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尾辻かな子はなぜ負けたのか?

2007年08月08日 11時33分47秒 | ゲイ・コミュニティ
 尾辻かな子氏が強い追い風が吹く民主党の中にあって選挙で負けてしまいました。38,000票程度という得票で、残念ながら完敗といわざるを得ない状況でした。この敗因をmixiの『セクシュアリティと政治』コミュニティで議論しました。その結果、出てきた論点をまとめてみます。主にLGBTであろうと思われる人が投票しなかった理由として挙げられていたものを、周囲のLGBTの声、ブログ、mixiの日記から拾い、整理しました。 ここでは否定的な意見を収集しました。肯定的な意見については、別途検討したいと思います。


第一部 イメージ戦略

 仮説1:尾辻氏の魅力が浸透しなかった。
まずデータを見てみましょう。

県名  得票数  人口1万人あたり得票率

北海道----960.651------1.709
青森------169.118------1.174
岩手------198.548------1.428
宮城------349.360------1.493
秋田------119.704------1.041
山形------183.885------1.507
福島------285.833------1.368
茨城------400.553------1.344
栃木------271.208------1.343
群馬------228.596------1.132
埼玉----1,303.195------1.849
千葉----1,192.377------1.971
東京----7,901.295------6.286
神奈川--2,067.920------2.353
新潟------223.682------0.921
山梨------135.035------1.534
長野------221.651------1.008
静岡------558.748------1.474
愛知----1,357.400------1.872
岐阜------487.742------2.312
三重------369.693------1.977
富山------106.538------0.960
石川------255.252------2.182
福井------191.830------2.339
滋賀------339.670------2.461
京都------764.711------2.886
奈良------617.916------4.352
大阪----7,341.113------8.323
和歌山----187.497------1.803
兵庫----2,808.580------5.024
岡山------251.505------1.283
広島------454.001------1.576
鳥取-------97.694------1.602
島根-------81.775------1.105
山口------161.353------1.083
香川------194.303------1.924
徳島------120.546------1.488
愛媛------231.082------1.572
高知------147.595------1.845
福岡----1,116.453------2.211
佐賀------171.441------1.971
長崎------201.929------1.364
熊本------257.065------1.397
大分------209.478------1.731
宮崎------160.638------1.397
鹿児島--2,477.002-----14.154
沖縄------295.524------2.173
(あおいさん提供)

 このデータから分かることは、尾辻さんが選挙活動に行ったところで得票が伸びている、ということです。しかしながら、選挙活動で行くところに選んだ地域は、地縁血縁があり確実に得票が伸びるであろうところを選んでいると考えられますので、選挙活動に行ったから多いのか、多いから行ったのかが入れ子構造になっていて、ニワトリと卵の問題が発生し、因果関係が特定できません。
 ビラまきなどの選挙活動をしたところでは、得票率が高くなっているところも、なっていないところもあるようで、これも単純に因果関係がつかめません。しかし、尾辻氏が長い期間滞在しているところでは、得票が伸びている傾向はあることが分かります。
 ヒサさんによりまとめられたデータにより、さらに細かく選挙管理委員会ごとの得票数をみると、たとえば東海地方では地方に行くほど得票率は少なくなります。郡部において投票した人は、ゲイバーやNLGRなどのイベントに通う人である可能性が高いようにも思われます。それゆえ、この38000人の人というのは、ゲイメディアで告知をしたさいに声が届く範囲と重なる可能性が高いと思われます。たとえばHIVの予防啓発にしても、ゲイメディアを通じて行うとこの程度の人にしか届いていない可能性が考えられます。今後、LGBTの政治参加を促すためには、立候補者が選挙前に東奔西走しても限界があるため、それぞれの地域のコミュニティの幅をどうやって広げるかがポイントになると思われます。
 定量的に何人くらいなのかは測定不可能ですが、定性的には尾辻氏の講演や演説を聞いてアンチだった人が、コロッとシンパに変わるという現象があちこちで目撃されているため、尾辻氏の選挙活動がもっと広範に行われれば、得票が伸びた可能性があると指摘されました。

 仮説2:尾辻氏の個性があだになった。
 中野区における尾辻氏の得票を石坂わたる氏が報告しています。中野区での尾辻かな子さんの獲得票数は483票でした。 石坂氏は、中野区における得票数を報告しています。
尾辻秀久 86票(自民党・元厚生大臣・当選)
橋本聖子 386票 (自民党・当選)
又一征治 100票 (社民党幹事長・当選)
西岡武夫 331票 (民主党・元文部大臣・当選)
したがってこれらの当選した候補よりも上回っていたわけです。しかしながら、石坂氏が中野区議会議員選で得票した票数が1091票であり、それを遥かに下回る結果となりました。
 この解釈として、いくつかの仮説が提出されています。
1:尾辻氏に接した人は一部のシンパと、その数倍のアンチに分かれる。
2:個人名で投票できることに気付かず党名で投票した人が相当数存在する。
3:石坂氏の時点で政治に興味を失ったLGBTが相当数存在した。
4:ゲイとレズビアンでの動員力の違い(次節で検討)。
 3番目の論点については、尾辻氏の選挙イベントの動員数を見てみるのも示唆的です。
 3月初旬に二丁目で尾辻氏は「キックオフイベント」をやりました。このとき、集まった人数は201人と発表されています。このときは会場のキャパシティーを遙かに超えてました。
 ところが、7月1日に行われた「Try&Win」は、曜日と場所が違う(日曜日で、場所は歌舞伎町)という点で単純に比較はできませんが、こちらの方は約150人となっています(Ronさんの報告による)。
 このように4ヶ月間で選挙ボランティアが増えた一方で、総動員数は減少しました。3月の時点では物珍しかったのが、7月の時点では新鮮味に欠けたという見解もありました。亥年選挙効果(統一地方選と参院選が続けざまに行われるので、統一地方選で選挙熱が冷めるため投票率が低くなる効果)があったということになります。選挙全体では、亥年選挙としては例外的に高い投票率でしたので、年金や政治と金といった問題ほどにはLGBTの関心をひきつけることに成功しなかったと思われます。
 また尾辻氏を知ることで動員が減ったという可能性も捨てきれないという指摘もありました。少なくとも、この4ヶ月間で彼女の存在に惹かれる人を大幅に新規開拓できなかったことは言えるだろうと思われます。
 この原因について、永易さんは「彼女は今回、二丁目の一部バーマスターを後援会にし、当世のゲイカルチャー(クラブカルチャー)的なものをベースに、そこに少し「泣いちゃう系」を加味したノリで選挙戦を組み立てた(LGコミュニティに対して)気がしますが、そうした色付けはかならずしも普遍性を持つものでない」と感想を述べています。
 尾辻氏の「売り方」について、反感を持っていた人の存在も報告されました。特に反発が多かった選挙活動については、Ⅰ:CDを出すのはタレント候補狙い、Ⅱ:レズビアンとポスターに刷るのは不快、Ⅲ:見せ物みたいなことすることでLGBTが色物として見られる、Ⅳ政党の色がつくなどの意見があったという観察も報告されました。
 このあたりは定量的な観察はできませんので、どのファクターが単独あるいは複合的に票を逃すことに寄与しているか分かりません。 むしろ投票しないことを正当化するための言い訳のようにも聞こえます。初めから何らかの原因で反感を持っている人たちでしょう。

 仮説3:レズビアンの印象
 一般の方々(とくにネット右翼のような方々)からすると、レズビアンというだけで「ポルノ」の対象でしかないという印象が持たれ、ブログなどでネガティブなキャンペーンが結果的に展開されました。
 これこそ尾辻氏が告発したかったことに違いないのですが、LGBT以外の一般票に結びつくのを妨げることになってしまったかもしれません。可視化が成功すれば、逆風も順風も吹くことが示されました。
 またゲイのなかにはミソジニー(女性嫌悪)を内在させている人も多く、レズビアンの候補には関心を抱かなかったり、中には敵意を持っている人さえいるという報告もありました。反差別を訴えるにあたって、LGBT内に差別的な空気が漂っているということです。この期に及んでもセクシュアル・マイノリティが一枚岩ではないことを示し、根深い問題をはらんでいます。

 仮説4:選挙直前に「尾辻信者」の行き過ぎた行動が見られた。
 尾辻さんを応援したいがために、mixiでの複数コミュへのマルチポストなど、ネット上でのモラルに欠ける行動が見られ白眼視されたことを語る人もいました。 応援したい気持ちによってルールを乗り越えてしまうこともあるとは思いますが、できるだけ気をつけたいものです。

 仮説5:メディア報道の偏向
 スポーツ紙などでは大きく取り上げられたが、一般紙や一般メディアではそれと比べると報道が低調だったという印象を持っている人もおり(実証データがありません)、メディアが「色もの候補」的な扱いをした可能性もあります。人権上の配慮から、尾辻氏について否定的な意見は見られなかったように思われますが、扱い方には偏りがあったようです。しかし、同性愛に対して肯定的なメディアも多く、尾辻さんの立候補は同性愛者の可視化には大きく貢献しました。

 仮説6:LGBTの漠然とした安心感
 LGBTの中にはボランティアをするなど懸命の選挙活動を展開した人もいましたがそれはもちろんごく一部でした。民主党への強い追い風や、いままでにないほど「レズビアン」や「LGBT」がメディアをにぎわす状況に、広報が行き届いているかの錯覚を覚えた人も多かったようです。たとえばゲイバーなどでは真面目な話題はタブーになっているような雰囲気があり、なかなか政治の話題を出しにくい環境があるようです。また周囲にカミングアウトをしているような人でも、職場や友達相手に尾辻氏について話題にしなかったなど、支援する側の意識に危機感が足りなかったようにも思われます。LGBTについて話題にできる関係でも、政治について話をすることには抵抗がある人もいたようです。

第二部 政策について
 
 仮説7:LGBTはすでに権利を手にしている。
 「日本では養子縁組制度が整っていて、海外とくに欧米よりも活用しやすい制度になっているため、本当に困ったときにはそれで家族としての権利を得ればよいのであって、過大なコストを支払ってまで同性婚や同性パートナーシップ制度を手に入れる必要がない」と考える人がいました。こういう方々は、現状の日本でLGBTとして何不自由なく暮らしているので、LGBT政策に関してとくに政治に期待するところがありません。

 仮説8:政治的ニヒリズム
 社会に同性パートナーシップ制度ができたとしても、会社や職場などでカミングアウトをしなければそこで得られる権利の恩恵にはあずかれません。カミングアウトの障壁がなくならなければ、社会制度がどうなろうと「わたしたちの生き難さ」は変わらず残存します。そういう社会状況の中、カミングアウトできないでいる人びとは政治に期待することができません。30代以上のLGBTに多そうだという印象がありました。

 仮説9:実利に結びつく政策提言にならなかった。
 こうした状況の中で、多くの人にとって尾辻氏が国政の場に進出することで「実利」になるとは考えなかったようです。投票をした人の中にも「養子縁組制度で権利は得られるかもしれないが「親子関係」になることが困る」、「LGBTの可視化につながる」といったむしろ抽象的、象徴的な意味で投票をした人も多く、「実利」の実感がないことにおいては、投票した人の中にも同意する人も多いようでした。

 仮説10:HIV対策への後ろめたさ
 「HIVの問題を国政の場で正々堂々と議論をすることになると、男性同性愛者の性行動についても白日の下にさらされることになり、異性愛男女とは大きくかけはなれば実態から、かえって差別感情を助長することになりかねない」という意見もありました。可視化が行われていないからこそ、現状程度の差別感情に収まっているという状況認識をしているわけです。
 この問題は、同性愛者の側が乗り越えないと、HIVの問題を社会に警告することができなくなり、徐々に感染が拡大する傾向を抑止できなくなりつつあります。
 一方で、HIVの予防啓発予算が増えたところで、自分たちの暮らし向きは変わらないという意識もあったかもしれません。

 仮説11:天下国家を語らなかった。
 尾辻氏の政策が「国政の場」で重要な案件であるとは思えなかったという人も大勢いました。世間は「年金」「政治と金」など国の根幹に関わる議論をしているときに、LGBT関連の政策提言は重要度が低いと考えられたようです。
 たとえば川田龍平氏は、「薬害エイズ感染者の権利を確保する」という論法ではなく、「薬害を再生産し続ける官僚機構を告発する」という形で、普遍性のある議論にまで練り上げていましたが、尾辻氏の政策提言にはそこまでの普遍性は感じられないという意見もありました。

 仮説12:「反差別法」への違和感
 「公権力は内心に立ち入らないはずなのに、反差別法はその禁を破る可能性がある」という意見。差別をどういうものと捉えるかによって調整可能でもありますが、その点についてLGBT内でもコンセンサスが得られていませんでした。

第三部 文化的背景

 こうした議論が出てくる文化的背景にも言及がありました。

1:カミングアウトに対する姿勢と政治行動
 仮説5・仮説6と関係しますが、日本人は直接国家の支配を受けているという感覚は希薄で、会社や地域などの「世間」に生きているという感覚が強いです。
 若年層では世間がカミングアウトを受容するようになれば、自分がLGBTとして生きていく困難はほぼ解消するし、カミングアウトは実際に受容される場合も多い。日本の差別は宗教的信念に起因するわけではないので、自分のカミングアウトにより「生きがたさ」のほとんどは解消するわけです。
 また30代以上の年代では、逆にカミングアウトの障壁が会社などで高いと感じる人が多いようです。彼らは就職氷河期に就職をして、大量解雇の現場を目にしているので、自分の立場を悪くする可能性のあることはすべて見せないようにして生きています。しかし、ゲイやレズビアンであることを隠していさえすれば、晩婚化・未婚化の進展により結婚しないことが珍しいことではなくなり、結婚圧力も低いので、1人身でゲイライフを送っていくことが困難ではなくなり、切実に生きがたさを感じることはありません。
 上記のどちらにしても、切実な生きがたさを感じないで生きていける社会条件ができてきているのではないかと考えられます。
 こうした問題よりは、メディアの報道にも助長されて、長時間労働でも給与が上がらなかったり、将来年金がもらえるのか不安だったりするというほうに関心が向いているため、自分の関心に言及してもらえなかった尾辻氏に注目することはなかったと考えられます。
 一方で、カミングアウトができないことを苦痛に思っている層に対しては、結婚式を挙げ、両親に祝福されるなど幸福感を演出する手法により、かえってセクシュアリティによって生きがたさを抱える自分とは正反対の「遠い存在」という印象を与えた可能性も指摘されました。カミングアウト肯定派のハッピーゲイライフを送れていて、結婚式にも共感を持てる層に対するアピールに終わった可能性があるということです。
 以上のようにカミングアウトに対する姿勢によって政治参加への姿勢が異なる可能性があることが指摘されました。
   第1層:周囲の人に対してカミングアウトをできる層
   第2層:カミングアウトできないが、できればしたいと思っている層
   第3層:カミングアウトをしなくても問題を感じない層
 以上の3層を想定してメッセージを発することが有効かもしれません。それぞれの層に対してどういう形で政治的アピールをするか、戦略を開発する必要があると思われます。

2:内なる同性愛嫌悪
 仮説8とも関係しますが、同性愛に関することがらについて政治の場面のような「真面目」な話題になりにくいという認識をしている人も多いようです。後ろめたさのようなものがあり、表に出すべきことではないと思うようです。
 同性愛者が自分のセクシュアリティが真面目に考えるべきことがらではないと思うのには、「内なる同性愛嫌悪」が関与しているといわれています。同性愛に対する嫌悪感があり、そのせいで実存に自信がないため、同性愛の話題を過度に嫌悪するようになっている状態です。そうなると同性愛者はひたすら良いイメージで語られなければ、強い不安が身を貫くのです。同性愛は悪いことではないということを十分に納得したうえで、「同性愛者にもいろんな人がいる」という当たり前の状況認識が必要になります。こうしたことを教育の中で行いたいということも、尾辻候補の願いでありました。しかし、内なるホモフォビアを打ち消し、次のステップに進むことは現状の日本では難しかったということが今回の選挙ではっきりしました。

2:欧米キリスト教社会との違い
 キリスト教社会では懺悔や告戒などにより、実存と社会的自我の一致が求められます。一方、日本で快適に世間を生きていくためには、「空気を読み」「場を乱さないようにする」スキルのほうが、重要なコミュニケーション・スキルだと考えられていて、実存は必要に応じて隠しておくほうが適切だと考えられています。そうした社会の中で、ゲイやレズビアンなどセクシュアル・マイノリティであることについてもカミングアウトの必然性を感じる人も少ないわけです。カミングアウトは必要に応じて、場を乱さず、自分が属する世間の中で自分の立場を危うくしない範囲で行えばよいこととなります。つまり、欧米のほうがカミングアウトへの駆動力が強くはたらき、日本の風土ではそれが弱いのではないかという仮説がなりたちます。 
 したがって日本では、たとえば仕事にあぶれることがない医療関係者や、公務員法によって解雇の心配がない公立学校教員のように身分保障、収入保障がある職業ではカミングアウト率が高くなるようで、職業別のサークルが存在するのがこの二つの分野です(このあたりは、伏見憲明氏の『欲望問題』が深く関わると思っていて、書評にそのことを書きました。こちらです。) 日本では一般的にカミングアウトの駆動力が小さいために、社会に対して要求する声も大きくならない傾向にあるのだろうと思われます。
 これは単なる日米の違いであって、どちらがよいとかどちらが悪いというものではありません。ただ、欧米で功を奏したアクティビズムが日本の文脈ではうまく行かないことも多々あるため、そうした背景から生まれる違いを組み込んだアクティビズムが必要となると考えられます。

 終わりに

 こうした社会条件があるなかで、LGBTにとって必要な政策や政治のあり方を今後考えていく必要があるように思います。LGBTの問題については、個々の人がカミングアウトをすることなどで解消すればそれでいいのか、政治的に解決する必要があるのかという問題で、今回LGBTは後者であるという判断を下しました。
 尾辻氏が提唱したさまざまな事例は、現状としてはむしろ稀なケースであったと思います。しかし、現在の40歳すぎを先頭とするLGBTであることを選択する生き方を始めた世代が中高年にさしかかるにつれて次第に頻度が上がってくる問題でもあります。自分たちの未来について想像力をめぐらしてもらうための戦略を構築し、コミュニティへの参加を促進することができなければ、今後、セクシュアル・マイノリティの法的平等が確保されることはないと思われます。

 この研究は、参議院選挙後にmixiやブログなどに表明された、尾辻氏への批判的な言説を網羅的に取り上げ整理し、分析し、可能性のある仮説を思いつく限り挙げました。したがって、ここであげた仮説のうちどのようなものが重要なものなのかを、定量的に知ることはできません。それゆえ、これらの提言は「仮説」にとどまります。定量的な研究が待たれます。
 今後、LGBTが政治参加を意思するのであれば、こうした「声」を丹念に拾い上げて、それぞれに有効な政策立案を行う必要があるように思われます。さらに、日本のLGBTにとって政治的に解決すべき共通課題があるのかどうかという根源的な問いも問われなければならない結果になったと思われます。
 わたしたちにとって真の「解放」とはなんなのでしょうか?

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6 コメント

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地元大阪に嫌われた尾辻の負けは必然 (m)
2007-08-08 15:41:43
これだけいろいろ書いてて、下の事実には気付かなかったのだろうか。

大阪府選挙管理委員会のサイト

http://www.pref.osaka.jp/senkan/date/h19san/San_Hirei_Syosai9.htm

尾辻さん関連のところをピックアップするとこんな感じです。

大阪府 7,341.113 
堺市  1,590.654 (03年府議当選時の選挙区)
堺区   318.698 (06年分区後の選挙区)

(堺市は06年4月に政令指定都市になり、選挙区が6分割された)

http://www.pref.osaka.jp/senkan/date/h19san/San_Hirei_Tohyo.htm
選挙人名簿登載者(有権者)数
大阪府  7,065,610
堺市   674,405
堺区 118,901

これで単純に計算すると、尾辻さんは、堺区の0.27%、堺市全体の0.24%、大阪府の0.10%しか取れていません。大阪府には、尾辻サイドが期待していた同性愛者が、おそらく全国平均以上の割合で住んでいるはずです。しかしこの数字しか取れなかった。尾辻サイドはこの数字を厳粛に受け止めるべきです。

ちなみに4年前の府議選で、尾辻さんが旧・堺市選挙区で獲得した票は15,254票だったそうです。ということは、堺市で比較すると、ざっと10分の一に激減しています。

4年前と現在では尾辻さんの知名度は比較にならないほどで、ましてや4月まで4年間務めた府議の地元であればその存在感は相当なもの、のはずなのに、これだけしか票がでないなんて、要するに、地元民からの「不信任」に他なりません。

要するに比例なんて全国のトータルなのだから、地元で稼いでしまえばいいわけで、例えば同じ党の青木愛は、地元千葉県で13万票以上獲得してそれだけで当選ラインを軽くクリアしています。ちなみに千葉の有権者数は500万人もいない。ましてや青木は元衆議院議員とはいえ、この2年は「浪人」だったのだから、この4月まで現役府議だった尾辻との落差は歴然としています。

ま、レズビアン以前の問題として、政治家として当たり前の仕事をしなければ勝てるわけがない。私も、尾辻さんがカムアウトしてからの約二年、全国や海外を飛び回って地元をないがしろにしたという「評判」はきいていたから、最初からこの結果は予想できたけど、ここまで地元から徹底的に嫌われてるとは思いませんでした。

まあ、次の国政選挙にLGBTが出る可能性がこれで低くなったとは思わないけど、多分尾辻さんではないでしょうね。
返信する
そりゃあ、あなた…… (玉野真路)
2007-08-08 18:44:16
尾辻さんは地元利権のために奔走したわけではないですので、この分析は的外れでしょ。

彼女はLGBTを初めとするマイノリティのためにと思い、志を立てて立候補をなさいました。私たち、LGBTの有権者はなぜ彼女を国政の場に送り込めなかったのか、ちゃんと考えるべきです。あとの祭りかもしれませんが、今後のために……。

その上で、地元票を固める戦略でともかく国政の場に乗り込むほうが有利だというならそうかもしれません。

ところで「政治家としての当たり前の仕事」ってなんですか?

返信する
Unknown (永易至文)
2007-08-08 19:28:52
この文体は、あら懐かしや、tnさん、またの名をnatsumixさん。
上記のコメント、いつもの上川を尾辻にかえただけだわねえ。ゲイ、いや、芸の無いことで……


アリーチェさん、ひとつ上の、無記名で投稿しちゃった、けしてくだされ
返信する
Unknown (m)
2007-08-08 21:14:31
玉野さま

地方議会でまともに実績も残せず、地元民からまったく評価されてない尾辻が、国政で何とかできると思うほど、LGBTの大多数はバカではありませんよ、あなたや永易と違ってね。それがちゃんと数字に表れてる。

「的外れ」と一蹴する前に、少しは大阪のLGBT当事者に話を聞いてみたら?

あ、それと玉野さんは名古屋でしたよね?尾辻がマスコミでも報じられた「公開結婚式」をし、ゲイバー周りもした名古屋の票がどうだったか知ってますか?当時から、「名古屋に縁もゆかりもない尾辻や東京の人間に、地元の人間が育ててきたNLGRが乗っ取られて不愉快」という評判だったけどちゃんとそれが数字に表れている。二丁目だって結局同じ。根っからの関西人で、府議としてのキャリアも大阪だった尾辻が、なぜ選挙前の切羽詰った時期に地縁のない東京に出てこなければならなかったのか?結局、関西で嫌われたからやむなく東京に出てきた、と考えると辻褄があいます。
返信する
Unknown (kumazzzo)
2007-08-10 01:22:34
熱い議論に割って入るつもりもないので、
あまり負けた理由については語らないけれど、
やはり、彼女は惨敗でしたよね。
普通なら…もっと票が入っていいはずで、
意思を持って彼女を選ばなかった人たちが
少なからずいるような気がします。
同性愛者として頑張って欲しいってだけで
一票を投じた自分としては
頑張る場に彼女を送ることが出来なかったことは残念です。
次につながる有意義な選挙結果の反省が
できるといいですよね。
返信する
そうなんです。 (玉野真路)
2007-08-10 03:17:48
>kumazzoさん

そうなんですよね。
尾辻さん自身が今後どういう生き方をするのかを決める権利は尾辻さん自身にしかなく、彼女がどうするのか僕は知りません。彼女自身もまだ分からないところがあるのかもしれません。
でも、同性愛者の代表を、マイノリティの代表を今後国会に送り込みたいなら、有意義な反省はしておくべきだと思うんですよね。
その結果、多くの人が「同性愛なんて政治的な問題にはならない」と思うなら、そうなるんでしょう、というのが民主主義なんでしょうね。

差し迫った理由があり、他の候補を応援するなら、「意思を持って選ばない」ことにも一理あります。けれど、なんとなく興味がないってだけの人も多いはず。うちの相方さんのお友達たちもそういう意味でかなり頭が不自由な方ばかりです。結局、だれもなにも困っていない現状というのがあって、その中で何を訴えるのかというのは、どうやっても難しいですね。

いずれにしろ、今回の選挙は、ごく一部の(おそらく同性愛者のほんの1%ほどの)「コミュニティの住人」と、それ以外の大多数のホモたちの意識の乖離をあまりにはっきりと見せてくれた選挙だったと思います。
返信する