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ホモ痴漢事件をもう少し考えてみる。

2006年12月20日 13時17分15秒 | ゲイ・コミュニティ
 事件の背景を考えてみます。
 そもそもホモの痴漢行為が犯罪と認定されたのは、ついこの間のことにすぎません。東京都では、迷惑防止条例ができてからホモの痴漢行為も取り締まることができるようになりました。詳しい経緯はこちらのホームページに出ています。2001年からですので、まだ5年ほどしか経っていません。
 探してみたら、この条例が制定されてから一年間のデータについて、次のような記事がありました。


*******引用*******************
 昨年9月に迷惑防止条例を改正し痴漢などの罰則を大幅に引き上げた東京都で
 1年間に摘発された痴漢と盗み撮りが計1992人に上り、前年同期と比べ25人 増加したことが27日、警視庁のまとめで分かった。

 警視庁生活安全特捜隊は、「痴漢は犯罪」とのPR効果で被害者が積極的に届け出るようになったほか、改正前は対象ではなかった「男性に対する痴漢」が20人いたことなどが増加の原因とみている。
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 というわけで、ホモ痴漢は1%程度です。多くの調査で3%程度の男性が同性愛者であるこということになっていますので、その数字と比べると少ない。いくつかのファクターが関与すると考えられます。

 ①:同性愛者は実際に痴漢が少ない可能性があります。ハッテン場というのがあったり、ネットで出会うのが簡単で、性欲の発散が簡単にできる。そのため、性欲を溜め込んで暴発する可能性は少なくなります。「痴漢」という状況で、とくに欲情してしまう人というのもいるかもしれませんので、その人たちは検挙される可能性が高くなります。
 ②:条例が制定された年ですので、まだインフォメーションが行き渡ってなく、男性の被害者が泣き寝入りをしている可能性もあります。ちょっとその後のデータが見つからなかったので、よく分かりません。
 ③:男性があいてですから、手で払うなどしておしまいになり、事件化しないという可能性も考えられますね。

 というわけで、ゲイがノンケに比べて痴漢犯罪がとくに多いというわけではないとはいえると思います。

 さて、それでは、この2000人ほどの犯罪者たちが実名報道されたかというとそういうことはないでしょう。
 今回の「NHK」の職員が、「ホモ痴漢」をはたらいたということで、ニュースになってしまっているわけです。もちろん、公職に近いマスコミにいる人間ですから、準公人あるいはみなし公人と思っていいでしょう。そうなるとそれなりにサンクションが大きくなることだろうというのは分かります。しかし、このような記事もあります。

*****引用*************
外務省:職員30人痴漢などで処分 答弁書で明らかに
 現職の外務省職員30人が痴漢、盗撮、万引き、飲酒運転で処分を受けたことがあることが19日、政府が閣議決定した答弁書で明らかになった。鈴木宗男衆院議員(新党大地)の質問主意書に答えた。答弁書によると、内訳は痴漢、盗撮行為が4人、万引きが1人、飲酒運転が25人。飲酒運転で死亡事故を起こした職員も2人いる。外務省は個別の処分内容は明らかにせず「事案に応じて適正に処分している」としている。答弁書について、塩崎恭久官房長官は同日の記者会見で「公務員としても人間としても恥ずべき行為ではないか」と述べた。【田中成之】

毎日新聞 2006年12月19日 20時17分
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 外務省の職員という公人が痴漢で捕まっているのに、この方々は実名報道はされていないようです。
 ということは、これはやはり不公平な報道といわざるを得ない。もちろん、犯罪行為を働いたわけだし、実名報道をされてもしかたのないことではあるが、それならば公人が痴漢を働いた事件も実名報道されなければならないはずです。
 実名報道をされてしまえは、ネットの時代ですから出身大学からなにからわかってしまう。司法権力によって与えられる懲罰よりもはるかに大きな社会的なサンクションを受けることになります。それが、同性愛だけ取り上げられるのであるとするならば、サンクションが公平ではないことになります。
 こういう事件があると、おさわり程度の迷惑行為も割に合わんなあということになって、抑止効果は持つかもしれません。その場合にも、ハッテン場があったりすれば、「イケメンみて、むらむらきちゃったから、ハッテン場でやることにするか」てことになって、安価な代償行為が確保できるので、そちらに流れればよいだけになります。残るは、それでも痴漢行為のスリルと興奮にはかなわないという人びとですが、こちらのほうはゲイだからというよりは痴漢愛好家同士のピア・カウンセリングなどの手法でそんなことをしちゃう自分を客観視したりするトレーニングをなさったほうがよかろうかと思います。

 こうした事件が摘発されるのは、同性愛者が存在しており、その人たちも性犯罪に手を染めることがあるということが認知されたからに他なりません。それはつまり、このごろ流行の可視化が進んできたということですね。
 しかし、可視化が進むと、もちろんゲイや同性愛者というカテゴリーにある負の側面も社会の中で認知されるようになってきます。これが「多様性フォビア」が蔓延する社会の中では、「だから多様性なんかを認めるのはよくない」という論調が多く出てきてしまうと困るわけです。
 ここでは、こうして社会にいままでなかったルールが作られて、男性でも痴漢で不愉快な思いをした場合には、加害者を警察に突き出せるようになったので、安全確保はやりやすくなった。そのためこうした報道が出て来るのだ、ということを主張できないといけないわけですね。

 こうして、大阪にしろ、東京にしろ迷惑防止条例には、同性愛者の迷惑行為が想定されているわけですが、人権条例のほうは一向に前進しない。都城なんてのは後退してしまった。こうして、存在が表面化して義務を負う機会が増えるならば、それにともなって権利強化も必要になります。同性愛者であり俗耳に媚びる(=ニュースバリューがある!)ために、必要以上の不利益を被ったりするのは、ちょっとかわいそうな気がします。
 コミュニティ的な観点でいうと、東京レズビアン&ゲイ・パレードなど同性愛者たちが発信するポジティブなインフォメーションも報道していただきたい。みのもんたも、こういうどうでもいいニュースだけ取り上げるのではなく、もう少しは大切な問題を取り上げていただきたい。

 ゲイ・コミュニティ的には盛り上がった新木場の傷害事件でも、メディアのあり方を問題にする人がいましたが、こちらは全裸徘徊をしているということで、同様な犯罪が少なかったのですが、今回のほうは痴漢事件で、参照項が多数取れますので、むしろメディアの偏向や不寛容を研究するにはいい材料ではないかと思います。

 今後も、同性愛者の可視性を上げていく運動を進めると、ノンケ社会との間に軋轢が生まれる可能性があります。ビジビリティがあがるということは、負のイメージ・負のインフォメーションも流れるということにほかなりません。しかし、そこで退却するわけにも行かない。「可視性を上げていくと誤解や無理解がますます蔓延する。ならば、可視性の上昇戦略は同性愛者の権利拡大に資するところはない」という言い方で、カミングアウト戦略を断念するのはよくないと思われます。
 カミングアウト戦略で多様性の容認を求めていく方向しか、基本的にはやりようがない。そのなかで、多様性が認められたほうが、懐の深い、だれにとっても住みやすい社会になるのだということを、どういう形で説得的に議論をするのかが大切でしょう。
 


 

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