原題:『남산의 부장들』 英題:『The Man Standing Next』
監督:ウ・ミンホ
脚本:ウ・ミンホ/イ・ジミン
撮影:コ・ラクソン
出演:イ・ビョンホン/イ・ソンミン/クァク・ドウォン/イ・ヒジョン/キム・ソジン
2020年/韓国
「マッサ」という蜜月について
1979年10月26日に韓国で起こった朴正煕暗殺事件の犯人である大韓民国中央情報部(KCIA)の部長だった金載圭をモデルにした作品である。
パク大統領は1961年に軍事クーデターで政権を掌握したのだから、分かりやすく言うならばヤクザが国家権力を乗っ取ったようなものであり、その話の大きさを前に『ヤクザと家族 The Family』(藤井道人監督 2021年)も『すばらしき世界』(西川美和監督 2021年)も霞んでしまいそうになるが、もちろんテーマが違うのだから棲み分けはできている。
気になった箇所を挙げるならば、パク大統領と大韓民国中央情報部(KCIA)の部長のキム・ギュピョンが差しで飲んでいる時に大統領が「あの頃は良かった」と日本語で言うとキムも「あの頃は良かったです」と日本語で応じるのだが、わざわざ日本語で言うということは彼らが日本語を使っていた時、つまり第二次世界大戦時に陸軍士官学校の留学生であった頃や特別幹部候補生だった頃を懐かしがっているはずで、韓国の映画監督によるこの描写は意外だった。
その時、2人が飲んでいた酒はパク大統領がマッコリをサイダーで割った「マッサ」と呼ばれるもので、つまり「マッサ」とは韓国とアメリカの関係が上手く行っている(と大統領は思っていた)という暗示なのだと思う。実際に、ラストにおいてパク大統領が暗殺される宴会においてキムは酒瓶からそのままコップに次々となみなみに酒を注いでいったからである。イ・ビョンホンは相変わらず貫禄の演技を見せている。