MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

「刑事マードックの捜査ファイル 灰色の色合い」

2023-03-11 00:59:36 | goo映画レビュー

原題:『Murdoch Mysteries Shades of Grey』
監督:ドン・マクブレアティ
脚本:ローラ・フィリップス
撮影:ジェイムス・ジェフリー
出演:ヤニック・ビッソン/ヘレナ・ジョイ/トーマス・クレイグ/ジョニー・ハリス/メリー・ウォルシュ/アンソニー・レムク
2009年/カナダ

人工妊娠中絶を巡る貧富の差について

 テレビドラマとしては持て余すほどハードなテーマのストーリーなので記しておきたい。
 排水溝で見つかった裸の女性の遺体はリリー・ダンで、一昨日から失踪していた娘を探していた母親のバーサが自分の娘であると確認することになる。リリーは勤めていたビクスビー保険会社をクビになっていたのであるが、それは彼女の体調が思わしくなかったからで、実はリリーは妊娠しており、結果的にリリーは妊娠8週目で流産していたのだが、相手はビクスビー氏本人だったものの、彼に結婚する意志は全くなかった。困ったリリーは最初に「スマック通りの魔女」と呼ばれていたサリー・スム―トのもとを訪れヘンルーダやサビナやブラックコホシュや綿根皮を配合した「ファウスタ伯爵夫人の女性用調整薬」を服用していたものの、慢性の肝機能障害を患い、さらにその錠剤では流産しないためにサリーに紹介されたラルフ・フィッチ医師のもとを訪れるのだが、それはリリーが階段からわざと落ちたりして流産を試み、ついにはネズミ除けとして使用されるペニーロイヤルオイルを小さじ一杯服用して播種性血管内凝固症候群を起こしてから来院したためにフィッチ医師の診療室前で大量の出血をしており既に虫の息で、このことがバレると前科のあり借金もある自分が疑われるということでフィンチ医師は排水溝に死体を遺棄し、治療放棄も含めてフィッチは起訴されるのである。
 しかし問題はこれだけではなかった。当初中絶手術をしたのではないかと疑われたアイザック・タッシュ医師はリリーを治療してはいないが、もしもリリーが自分を訪ねてきたならば、リリーは死なずに済んだと言う。実はタッシュ医師は学生の頃にジュリア・オグデンと友人関係にあり、医師になるために必死になって勉強していたジュリアが不本意で妊娠してしまった際にタッシュに相談するものの、中絶手術は違法なのでできないと断ると、他の医師に頼んだために生死をさまようことになり、タッシュが助けたこともあり、その後タッシュは違法ではあるが妊娠して困っている女性のために中絶手術を行なっているのである。
 1890年代のカナダでは中絶手術は違法で、『あのこと』(オードレイ・ディヴァン監督 2022年)でも描かれていたように1960年代でもフランスでは中絶手術は違法だったのであるが、本作の見所は中絶に関して明らかに貧富の差に関係なく一方的に女性が困窮してしまうのに、貧富の差によって捕まる人と見逃される人がいることを明確にしているところなのである。
gooニュース
https://news.goo.ne.jp/article/thetv/entertainment/thetv-1120694


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする