原題:『あのこは貴族』
監督:岨手由貴子
脚本:岨手由貴子
撮影:佐々木靖之
出演:門脇麦/水原希子/高良健吾/石橋静河/山下リオ/山中崇/高橋ひとみ/津嘉山正種/銀粉蝶
2021年/日本
新しい「投合」の方法について
開業医の家庭で育った主人公の榛原華子が交際相手を探そうとすると結局青木幸一郎のような、政治家輩出の家系で慶応幼稚舎出身の弁護士にたどり着いてしまうことは必然なのだと思うが、幸一郎と結婚した後になって幸一郎が地盤を引き継いで政治家になることに気が付くというのは不自然な感じがあるものの、華子が三姉妹で兄弟がいなかったからなのだろうか?
印象的なシーンを書いておきたい。華子がタクシーで帰宅途中で、自転車に乗っている時岡美紀に気が付き、タクシーを降りると美紀に声をかける。2人乗りして美紀のマンションに着き、華子がベランダで東京タワーを見つめていると美紀が棒アイスを持ってくるのだが、華子が選んだバニラアイスと美紀が着ている白いコートが「投合」し、美紀が持っているチョコアイスと華子の着ている茶色いワンピースが「投合」するのである。それはかつて幸一郎の家族と面会する際に、華子が作法に則って家族がいる部屋に入ったのと同様な独自の「ニューフォーマット」のように見える。
美紀の家を去った後、歩いている橋の向かい側で2人の女性が仲良くしている様子を見て、一大決断をした後に、華子は相良逸子のマネージャーとして働くことになる。つまりそれは『花束みたいな恋をした』(土井裕康監督 2021年)同様に「つまらない男とは付き合えない」という旧弊に対する異議申し立てなのだと思うのである。
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