原題:『The Savior For Sale』
監督:アントワーヌ・ヴィトキーヌ
撮影:グザビエ・リバーマン
出演:ロバート・サイモン/ルーク・サイソン/マーティン・ケンプ/マシュー・ランドラス/スコット・レイバーン
2021年/フランス
ダ・ヴィンチという「呪縛」について
『レンブラントは誰の手に』(ウケ・ホーヘンダイク監督 2019年)を観たばかりだったのだが、この手の話はけっこう多いということが本作で分かった。
本作はレオナルド・ダ・ヴィンチの最後の傑作とされる「サルバトール・ムンディ」、通称「男性版モナ・リザ」を巡る物語で、その真贋が問題となっていたのであるが、複製とされていたものが2011年に本物としてロンドンのナショナル・ギャラリーが正式に展示したことで「お墨付き」を与えられたことからこの作品は迷走を始め、高額で売買されるようになる。
2017年にクリスティーズでオークションにかけられ約4億ドルに手数料の5千万ドルを加えてサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーンが落札することになる。
ところが2019年にダ・ヴィンチ没後500年記念としてパリのルーブル美術館が催した回顧展で出品必至と思われていた「サルバトール・ムンディ」はルーブル美術館の鑑定人たちによって本物とは認められなかったことで出展が見送られたのである。問題はダ・ヴィンチ本人の筆によるものなのか、いわゆる「ダ・ヴィンチ工房」で制作されたものなのかの違いであるが、クリスティーズのカタログには「attribution(帰属)」という言葉が消されていたらしく、クリスティーズという競売会社もなかなかなのだが、ナショナル・ギャラリーが真作として認めた理由も観客を呼べて入場料で儲かるからで、その後スイスの美術商やロシアの大富豪やサウジアラビアの皇太子が購入した理由はダ・ヴィンチという誰もが欲しがる「カルチャー」の所有欲によるものだろうが、私利私欲や国益よりも鑑識眼の正確さを取ったルーブルがルーブルたりえる理由が本作を観るとよく理解できる。
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