
原題:『ホットロード』
監督:三木孝浩
脚本:吉田智子
撮影:山田康介
出演:能年玲奈/登坂広臣/鈴木亮平/太田莉菜/木村佳乃/松田美由紀
2014年/日本
女優の顔だけで成り立った稀有な作品について
主人公で14歳の中学生の宮市和希の友人関係と親子関係の描写のクオリティーに雲泥の差があるのは何故なのだろうか? 和希の亡き父の写真は全て処分されているようで母親は高校時代から好き合っていた既婚者の鈴木という男と付き合っているのであるが、バックグラウンドの描写不足で、木村佳乃が演じる母親の言動はエキセントリックで精神的疾患を患っているようにさえ見える。和希と母親の関係が上手く描かれているように見えないのであるが、それは母親だけでなく、和希自身にも言えることで、唯一の実の父親との思い出が、実は母親が付き合っている鈴木との思い出だったことを和希がどのように受け止めたのかよく分からないのである。
このように脚本には多々難があるが、原作者が惚れこんだだけのことはあって、宮市和希を演じた能年玲奈の存在感は素晴らしい。母の誕生日に万引きを働き警察に捕まった和希の顔のアップから始まる本作は最後まで能年玲奈の顔だけで成り立ったと言っても過言ではないであろう。どうも「あまちゃん」を観ていた人たちにはイメージの相違から評判が悪いようだが、一度も「あまちゃん」を観たことがない者としては、「単純に言えば、能年玲奈を見るための映画といってもいいだろう」(週刊文春10月9日号 小林信彦 『本音を申せば』「のびる少女と死者たち」)という意見に同意する。
それにしても尾崎豊の「OH MY LITTLE GIRL」を主題歌にしており、それは暗に昭和を示しているはずなのだが、2001年か2012年のように見えるのは何故なのか?