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カミングアウトという化学反応

2007年02月08日 06時39分12秒 | カミングアウト論

 より多くの人が社会の中でカミングアウトをすることが、「同性愛者の可視化」を推進し、同性愛者の社会的立場を改善するのだとすると、カミングアウトは推進されなければなりません。今までカミングアウトをしていない人が、カミングアウトをするために、どういったことが必要なのか。

 これを化学反応のアナロジーで考えてみたいと思います。
 化学物質が、化学反応を起こして、別の物質になるには、エネルギーが必要です。そのために必要なエネルギーを活性化エネルギーといいます。

 化学的な厳密さはおいておいてイメージの説明をします。たとえば、ここに太いひもがあるとしましょう。その両側をひっぱって真ん中あたりを切りたい。そうすると、大変な力で両側からひっぱらないといけません。その力を出すためのエネルギーが活性化エネルギーだと思ってください。

 このひもを両側からひっぱって切ろうとすると、大変な力が必要ですよね。これをもう少し楽に切ろうと思えばどうするか? 

 ・・・・・・

 ・・・・・・

 そうです! ハサミを使えばいい。なんとかとハサミは使いよう、といいます。

 このハサミのような役割をするのが、触媒です。光触媒の建材なんかが流行っていますので、触媒という言葉を聞いたことがある方も多いと思います。触媒は、反応の前後で変化せず、反応が起こりやすくするようなモノのことです。化学の世界ではそれが分子の状態で存在しているわけです。

 下の図を見てください。

 こちらは、化学反応における活性化エネルギーを示したものです。

 触媒がなければ、活性化エネルギー(オレンジの両向き矢印)は大きいが、触媒があると小さくなっています。

 同じ事を、カミングアウトについても考えてみる。

 下に正規分布のグラフを出しておきます。横軸はカミングアウトの容易さをとってみましょう。以下の議論で、カミングアウトをできるのがこのグラフの中のどの程度の人なのかを、感覚的にお話をしますが、もちろんなんの実証データがあるわけでもありません。数字の感覚が自分がどういう環境にいるかによって異なるということもありえますが、おおまかなイメージと考えてください。

 数字が大きくなるほど、つまり右側にいくほど「業々ボーイズ度」が高く、左側に行くほど「マリオ君度」が高いわけです。

 

 80年代以前には、日本ではゲイリブはほとんど発生していません。ゲイに対しては厳しい差別があり、ゲイのことを書いてある本にも実態を反映しないまますき放題かいてありました。アメリカのゲイリブにでも触れない限り、国内で自己肯定感を高められた人は、おそらく皆無に近いだろうと思います。

 そういう時代にカミングアウトをできた人は希少です。たとえばオールナイトニッポンというラジオ番組で毎週カミングアウトの必要性を優しく説いた大塚隆史さん、芸能界では美輪明宏さんやオスギとピーコさんなどが、カミングアウトをして活躍をしてはいたものの、一般の人がカミングアウトをすることは極めて稀でした。ゲイが「隠花植物」などと呼ばれた時代です。

 この時代に、カミングアウトできた人は、下のグラフで90以上の方々です。つまりほとんどいないようなものです。

  90年代に入ると、「90年代リブ」といわれる運動(伏見憲明氏の論壇登場、アカーの府中青年の家裁判を嚆矢とする一連の運動)が起こってきます。それ以前はまったく触媒がない状態でしたが、たとえば伏見氏が著作で上野千鶴子さんからの認知を取りつけたり、アカーが裁判で勝訴して「同性愛の問題=人権問題」という了解を形成しました。こうした動きが触媒として働き、カミングアウトをする人が徐々に増えていきました。それでも、状況は現在よりはるかに厳しかった。なにしろほとんどカミングアウトの前例がないまま、カミングアウトをしていく必要があったので、そのあとどういう反応が返ってくるのか分からないわけです。自分がカミングアウトをして、親族郎党からも、親からも、友人すら失うかもしれないという覚悟を決めて、カミングアウトをしていきました。その中でカミングアウトをしていった方々は、大変な活性化エネルギーが必要でした。この時点で、カミングアウトの容易度が85くらい以上の人びとがカミングアウトをしていった。

 その後、さらにカミングアウトのための活性化エネルギーは下がってきます。ゲイ・ブームと呼ばれて、テレビでは二丁目から人が消えたとまで言われた「同窓会」、映画でも大木裕之やデレク・ジャーマン、ブルース・ラ・ブルースのようなアイデンティティのあり方を芸術的に昇華しようとするアートフィルム系の人びとから、橋口亮輔のような商業映画までゲイがテーマになりました。雑誌もゲイを取り上げていった。ゲイというものが、人びとの意識の中でファミリアなものになってくる。これは大きな触媒作用となりました。

 これで80くらいまでカミングアウト。

 さらに、90年代後半になってくると、インターネットと携帯電話の普及で、若年層でもゲイの情報に接することができるようになってきます。これで、自己否定的になったり、孤独に思い悩む期間が減少し、自己肯定感が上昇してきます。これで、学校などでカミングアウトをする層が70以上くらいまで増えてきました。若年層に多く、社会的な関心よりも、「自分の身の回りを快適にしたい」というミーイズムにのっとってカミングアウトしていきました。

 そして、ひょっとすると、昨今の右傾化の影響を受けて、75くらいまで後退したかもしれないということで、現在に至ります。

 しかし、カミングアウトできる層が大幅に増えたのは間違いありません。しかし、おそらくまだ半数以上のカミングアウトできていない人たちがいるんじゃないかと思います。

 50~70くらいの層の方々は、大方、日本人の平均的な像を無批判に生きている方々だと思います。そうなると、ホワイトカラー・イグゼンプションにも、ゲートキーパー法にも、共謀罪にも、さして興味がなく、「お上が言うことは聞いとくしかない。悪いようにはしないだろう」と思い込んで(あるいは、思い込もうとして)いる人たちでしょう。そのたもろもろの社会的・政治的イシューに関心がないのと同様、同性愛の問題にも関心がありません。プライバシーの保護を徹底して、世論調査でもして「同性婚に関心がありますか?」とか聞いてみたら、こっそり「あります」と答えるくらいのことはするかもしれない層です。

 このあたりの方々は、もう少し改良型の触媒が発明されて、世間的な偏見が減少してくれば、カミングアウトをするかもしれません。

 その下には、強く内なるホモフォビアを抱えた方々や、活性化エネルギーが低下しただけではカミングアウトなんかしないというかたくなな方々が控えておられます。

 強いホモフォビアを抱えた方々(たとえばこの方とか古典的なそういうタイプですね)は、ゲイの運動を揶揄したりしてきましたので、運動側からするとどこからか聞こえてくる無用な雑音として処理してきました。今後もそうなろうかと思います。

 活性化エネルギーだけが問題ではないタイプの方々は、どうすれが参加するのかというと、反応後のエネルギー状態が低くなればよいのです。同性婚やパートナーシップ制度が制定され、それを多くの人びとが利用して、社会の中で安全に活用されていて、なおかつ税制の優遇など具体的な利得がある場合に顔ののぞかせることでしょう。いわゆる「フリーライダー」といわれて、運動サイドからするとどうも、いい印象がないわけですが、まあ、しかたない。そういう人は必ず存在します。

 というわけで、以前、ご希望もありました、二極モデルから、二次元モデルにグレードアップしてみました。どの程度の妥当性があるのかは、データもなく実証できませんので、多分に感覚的です。が、数値の差はあれ、ゲイの中での政治的スタンスの多様性をある程度は、反映しているのではないかと思います。

 不備等々ありましたら、お知らせください。

 より現実に近いモデルへとたたき上げていければと思っております。

 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
今朝のウンコの状態をカミングアウトしちゃう! (れん)
2009-09-02 01:42:59
アタシの場合は、友達だからこそ、
便所で友達と糞をひりだす関係が親友と呼べる程度に構築されると
やっぱりスカトロプレーが大好きだとカムアウトが必要になってくるのよねぇ。
ウンコの偽装とかタンポン変えに個室に入ったとか
七面倒なことしたくないしさw
ちょっと、糞することを難しく重く考えすぎだと思うわ。
所詮は糞と一緒に出てきた黄色いコーンとか赤いニンジンとか
自分の糞の色と臭いを豊かに構成する一要素に過ぎない訳だから
もう少し肩の力を抜いて思いっきり踏ん張って糞してもいいと思うんだけど。

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ゲイリブカルト教団の、カミングアウトの呪文ね。 ()
2010-04-28 18:27:35
あのさ、

単に、社会に適応すらしようともしないで、

抗議活動をゲイリブが飯の種にしているから、

社会からも同性愛者からもゲイリブだけが嫌われているだけでしょ?

大袈裟に被害者面すればゲイリブは救われると勘違いして、

他人にまでゲイリブだけのカミングアウト原理主義を押し付けるけど、

どんなにゲイリブが、カミングアウトにすかっても無理よ。

大多数の同性愛者は社会に適応して協調性もあるの。
同性愛者の中でも特殊なゲイリブだけの、
被害妄想の観念を、
大多数の同性愛者に適用しないで欲しいわ。

そう言う歪んだゲイリブだけのカミングアウト思想を、
大多数の同性愛者にまで押し付けるから、
ゲイリブは社会からも疎まれ同性愛者からも嫌われ批判され敬遠されてるのよ。
いい加減にゲイリブは被害者面して偽装するの止めたらどうかしら?

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