顔立ちは美人なのにコロコロ卵体型のタマコさん、
このA班のメンバーがナイスです。
そしてもちろん、八軒の憧れ、御影さんも、
元気で可愛くてウレシイ。
ず~んと胸に迫ったのは、八軒が初めて見に行ったばんえい競馬、
見開きページの迫力描写! 
すごいですね、ドキドキします。
北海道にいながら、私は実際に見たことがないのです。
ぜひ一度見たいものです。
ばんえい競馬に使われるのはものすごく大きくたくましい馬。
サラブレットとは全然違います。
今度機会があれば是非見たいと思います。


まずは、主な人物紹介、状況紹介から始まった巻ですが、
十分以上に、今後の展開に期待を持たせてくれました。
早く次巻へ行きましょう!


「銀の匙 1 」荒川弘 小学館少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「きのこいぬ3」 蒼星きまま

2012年12月31日 | コミックス
思いきりふかふかのきのこいぬ抱き枕がほしい!!

きのこいぬ 3 (リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


            * * * * * * * * *

まってました、第3巻。
またまた、きのこいぬの謎の生態が明らかにされます。
といっても、それを追求するというストーリーではありません。
ひたすらほたるが好きな、きのこいぬの行動を描くだけ。
単純で、一生懸命で、ほんのちょっぴりわがまま。
それは確かに犬そのものですよね。


きのこいぬの好物はたこ焼き。
でもある暑い夏、アイスクリームを食べるのですが、
なぜかきのこいぬの体はひんやり。
なんと、きのこいぬは変温動物(?)だったのですね! 
エアコンが壊れてしまった夏、
きのこいぬはせっせとアイスクリームを食べ、ほたるを冷やそうとします。
夏はアイスノン、冬は湯たんぽ代わりにもなって、いいですよねえ~。


ビニールプールではしゃいだり、
留守番でたそがれたり・・・
見てるだけで癒されます。
思いきりふかふかのきのこいぬ抱き枕がほしい!!


さしてストーリーに進展があるわけでもないのですが
やっぱり、次の巻を待ちわびてしまいます。

「きのこいぬ3」 蒼星きまま  徳間書店リュウコミックス
満足度★★★★☆


さて、皆様、大晦日です。
いつもこのブログに来ていただいている方、
コメントを頂いている方、
どうもありがとうございます。
来年もまた、このペースで行こうと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。

このお正月は少しゆっくり読書ができればいいなあ・・・と思っています。
実は電子書籍端末キンドルを購入しましたが
今のところ未読のペーパー版が山になっていて、
当分出番はなさそうです。

ではでは、良いお年をお迎えください!!

「猫なんかよんでもこない」 杉作 

2012年12月27日 | コミックス
男子の不器用な猫への愛。

猫なんかよんでもこない。 (コンペイトウ書房)
杉作
実業之日本社

            * * * * * * * * *

この愛くるしい猫のイラストに、もう少しメルヘンチックなストーリーかと思ったのですが、
今作は著者杉作氏の青春の挫折と再生を描く、味わい深いストーリー。
良い方に期待は裏切られました。


杉作氏は、もとプロボクサーという漫画家には珍しい経歴の持ち主。
漫画家だったのは彼のお兄さんで、
ある夜、二匹の子猫を拾ってきたのです。
男の子がクロ。女の子がチン子。
この名前にはちょっと異議がありますが、
著者の故郷で"小さい"ことを"チンコイ"というので、そこから来た名前とのこと。
(北海道でもチンコイは、使います。)
ミツオ(杉作氏)はもともと猫は好きではなかったのです。
猫なんか、呼んでも来ませんしね・・・。
ところがお兄さんが家業を継ぐため故郷に帰ってしまい、
ミツオはわけあってボクシングの道を断念せざるを得なくなります。
仕事もなくお金もなく、ほとんど引きこもり状態のミツオは、
猫と共に密やかな生活を続けることになる。
そんな日々を綴ったストーリーですが、
これが意外と悲しい方向へ進んで行きます。
この猫の可愛さに騙されますが、
非常にリアルなストーリーなのです。
しみじみと、読みふけってしまいました。


女の子が猫を可愛がるのとはどこか違う。
男子が猫を可愛がるというのはこんな感じなのかと、ちょっと面白く思いました。
不器用な愛情表現。
これもよし、ですね。


このクロとチン子は、ぜひ羊毛フェルトで作ってみたい!!
うまくできたら、ご紹介しますね。

ところで、どうでもいいことですが、
このミツオの顔、どれがまぶたでどれが目なのでしょう・・・。
誰か教えて・・・。

「猫なんかよんでもこない」 杉作  実業之日本社
満足度★★★★☆

「海街diary5 群青」 吉田秋生

2012年12月23日 | コミックス
晴れた日は空が青い

海街diary(うみまちダイアリー)5 群青 (flowers コミックス)
吉田 秋生
小学館


            * * * * * * * * *

まずはこの本の深い青色の表紙に目を奪われます。
まさに「群青」。
この本は、この空の青さがバックを流れるテーマです。


すずと風太は、それぞれにある秘密を知ってしまいます。
そのことは誰にも話してはいけないと、口止めされてしまいました。
そして、それは確かに口に出してはいけないことだと、理解しているのです。
でも、いまお互いを知り、信頼しあっているこの二人は、
それを話して相手の意見を聞いてみたくて仕方ありません。
風太は思います。
「空はこんなに青いのに・・・いちばん話したいのに・・・話せない」
それは同時にすずの気持ちでもありました。
でもお互い、やはり口にすべきでないことは話さないのです。
うん、いい子たちですね。
いつもなら心浮き立つ青い空なのに、
なんだか重い二人・・・。


さて次は山猫亭のおっちゃんのお話。
人は見かけによらないといいますが、このおっちゃん、
エベレストの見えるところに5年ばかり住んでいたというのです。
その彼は言う。
「どんなサイアクな気分の時でも 晴れれば世界で一番蒼い空やし、
その下には神様の住んどる世界で一番高い山や。
なんでこんなにキレイやねん。
人の気ィも知らんで―とか思っとった」
「お陽さんが人の気ィにいちいち反応しとったら
エライことなってまうわ」


また、今まで苦労を重ねひたむきに生きてきた人が、
重い病気にかかっていることを知った佳乃。
「無性に腹が立ちます。神様ってやつに。
・・・それでこの仕打ちかって。
あんたケンカ売ってんのかって」
同僚はいいます。
「でも神様は人の事情をいちいち考えてはくれない。
だから神様はありがたくて・・・恐ろしいんでしょうね」


色々な人の生き様や思い・・・
そういうものを見たすずはやはり思うのです。

「晴れた日は空が青い。
どんな気持ちの時もそれは変わらない。
それだけは神様に感謝したいと思います」

人の気持とはかかわりなく、
ひたすらあるがままの自然、青い空、そして神様。
こういう不動のものが、結局は私たちの心の揺れや浮き沈みを鎮めてくれるのかも知れません。
統一したテーマの流れるこの巻は、
またまたレベルの高い一冊でありました。


緩和ケア病棟の担当となった幸。
イメージと裏腹に、仕事の鬼と化した佳乃。
謎のアフロ店長とお似合いそうな謎の千佳。
風太とともに、まだまだ心身ともに成長中のすず。
今後も楽しみいっぱいです。

「海街diary5 群青」 吉田秋生 小学館フラワーコミックス
満足度★★★★★

「テルマエ・ロマエⅤ」 ヤマザキマリ 

2012年10月27日 | コミックス
深遠なる“歴史”の意図に翻弄されるルシウス

テルマエ・ロマエV (ビームコミックス)
ヤマザキマリ
エンターブレイン


                 * * * * * * * * * 


前巻より長編ストーリーとなり、
現代日本からルシウスが帰れなくなってしまった・・・という話でした。


温泉地にすっかり馴染んだルシウス。
何故お馬さんとまで仲良くなってしまったのか。
その答えは本巻にありました。
それはさつきさんが、
ルシウスが本当に古代ローマ人であることを納得するためのものでもあるのですが、
著者の壮大な野望が隠されてもいたのです。


二頭立ての馬車(馬車じゃなくてチャリオットというらしい)のシーン、
私は思わず映画「ベン・ハー」を思い出したのですが、
それこそが著者の意図。
ここで、大スペクタクルシーンを描きたかったのですねえ・・・。
すごいです。
はまりました。


ルシウスとさつきのほんのりした恋らしきもの。
そしてそれを見守るさつきの祖父がまた大迫力。
なぜかトミー・リー・ジョーンズ似のこの祖父は、
すご腕の整体師で、義侠心溢れ、地元の見守り役。
さつきの気持ちを見抜いた彼は、勝手に鯛を買い込んで、
さつきの疑問符も素知らぬ顔でお祝いと決め込んだりする。
いやあ、なんとも笑いのツボをついてくれます。


純朴で口下手のルシウスは、さつきに花などをプレゼントしてみては・・・と、逡巡するのですが、
できそうでできない。
こんなところ、なぜかルシウスは西洋人というよりもいかにも日本人的。
もともと、日本人の精神構造に近いのですよね・・・。
だからこそ、時の道がつながったのかも。


この度は、明らかに何か"歴史"の意図によって、
ルシウスが日本にとどまらされたり、ローマに呼び戻されたりしています。
ルシウスの旅には深い意義がありそうです。


・・・で、なんとも盛り上がるラストで、
また"つづく"になっちゃうんですよ~。
あ~、また半年。
待ち遠しいことです。

「テルマエ・ロマエⅤ」ヤマザキマリ エンターブレイン
満足度★★★★★

「ガラスの仮面 49」 美内すずえ

2012年10月26日 | コミックス
もしその人が本当に魂のかたわれだったら、気持ちはきっとあなたと同じ

ガラスの仮面 49 (花とゆめCOMICS)
美内すずえ
白泉社


                   * * * * * * * * * 

さて、49巻目。
この次はいよいよ50巻だね。
記念にいいことがあればいいけど・・・。
というのは、今回は嫌な展開になっちゃったからね。
そうなんだよ。問題は紫織さんね。
 う~、やだやだ。
 私はね、こんなふうにどのような温かい目で見ても、
 絶対に好きになれない人物が登場する話って嫌なのよ・・・。
 そもそも彼女をこんな人物像にしちゃうあたりは、著者の見識を疑うよ・・・。
何もそこまで言わなくても・・・。
だってさ、通常の少女漫画なら、たいていは亜弓さんをこういう性格にしちゃうよね。
 そうでないところがいいなあって、思っていたんだよ。
 なのに、今になってこれかい、って、何だか裏切られた気がしちゃうね。
 あまりにも古典的な嫌な女だよね。
マヤに意地悪をして、笑っていられるうちがまだ良かったな。
今回だって、何度も自分から死にそうになるくせに
 生きているっていうのが、と~っても気に入らない!
まあ、まあ・・・。
 それでね、心優しい真澄様は心を鬼にして、マヤへの思いを振りきって、
 紫織さんとの結婚を承諾しちゃうのだけれど・・・。
こういう変な優しさは実は一番残酷なのにね。
そうだね・・・、それを聞いたマヤのショックは、想像に難くない。


だけどね、意外にもマヤへは月影先生が良いアドバイスをするよねえ。
 「もしその人が本当に魂のかたわれだったら、気持ちはきっとあなたと同じ。
 そういう態度をとるのはたぶん何か事情があるはずよ・・・。」

いやあ、意外にいいオバサンだったんだね。
 それどころじゃない、集中しなさい。とか、
 そんな人はさっさと忘れなさい。とか言うと思ったよ・・・。


揺れ動くマヤの気持ちも落ち着きを見せて・・・。
 いよいよ廃線の駅を舞台とした試演がはじめる・・・。
うーん、やっぱり私ならマヤのチームの方を見たいけどね。
 何が起こるかわからない、といったドキドキ感があるよね。
 亜弓さんは大きなハンディを背負いながら健闘しているけど、
 なんだかやっぱり上品すぎる気がする・・・。


それから今回ラストの方で、ついに聖の心底がかいま見えるね。
そうそう・・・、いいんじゃないでしょうか。
 そうじゃなくっちゃね!
それからなんと、この本と同時に「ガラスの仮面」名台詞カルタなんていうのが、
 発売されたようだ・・・。
ひゃー、そ、それはまずい。
 つい買ってしまいたくなるじゃないの―!
 か、買わないけど・・・。
商魂のたくましさ、頭が下がります・・・。


「ガラスの仮面 49」美内すずえ 花とゆめCOMICS
満足度★★★☆☆


「天才柳沢教授の生活 33」 山下和美

2012年09月26日 | コミックス
“嘘”も時には人を幸せにする

天才 柳沢教授の生活(33) (モーニング KC)
山下 和美
講談社


                      * * * * * * * * *  

やはり柳沢教授の少年時代が好きな私。
今回も柳沢少年のエピソードをご紹介しましょう。


第225話「彼女に聞きたくて」
柳沢少年のクラスに転校してきた寺山菊江。
お人形さんのように可愛らしい彼女は、義父が銀幕の大スター五所河原秀雄で、
彼女自身も名子役として多くの映画に出演し、人気が高いのです。
当然のように周りの皆は彼女に対してちやほやするのですが、
柳沢少年だけはいつもの通り。
綺麗なエナメルの靴を履いている彼女に、

「ところで寺山さん 
学校の中ではうわばきに履き替えていただけますか?」

凍り付く周りの空気。
柳沢少年はその後皆から無視されるハメになるのですが、
もちろん、彼はそんなことは少しも気になりません。
でも、寺山菊江は更に上手を行っており、
柳沢少年のこの意地悪な発言にもにっこり笑って返す。
ある時柳沢少年は、気になっていたことを彼女に聞きます。

「君は何故常に笑っているのですか?」

彼女はほんの一瞬険しい表情で

「だって、みんなに愛されることが私の仕事なのよ」

この凄まじいまでのプロ意識とプライドに圧倒されます。
けれど、柳沢少年はさらに考える。
では、何も演じていない彼女は一体どこにいるのだろうか・・・
人間観察が好きな柳沢少年、やはり、周囲の同じ年の子供たちからは突き抜けていますね。
でも、今作ではふたりとも年齢相応のところも見せてくれるので、楽しい作品になっています。



第228話「未来を生きる君たちへ」
クリスマスのお話です。
柳沢家では子供たちが大騒ぎ。
サンタクロースはいるか、いないか、口論になっているのです。
妹則子はサンタはいるといって譲らないのですが、
柳沢少年は超現実的なので、ハナからサンタは信じていません。
弟次郎は、お兄ちゃんを尊敬しきっているので、
兄がいないというなら、いないのだと思っています。
柳沢少年は夢いっぱいの妹に向かってこう言います。

「今夜はプレゼントはありません。
なぜならお父さんが長崎への出張から戻ってくるのは2日後だからです」

まあ、あまりにも身も蓋もありませんね・・・。

私も実は幼い頃にサンタの存在について、
近所の男の子と大げんかをしたことがあります。
もちろん私は「サンタはいる」派。
・・・でも実は薄々いないとわかっていたような気もします。
ただ、『いる』という夢を共有したかったんですよね・・・。

さて、ところがクリスマスの朝、
ちゃんとプレゼントが置いてあったのです。
そんなはずはない・・・と思いながらも柳沢少年は、
自分宛のプレゼント、心から欲しかった船のプラモデルを手にして、
どんどん心が高揚していきます。
その謎はやがて解けるのですが、
柳沢少年は『嘘』も時には人を幸せにすることを知るのです。


さて一方、現在。
孫の華子ちゃんが、柳沢教授の娘、世津子に
「サンタなんていない」
と言われて泣いています。
教授曰く
「いないと証明できない以上、いる可能性は否定できません」
・・・いいお話ですね!

「天才柳沢教授の生活 33」山下和美 モーニングKC
満足度★★★★☆

「天才柳沢教授の生活 32」山下和美

2012年09月25日 | コミックス
少年時代が好き

天才 柳沢教授の生活(32) (モーニング KC)
山下 和美
講談社


                           * * * * * * * * * 

この本は実は昨年12月、発刊まもなく買って読んでいたのですが・・・、
どうも特別にご紹介したい話がないようで・・・
寝かせたままになっていました。
そうこうするうちになんとまた次の新刊が出てしまい・・・。
やはり、せっかくなので一冊抜けるのも嫌だし、ということで
遅まきながらご紹介します。


冒頭、219話「遠く離れて」
なんだかこの頃お母さんの機嫌がとても悪い。
というのも近頃よく夜中にかかってくる電話のせい。
いたずら電話ではなさそうなその相手は、
いつも何語かよくわからない言葉で語りかけてくるのだけれど、
ちっともわからない。
「ヨモハラセンセ・・・」と、呼んでいるようで、
どうも番号を間違えてかけてきているようなのですが・・・。
柳沢教授は、もしかすると、うちとよく電話番号の似た
四方原教授と間違えているのかもしれないと思うのです。
けれど彼は2年前に亡くなっている。
柳沢教授はそれを相手に伝えようと思うのですが、
しかし、彼は電話にでることができない。
なぜなら、教授は9時できっぱり眠ってしまうので!!
はは・・・、ここが教授の教授らしいところです。
滅多なことでは生活習慣を変えません。
けれど2年前亡くなった四方原教授に
一体誰が何を伝えようとして夜毎電話をかけてくるのか。
好奇心がつのった柳原教授は、ある夜中、ついに自ら電話をとる・・・!!!
人と人の絆というのは、奥深いものですね。


223話「好敵手の追憶」
教授の少年時代のストーリーが好きです。
沈着冷静、頭脳明晰、三白眼のその少年は、
けれどもちっとも優等生ぶらず、人を見かけで判断したりもせず、
常に好奇心の赴くままに行動する。
そんな時同級だった相葉啓二氏はやはり優秀で、
政治の道に進み官房長官まで勤めた。
二人は小学校の時以来、何十年ぶりかで再開します。
相葉氏は語ります。

「私は誰にも弱みを見せたことがなかった。
親にも兄弟にも。
誰かに弱みをみせればそれですべてが失われると信じ続けてこの年まで生きてきた。
子供の頃、一番眩しかったのが君だ。
君は失うことなど少しも恐れず、純粋にあらゆるものに好奇心を抱いていた。」

そんな彼は、ある日柳沢少年に弱みを見られてしまったと思い込んで、
そのまま今日まで来てしまっていたのですね。
二人の性格、生き方。
まさにそれぞれの道。
時の流れが、どちらの生き方も肯定しています。


「天才柳沢教授の生活 32」山下和美 モーニングKC
満足度★★★☆☆

「信長協奏曲 7」 石井あゆみ

2012年09月10日 | コミックス
盛り上がる女たちに信長の一言、「みないほうがいいよ」

信長協奏曲 7 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


                         * * * * * * * * * 

新刊がでましたね~。
高校生のサブローが、この時代に来て何年たったのか。
思えば遠くにきたものですよねー。
と、感慨にふけるにはまだ早いですけどね。


今作では、ちょっと悲しい出来事が・・・。
そう、信長の忠臣のひとり、森可成の討ち死に。
こんな人に忠義を誓ってもらえる人物にサブロー信長は成長した、ということでもある。
まあ、私らはその息子の森蘭丸のことしか知らなかったので、興味深いことではありました。
残された森ブラザーズも、可愛らしくて、今後の成長が楽しみ。


さてところで、今作中で城の女たちが、明智光秀の素顔について話題になりますね。
いつも涼やかな目元が見えるだけの頭巾姿。
是非その素顔をみたい!!と話題騒然。
しかし、こればかりは・・・。
信長サブローと瓜二つのその顔は、もちろんトップ・シークレット。
女たちの願いにも、さすがにサブローは「見ないほうがいいよ」と、ひとこと。


それから珍しくサブローが愚痴をいうシーン。

「なんかやっぱりさー、トシだよねトシ。
疲れがさーいつまでもとれないよね。
ほらー、去年は戦のぶっ通しだったじゃーん?
ピンチだらけだったしさー。なんか疲れちゃったよ・・・
正月は正月で忙しいしさ・・・」

そんなことを言うサブローにミッチー(光秀)はいいます。
「わしの顔を忘れたのか?」

そうそう、瓜二つの二人は入れ替わっても誰にも分からない。
そこでミッチーが信長として公務をこなし、サブローが気晴らしに出かけるというわけ。
いやあ、王子と乞食じゃないけど、こんなこともできるというわけですね。
早い話が影武者だ。
本当に、このストーリーは本能寺の変で一体どうなっちゃうのだろうと、
そこが非常に気にかかります。
それからミッチーは、サブローの身代わりをして松永秀久の応対をするうちに、
サブローが遠い未来の日本から来たことを知ってしまうよね。
松永秀久もまた、未来からやってきた人物で、
いわばサブローの同士だから・・・。
でも、それでまたミッチーはますますサブローのために力を尽くそうと
いよいよ決意を固めるわけ。
う~ん・・・。
ね、それでどうして本能寺の変にストーリーが転がるのか、不思議でしょう。
まだまだ先の話ではありますが、楽しみですねー。

「信長協奏曲7」石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆

「きのこいぬ2」 蒼星きまま

2012年08月12日 | コミックス
朝イチの胞子放出?

きのこいぬ 2 (リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


             * * * * * * * * * 

さて、さっそく第2弾を読んでみました。
きのこいぬ。
ますますパワーアップです。


まず、前巻では好物がメロンパンとなっていましたが、
ここではたこ焼きが追加。
それも、なんと自分でたこ焼き器で作るんですよ!! 
字もろくに書けないくせに、なんて器用なんだ。
すごい! 
こんなペットならいいなあ・・・と思わず思ってしまいますよね。
もっとも普段は、タコ無し、ソースもなし、
ただの小麦粉・卵ボールのようなのですが、
これも焼きたてなら美味しそうですけれど・・・。


それからまた不思議な生態が判明。
なんときのこいぬには歯がない。
癇癪を起こすと思わず人に噛み付いたりもするきのこいぬですが、
「がぶっ」と噛み付いたつもりが、
歯がないので「ふに ふに ふに」となってしまう。
それで、相手は
「はははは!!!くすぐったい!!」
ということに。


そしてさらに、きのこいぬは、朝起きると庭に出てホワ~っと胞子を放出したりします。
ほたるは、朝一のトイレみたいなものかな、と思うのです。
しかし、とすれば、いつも布団についているたくさんの胞子は、
もしやオネショ・・・???
いやいや、深くは考えないほうがいいのでしょう。
まあ、たしかに、胞子であってオシッコではないので、不衛生ではないですよね。
しかし、この無駄に放出される胞子は、どこかでまた根付いたりはしないのでしょうか。
増殖するきのこいぬ。それも悪くはない。


また、珍しくきのこいぬを連れてホタルが山へハイキングへいったときのこと。
しかし途中ではぐれてしまいます。
慌ててきのこいぬを探すほたるですが、彼がそこで見たものは・・・

森の動物達と仲良くお話をしているきのこいぬ。

まあ~。なんてメルヘンなんでしょ!!
その生態が知れるに連れ、ますます不思議で可愛らしくなってしまいます。
とにかく癒されます。
待たれる次巻。


「きのこいぬ2」蒼星きまま 徳間書店リュウコミックス
満足度★★★★★

「きのこいぬ」 蒼星きまま 

2012年07月31日 | コミックス
いぬか? きのこか?

きのこいぬ(リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


                  * * * * * * * * * 

切なくもじんわりと胸にしみる、愛犬家ならより一層・・・。
癒し系のコミックです。


愛犬、はなこを亡くして、傷心の絵本作家、夕闇ほたる。
庭にピンクのきのこが生えているのを見つけ、
見つめていたら、もぞもぞと動き出して犬になっちゃった・・・!
それが"きのこいぬ"です。


"きのこいぬ"は、以前からこの庭に生息(?)していたらしいのですが、
いつもほたるとはなこが仲良く寄り添っているのを眺めていたのです。
ほたるは少年時代に両親をなくしていて、
はなこが唯一の"家族"でした。
そのはなこを亡くして、ほたるはすっかり仕事の意欲も生きる意欲もなくしていたのです。
そのほたるを見かねて、一念発起したピンクのきのこは、
エイっとばかりに、イヌに変身。
ほたるを慰めようと、一生懸命。
うーむ、このきのこは、きのこ似た未知の宇宙生物? 
全く正体不明なのですが、本作の登場人物たちは、さして頓着しません。
ほたるは、単に家に入りたそうだったからと、入れてしまうし、
幼馴染の担当編集者、こまこは、不気味に思いながらも
ホタルがいいのならよしとする。
きのこ研究所員の矢良くんは、その生態を解き明かそうともせず、
ほたるをめぐってのライバル関係に。
みな何やらのほほんとしたところが、なんとも言えなくいい味になってます。
あくせくしすぎず、脱力系。
こういうのが好きです。


しかし、この"きのこいぬ"、
見かけはこんなでいかにも癒し系ですが、
感情表現は意外とワイルドで、
はなこの思い出の首輪や、残っていたペットフードは燃やしてしまうし、
はなこを思い出しているほたるを土手から突き落としたりする。
そんな"きのこいぬ"を怒りもしない、ひたすら人のいいほたるなのです。
・・・いや、人がいいと言うよりも単に鈍感なのかも知れませんが。
"きのこいぬ"はそんなほたるが大好きなのですが、
ほたるは"きのこいぬ"ははなこが好きだったのだろうと思っているのです。
そんなふうだからこそ、みんなほたるが好きなんですけどね。


私もちょっぴりかつての愛犬を思い出してしまいました。
我が家にもはえてこないかな。
きのこいぬ。

「きのこいぬ」蒼星きまま 徳間書店
満足度★★★★★

「なのはな」 萩尾望都

2012年06月09日 | コミックス
著者の祈り、私たちの祈り

なのはな (コミックス単行本)
萩尾 望都
小学館


                   * * * * * * * * *  

今作は月刊Flowersにて、"シリーズここではない★どこか"の一環として発表されたものです。
なので、しばらくすればいつものコミックスにまとめられたのだろうと思います。
けれどもこの度、単行本として独立して発行されたこの本の意味は、
手に取ればはっきりとわかります。
2011年3月11日。
私たちの心にしっかりと焼きついた重い出来事。
でもそれはそのとき限りのことではなく、そこから始まる新たなイバラの道のスタートであったわけです。
著者の3.11への思いが見事に結集した本となっています。


巻頭の表題作「なのはな」は福島県に住む家族のストーリーです。
小学6年のナホの家は農家ですが、放射能の避難区域にあったため、
別のところに住んでいるのです。
たまたまあの日、浜の方へ出かけていたおばあちゃんは、未だに帰りません。
「今度の一時帰宅の時には何を持ってこようか」、
そんな会話がなされます。


ナホの心を占めるのは、同じく放射能に汚染されたチェルノブイリのこと。
自分の家のこと。
帰らないおばあちゃんのこと。
破壊されてしまったそれまでの穏やかな生活。
両親やお兄ちゃん、おじいちゃんもいて
一応は充足した生活を送っているように見えるのですが、
根底にはどこにも持って行きようのない怒りや悲しみがあります。
少女の混乱した心が昇華されていく様に、
涙を誘われてしまいました。
今作は私たちの"祈り"でもあります。


そして、短編を3つ挟んで、
巻末に今作の続編として「なのはな―幻想『銀河鉄道の夜』」があります。
夢のなかで、宮沢賢治の"銀河鉄道"にのり、
おばあちゃんとめぐり会うナホ。
短編3つの中休みの後にまた泣かされて・・・。
方言もいいですね。
生活感があって、ほっこりじんわりときます。
私にとってはとても大事な一冊になりそうです。


中の3つの短編は、夢のエネルギーとして期待された原子力を人に例えた寓話的作品。
余りにもテーマがストレートで、あまり情緒はありませんが^^;

「なのはな」萩尾望都 小学館
満足度★★★★★

「ガラスの仮面 48」 美内すずえ

2012年04月06日 | コミックス
笑えるうちが華だったよ、紫織さん

ガラスの仮面 48 (花とゆめCOMICS)
美内すずえ
白泉社


                  * * * * * * * * * *

前巻では思う存分盛り上がりましたが・・・、
これはそのしっぺ返しが恐い巻。


ついに、速水氏が紫織さんに別れを宣言したのだけれど・・・
ちょっと遅すぎでしたね。
黙って引き下がるわけないじゃん、この女!
 しかし、あまりにもベタな展開だよねえ・・・
た、確かに・・・。


大体、紫織さんは子供の頃から病弱で友達が少なかったなんて書いてあるけど、
 それは病弱のせいじゃなくて、明らかに性格の問題でしょって気がする。
 ほんと、はじめからいけ好かない女でした・・・。
でもねえ、やっぱりそれは、元はといえば速水氏に責任がある。
 気持ちが他にありながら、政略結婚をしようとしたりするから・・・。



それにしても、「紅天女」の話自体は、さっぱり盛り上がらないというか、
 ちっとも見てみたいという気にはならないですね・・・。
長く引っ張りすぎですよね。
 亜弓さんの努力もわかるけど・・・、彼女の最大の欠点は「美しすぎる」ことなんだな。
まずその華やかな顔に目がひかれてしまうし、演技はそこそこでも、たいていは満足されてしまう。
 逆に美人過ぎて冷たい感じも受けるし。
実は同じ大金持ちでも、紫織さんとは段違いの高潔な人なんですけどねえ。
 美人過ぎて損なんてこともあるんですねえ・・・。
そこへ行くと、地味でごく平凡な目鼻立ちのマヤは、化粧映えするし、役に応じて変幻自在。
ま、そんなもんなんでしょ。そこが作者が亜弓さんにつけたハンディなわけで。
いやそれにしても、今度のハンディは大きすぎる・・・。
 結局、どっちが勝つわけなんですか~?
それがわかれば苦労しない・・・。
 結論が出るのはいつのことやら・・・。


この際、紅天女は亜弓さんにあげてもいい。
 だから、どうかマヤには速水さんを・・・。
両方なら虫がよすぎる気がするしね。
あ、それから間違っても紫織さんには、突然自分を悔いて善人になったりしないで欲しい。
 こうなったら、とことん「嫌な女」に徹してもらわないと納得できない。
 頑張って、腹いせに速水氏の会社を潰すくらいのことすればいいんだよ。
いっそそうなったほうが速水氏は自由の身・・・か。
 とにかく次号を待ちましょう・・・。

「ガラスの仮面 48」 美内すずえ 花とゆめコミックス

満足度★★★☆☆

「信長協奏曲 6」 石井あゆみ 

2012年03月08日 | コミックス
天下に近づけば近づくほど敵は減っていくもんだと思ってたけど、そうじゃないみたい・・・

信長協奏曲 6 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


                 * * * * * * * * * *

待ち遠しかった第6巻が出ました。
いやはや、でも、さすが動乱の時代、
さすがのサブロー信長もそう脳天気ではいられなくなってきましたね。
朝倉・浅井勢から京へ逃れた信長は、岐阜へ帰るのもままならぬ状況にありながら、なんとか帰郷を果たします。
ところがその途上、信長を銃弾が襲う。
辛くもマントに穴が開いただけで済んだのですが、いったい信長を狙うのは何者・・・?
うーん、それはもう、信長の敵はたくさんいるわけだから、なんとも言えないんだけどね。
不思議な運に守られている男でもあるわけだな、信長は。
そんな所でサブロー信長は思わずつぶやきますね。
「俺さー、天下に近付けば近付くほど敵は減っていくもんだと思ってたんだけど、
なんかそうじゃないみたいだね。
むしろその逆のような気がする…。
これじゃあ…いつまでたっても終わんないんじゃないかなー」

この言葉に、むしろ周りの部下たちはびっくり。
今までいかにも自信たっぷりだったからね。
弱音を吐く殿は殿らしくない、と皆に詰め寄られたサブローは
「あれ?いや…、弱音を吐いたつもりは…
ちょっと感想を言ってみただけなんだけど…」

すでに引き返すことができない状況を再認識し、
新たに天下取りへの決意を固めるという大事な場面となるのでした。
いやいや、サブロー信長くんも、成長したことよの~。
とはいえ、敵方浅井家に嫁いだ妹、おいっちゃんのことも気がかりです。
彼女は彼女で、兄信長と夫との仲を取り持とうと、一生懸命。
元気なおいっちゃんは好きだなあ・・・。お茶々もね!



平成人である信長サブローは、時に周りの人をはっとさせる言葉を出します。
少年蘭丸くんは、気持ちが優しくて、兄のように「立派な武将になりたい!」とはどうしても思えない。
サブローは
「いいんじゃない?べつに。
さっき自分で言ってたじゃん、人には向き不向きがあるって。
自分に向いてることすればいんじゃないの?」

と。
身分というものが固定化してきているこの時代では、なかなかない発想なのだろうな。
いや、この言葉は、今でも心にひびく場合がありますよね。
親の期待に応えて無理をする・・・なんてことは、今でも普通にあるよね・・・。



さて、信長の妻帰蝶の侍女、おゆきは実は上杉謙信の間者であったわけですが、
何やら殿様らしくない信長の分け隔てない物言いに、ちょっと心が揺れています。
ほう、フォーリン・ラブ!!
ところがこのおゆきさんが、明智光秀の素顔を見てしまうわけです!!
この展開もなかなか先が楽しみだね。
皆で津島のお祭りに行った夜の光景は、とても素晴らしかったなあ・・・。
こういう緩急の付け方で、ぐっと物語に深みが出るんだなあ。

全く目が離せない天下取り!
次号を待つ!

「信長協奏曲 6」 石井あゆみ ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★☆