人骨

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悪魔の呪文

2007年05月11日 | 70年代ロック雑談

このショボいジャケットとは裏腹に…


長らくHR路線を突っ走っていたぼくであるが、先日某友人にそそのかされたおかげで、今さらであるが「中級プログレ」の道へ迷い込みつつある。最近ディオ+サバスがまた話題になっているが、あえてここでプログレだ。

なにもプログレに限った話ではないが、自分は「このバンド!」と決め込んだら比較的聴き込む方であった。ところがいわゆる名盤扱いをされる作品の中には「一発屋」的な作品が少なくなく、中には先日も話した「メロウ・キャンドル」のようにアルバムを1枚しか残していないような連中もいたりする。必然的に特定のミュージシャンの作品だけを収集するという聴き方は不可能となるのだ。こういう状況に馴染むにつれ、最近では何者であっても大きめのカテゴライズで捉えて浅く広く聴くことを、自然にこなせるようになっていった。
プログレといえば自分の興味はいわゆる「5大バンド」中心であった。ところがこの5大バンドでさえそれぞれが個性的でお互いにあまり「似て」いない。いわんやプログレというジャンル全般ではさらに色々あるだろうから、中々自分の好きな音を探すのは苦労がありそうだ。また5大バンドと言っても全部は聴いていない。苦手なところは聞いていないのだ。これをヒントに自分のプログレ嗜好を分析してみることにする。
実は「こういうのが好き!」というのはむしろ少なく、意外にも大抵のものは受け入れられる。反対に、それほど多くは無いが「こういうのは苦手」というポイントがあるので、これに該当しなければとりあえず聴くことが出来るらしい。この消去法が最新の「マイフェイバリット」の結論である。
ということで、以下に消去法によるプログレ版ぼくの嗜好を列挙する。

【こんなプログレは苦手】
1.アバンギャルドすぎ
人によってそう感じる程度が違うと思うが、「コレって音楽って言えるの?」的なのはダメだ。たとえば「宮殿」のムーンチャイルドのインプロ部分とか、「狂気」や「太陽と戦慄」のSEが鳴り続ける部分とか…。以前「タンジェリン・ドリーム」というドイツのバンドの「zeit」というアルバムを聴いた時は、真っ白になった(ひたすら「ゴー」という地下鉄みたいな雑音が鳴っているだけ、に聞こえる…)。
2.メロディ、コードおよびコード進行がチープすぎ
怒られるかもしれないが「トレスパス」全曲および「ミュージカル・ボックス」はこの理由で苦手。あとムーディーズの「童夢」なんかも長閑で平和すぎて×。ELPのレイクのソロ曲はプログレと思ってないので平気…。
3.ヴォーカルの声が好みにあわない
シンガー好きの自分には意外にこれがポイントだったりする。ただし聴いてるうちに解決するケースも多い。
ぼく自身声域が低いせいか、カン高いハイトーンには人一倍リスペクトを注ぎがち、反比例して低音は評価が低い。イアン・アンダーソンは声域が低すぎて今の苦手最右翼(アクアラングは最高だけど…)。

意外に少ないけど、上記のような感じかな。総じてプログレというジャンルは「何でもアリ」的な音楽なんだけど、ブルースとかジャズといった別ジャンルではなく「プログレに」カテゴライズされている以上は、これらに該当しなければ大体聴けるみたいだ。

なんだけど、結局のところ入手して聴いてみるまでワカラナイんだよね…。
そういうわけで、未知だったミュージシャンの開拓をするべく一念発起。まだまだ漁っている最中であるが、最近新たに聴いてみたのはこんな感じだ。PFMを除いていずれも「名前だけは知ってるけど…いつかは…」と考えていた作品ばかりだが、列挙する。

「ジェントル・ジャイアント」
ファーストからサードまで。特にファーストは名盤扱いされるだけあって、HRばりのリフも多くカッコイイ。クラシカルで転調変拍子とお約束もタップリ。暗い重苦しさがいかにもプログレしていて良い感じだ。アートワークを含めて、品質は5大バンドに全く引けを取らない。脱帽した。個人的には結構出てくるミネア氏のヴォーカルがちょっと…。作曲とキーボードに専念してれば良いのに…。
いずれにせよ4作目以降も聞いてみる気マンマンである。

「PFM」
ELPにハマっていた頃から聴いてはいたが、録音テープ(貧乏学生にMDは高嶺の花だったのよ…)を紛失。改めてマンティコア初期の2枚を買いなおした。文句無く聴きこめそうだ。
PFMといえば初めて聴いたのは高校時代。想い出がある。当時ロック入門ファンだった「伴くん」という友人がった。彼が「クイーン」「U2」「REM」「エクストリーム」等と同格扱いで貸してくれたのが「幻の映像」だった。つまり彼はPFMでプログレの門を叩いたことになる。先日結婚式に招待してくれた伴くんだが、その後も元気だろうか。

「アトール」
組曲「夢魔」。フランスのイエスと称し鳴り物入りで日本に紹介したというライナーノーツを見る。確かに「この声は…あのジョン・アンダーソン!」なんて文面だ。まあそんなのはマユツバ程度でとにかく聴いてみたよ。結果。フランスのジョン・アンダーソン、出番ほとんど無いじゃん…。それに歌声はシャウト系だ。どこがイエスなんだろう。ということでこのアルバムはインスト中心でファンキーなフュージョンサウンドが目立つ。結論からしてこれもかなりマルである。さらに聴きこんでいきたい。入手したのは昔上記のPFMとかと一緒にキングから出たユーロロックシリーズなんだけど、むちゃくちゃ音質が悪い。「プチップチッ」という雑音が入り…まさかと思うがこのCD、マスターが「LP」なのか?それから謎なのが最後。フィナーレ最後の1音のリバーブが消える前に、もう一度同じ音のリバーブがフッと湧いて消える。これってミックスダウンの失敗?!謎…。

「カンサス」
アメリカン・プログレの雄である。代表作とされる「永遠の序曲」「暗黒への曳航」をリマスターで買った。超、歌メインで大音量。ピアニッシモとかそういう概念は無さそうだ。やたら音質も良くってこれぞアメリカってところだ。「照りつける太陽、ペプシ・コーラ、そしてプログレ」みたいな印象、まあこんなのもアリだろう。普通にキャッチーなプログレだなんて初体験だったから新鮮だった(「変にキャッチー」ではないのがポイント)。洋楽初心者にもお勧めだ。ツウは敢えて聴かないのかも知れないが、とんでもない。ぼくは大変気に入っている。いずれ「ドリーム・シアター」にも触手を伸ばさなければならないと感じているが、その布石としてもこのカンサスの奮闘は心強い。

「ソフト・マシーン」
いわゆるカンタベリー系と言われるジャズロック集団の代表選手。「3rd」「4th」を聴いてみた。かなりフリージャズっぽい。バンド名をバロウズの小説から拝借?それってスティーリー・ダンと一緒じゃん!と、ひとりトリビア(え常識?)。ジャズは全く知らないぼくがジャズっぽいというのはかなりウソくさいが、どのへんがジャズかというと、メロディ楽器としてのサックスがほぼ全編にフィーチャーされ、曲によってウッドベースも登場。3rdは「LP2枚組全4曲」、イエスの海洋地形学よりもこちらが先だったのか。1曲だけ歌入りがあるが、この曲だけ取り出して聴くと、ああやっぱりジャズじゃあないな。これも良いじゃん。しかし20分間鼻声交じりで歌いっぱなし。
それより感動的なのが、その後バンドを脱退して「そっくりモグラ」という可愛いタイトルのアルバムも出したドラマーで鼻唄シンガーのロバート・ワイアット氏。間もなく不慮の事故に遭って重傷を負い、ドラマー生命を絶たれるのだ…。「下半身不随」というハンデを抱えながらも見事カムバック、現在に至るまで仙人系ミュージシャンとして君臨している(らしい)。
彼の名誉に関わるためこの場で直接は言及を避けるが、「不慮の事故」とはこういうウワサだ。
全くもって他人事ではない…。

「フォーカス」
ネザーランドから変態登場である。セカンドの「ムーヴィング・ウェイヴス」を購入。ショボすぎるジャケットからは想像も付かなかったが、こいつにはぶったまげた。このアルバムが1971年発売というから既に36年前の音楽ではあるが、36年前にこの音楽が世界を震撼させたことは間違いないと思う。もしご存知ないならこれも何かの縁だと思って、アマゾンに勝手にリンクしたのでサンプル音源を黙って聴いてもらいたい。
試しに妻に聴かせた。
妻「わはは」
チビにも聴かせた。
チビ「ポォッポッポォーッテッタネ」
しかしこの冒頭の「悪魔の呪文」に惑わされてはいけない。このナンバーが仮に冗談であったとしてもあるいは大マジであったとしても、いずれにせよ単なる客寄せのギミックであって、2曲目から先が名盤の名に相応しい叙情的なサウンドの連続。B面の組曲ではかなり激しい面も見せるが、こいつは世界レベルの力作に間違いない。またギタリストのヤン・アッカーマン氏は技巧派として名高くハードロックばりのスタープレーヤー級といえる。作曲に演奏にと器用なマルチタレントのタイス・ヴァン・レアー氏もやり手だが、プレイそのものはこのギターサウンドの前にあっては脇役に甘んじてしまう。しかし両者のバランスが凄く良い。
今回かなりまとめて購入したのだが(無論ほとんど中古だ)、このフォーカスが出色だったかな。

今年の夏休みも妻子を置いて一人旅を敢行する予定であるが、想い出にBGMはつきもの。プログレ三昧の思い出を作ってこようと思う。