MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『シチリアーノ 裏切りの美学』

2021-02-12 00:53:59 | goo映画レビュー

原題:『Il  traditore』
監督:マルコ・ベロッキオ
脚本:マルコ・ベロッキオ/ルドビカ・ランポルディ/バリア・サンテッラ/フランチェスコ・ピッコロ
撮影:ブラダン・ラドビッチ
出演:ピエルフランチェスコ・ファビーノ/マリア・フェルナンダ・カンディド/ルイジ・ロ・カーショ
2019年/イタリア・フランス・ブラジル・ドイツ

「スタンス」がブレない大物映画監督について

 イタリアのシシリア系のマフィアの組織である「コーザ・ノストラ」のパレルモ派とコルレオーネ派の凄惨を極めた対立が描かれる本作が、パレルモ派の大物であるトンマーゾ・ブシェッタを主人公としたのは、ルチアーノ・リッジョやサルヴァトーレ・リイナを中心としたコルレオーネ派からの視点は既に『ゴッドファーザー』(フランシス・フォード・コッポラ監督 1972年)などで描かれているからでもあろう。興味深い点としてコルレオーネ派の幹部たちが「定住型」であるのに対して、ブシェッタはパレルモで生まれるも、その後アルゼンチン、ブラジル、アメリカと「遊牧型」であることで、組織というものにこだわりが無かったのかもしれない。
 エンターテインメント作品として優れていることは言うまでもないのだが、個人的にはリッジョが、フランスの小説家のミシェル・ビュトール(Michel Butor)の言葉として「lo sguardo è l'espressione della realità」を引用してブシェッタに向かって叫んでいるシーンが印象的だった。短文であるだけに翻訳が難しいのだが、「(見えないものを邪推することなく)見かけこそ現実の反映だ」という意味であろう(「目は現実を表す」と訳されているのだが、意味がよく分からない)。マフィアが小説を読んでいるとは思えず、例え、読んでいたとしてもミシェル・ビュトールのような「ヌーヴォーロマン」を読むとは到底思えないので、これはマルコ・ベロッキオ監督の映画に対するスタンスと捉えていいのではないだろうか。


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