MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ブラック・レイン』

2021-12-10 01:04:06 | goo映画レビュー

原題:『Black Rain』
監督:リドリー・スコット
脚本:クレイグ・ボロティン/ウォーレン・ルイス
撮影:ヤン・デ・ボン
出演:マイケル・ダグラス/アンディ・ガルシア/高倉健/ケイト・キャプショー/松田優作
1989年/アメリカ

二つの『B・R』について

 リドリー・スコットは1982年に『ブレード・ランナー』を撮っているのだが、本作は画面の質感も含めて『ブレード・ランナー2』といった感じに見える。
 『ブレード・ランナー』のレプリカントと呼ばれる人造人間をどのように捉えるかは微妙な問題ではあるが、本作の主人公で刑事のニック・コンクリンがレストランで遭遇したヤクザの佐藤浩史は、『ブレード・ランナー』の主人公のリック・デッカードが遭遇するレプリカントのロイ・バッティと、何を考えているのか分からないという点においてダブるのである。
 「ブラック・レイン」とはヤクザの首領である菅井国雄がニックに言い放った、第二次世界大戦時にアメリカの戦闘機による空襲後に降って来た黒い雨を指すのだが、つまり敗戦によって日本はそれまでの価値観を失い「アメリカ化」したことで日本の義理人情が無くなった結果、佐藤のような殺人を厭わない冷酷な金の亡者を生み出し、さらにそのことに対してニックは自分自身が逮捕した麻薬の売人たちから押収した売上金を別れた家族に生活費を払うために横領しているという負い目があるために反論できない立場にいるのである。
 少なくとも『ブラック・レイン』は『ブレード・ランナー』の「その後」としての一つの可能性を提示していると思うのである。


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