新装開店☆玉野シンジケート!

セクシュアリティ・科学・社会・映画

『グアンタナモ 僕らが見た真実』(マイケル・ウィンターボトム監督)

2007年07月05日 03時30分45秒 | 映画雑感
 テーマは周防監督の『それでもボクはやってない』と同じであるが、物語のスケールが大きい。マイケル・ウィンターボトム監督は、社会の中で孤立し、抑圧されている人をしばしば描くが、この映画の主人公も『In This World』と同様、戦争で悲惨な目に会わされる。

 アメリカは自由の国であり、そのために民主主義を貫いていることになっている。しかし、人種差別の問題一つ見ても分かるように、みんなが平等であるように見えて、すぐに差別=被差別図式を作り出してしまう悪癖もある。たまたまアフガニスタンにいたために2年以上の長きにわたって、悲惨な目に会わされたこの映画の主人公たちも、その被害者にほかならない。

 リアルな手持ちカメラと、シンプルで象徴的なシーンを組み合わせながら、主人公たちが会う理不尽な現実を描き出していく。
 戦争とテロに熱くなったアメリカが、「自分の正義」を貫徹するために行われた拷問。自分で言い出せば、それが正しいことになってしまう、全能感があぶりだされていく。

 これと比べると、すべてが「日常」の範囲におさまっている『それでもボクはやってない」はスケールが小さい。日常的に起こるちょっとした罪が、それだけですまなくなっていく。
 それに対して、こちらは戦争でありテロであり拷問である。見ごたえがある。

 しかし、ふと考えると、『それでもボクはやってない』は「日常」の中で起こる冤罪ゆえの恐ろしさを持っているともいえる。この二本の映画は並べてみるべきなのだ。


最新の画像もっと見る