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人骨

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バック・トゥ・ジ・オーディオ(6)

2021年04月12日 | 70年代ロック雑談
6.私はオーディオマニアなのか?
店舗までの移動手段は自転車(ブロンプトン)であった。行きは全部漕いで帰りは輪行するつもりだったが、思わず帰りも全て漕ぎ切った。先に購入した針が実売価格では8,000円、今買った針が同じく23000円、合わせて3万円超。私は何をやっているのだろう?レコード再生時の歪みを減らすためだけに、それだけ投資する価値があるのか。そんなことを考えていたら「このまま電車に乗らずに全部漕げば、数百円浮く」という貧乏くさい考えに乗っ取られてしまったのだ。
端から見られた私の姿は、春風を浴びて気持ち良さげにサイクリングしているのんきな中年男性だったはずだが、実際の私はさらに深く自問自答を続けていた。まさか、私の父親がカセット野郎だった理由は、まさにこれだったのではないか?だとすれば父はなんと偉大なのだろう。すなわち、LP全盛時代にも関わらず技術の限界に早々に見切りを付け、それには1円たりとも投資せずカセット野郎に身をやつし、雌伏しながらソニーとフィリップス社によるデジタルメディアの開発をしたたかに見守り、いよいよ具現化したCD技術が市場を席捲してLPを死に至らしめるのを確実に見届け、値段も落ち着いたところで満を持しておいしい所取りってわけだ。父親の小さなCD収納ケースを思い出した。明らかにカセットテープ時代のそれよりも、数量面において充実したライブラリに仕上がっていた。カセットからちゃっかりCDに置き換わっている盤もあった。ビートルズものは「オールディーズ」のカセットメディア1本のみだったが(私が散々聴いたやつだ。何故かアナログと曲順がまったく違ってB面最後が「イエロー・サブマリン」だった)、今では赤盤&青盤である(曲目的には「バッド・ボーイ」だけが被らないな)。その先見の明たるや、改めて畏敬の念をもって父親へ思いを致しました。
帰宅後、恐る恐るスタイラスを交換した。この小さくて精密なスタイラスは取り扱いに注意を要する。にも拘わらず、他のオーテクのスタイラスがみなスポスポとカートリッジに挿さるにも拘わらず、精度の問題かエライ硬くって中々カートリッジにハマらない。「お前処女だったのか」等と一人で冗談を言いつつも、万一手が滑ってスタイラスを壊したりしたら23,000円が血だらけもといおじゃんであるから、精神的なテンションはきつめである。格闘すること数分で私は汗だくになったが、「バチン!」という精神衛生上良くない音を伴いつつなんとか無事合体させた。早速あえて歪みの酷い盤をかけてみた。想像通り残念ながら歪んだままだが、多少はマシになったのは間違いない。それなら「スマイル・アウェイ」はどうかというとこちらは改善が著しく「内周歪みは気にせず聴けるレベル」に化けた。これで方向性は定まった、歪みの改善はスタイラス(のチップ先端の形状)にかかっている模様だ。
それ以外の確認事項はどうか、私は何か怠ってはいまいか。
プレーヤーの設置に際しては三脚用の水準器を用いてちゃんと水平を出した。アームのゼロバランス(水平)もスケールを当てて確認した。針圧計は持っていないが、1.4〜2.4くらいまでの範囲で色んな針圧を試したが変化は劇的までではないので、マニュアル通り水平で0gリセットしダイヤル目盛りで本スタイラス指定の2.0g程度とする作法で良いだろう。もちろんアンチスケーターも針圧条件と揃えた。オーバーハングも5.0cmで指定値通りだしゲージでチェックしても問題ない。トーンアーム調整機能は無いから、もう他に調整出来る箇所はない。
この条件でスタイラスのグレードを上げたら歪みが改善したのだから、これ以上の改善のためには、シバタ針⇒ラインコンタクト針にグレードアップすれば確実、ということだ。

これまでで最も歪みを少なく再生できた

そこでオーテクのサイトにちらり目をやった。ラインコンタクト針60SLCを採用した700シリーズのVMカートリッジ最高峰「VM760SLC」のお値段は、買おうと思ったことすらなかったから未チェックだったが…定価で税込88,000円。軽く眩暈のする数字だ(MC型カートリッジであればさらに上がいるのだが…)そこまでしなければ、あるいはしてもなお、レコードの再生サウンドは平然と歪んでみせるのだろう。とは言え手の届かない金額では無い。ブロンプトン本体より全然安価ではないか。アナログは音の入り口がスタイラスでありカートリッジ、ここがしっかりしていなければ、その先がいくらしっかりしていても、まともな音は得られない。当たり前のことを言っているつもりだが、この発想が既にマニアックなのか。アナログを、普通に、普通な音で聴きたい、たったそれだけのために必要な金額が、普通に88,000円である。冒頭で述べた意見表明をここで復唱する。
「アナログプレーヤーやLPレコードを一言で言うならば『人生の思い出』という程度であり、とことん突き詰める気は毛頭無い。単に鳴らして聴きたくなっただけだ。」
だから自分はレコードプレーヤーの出力先はわずか2,000円のフォノアンプだし、使用ケーブルは500円程度だし、さらにその出力先は2万円未満のコンポ、再生スピーカーのケーブルは付属品だし銅線をクシャクシャに畳んだやつ、それで構わないと言っているのだ。この時点までならオーディオマニアではない。なのにアナログの再生ピックアップ部分だけに既にシステム全体の半額を注ぎ込んでいるのは、とてつもなくアンバランスだ。仮にここをさらにグレードアップすれば、最大で「88,000円+20,000円(未満)」にまでアンバランスの拡大が可能という算段だ。
私は自分をオーディオマニアとは思いたくない。オーディオマニアというのは、アンプやらスピーカーに自動車が買えるくらいの金額を注ぎ込み、ケーブル周りなどオプション品にさえも平然と万単位注ぎ込む人種のことだろう?自分のコストパフォーマンス感覚ではそれをやる気は皆無だ。とは言え電蓄みたいな5000円のプレーヤーを使いたいかと問われれば答えはきっぱりNOだ。音揺れはリスニング時に非常に萎えるので駆動方式はDDに限るし(最近はベルトドライブがえらい進化しているらしいが)カートリッジ交換こそアナログの醍醐味だろう、何しろ中学生の頃から憧れていたんだから。(続)
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