MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ミセス・ノイズィ』

2021-02-06 00:43:52 | goo映画レビュー

原題:『ミセス・ノイズィ』
監督:天野千尋
脚本:天野千尋/松枝佳紀
撮影:田中一成
出演:篠原ゆき子/大高洋子/長尾卓磨/新津ちせ/宮崎太一/洞口依子/和田雅成/田中要次/風祭ゆき
2019年/日本

「和解」で誤魔化せる「苦悩」について

 主人公の吉岡真紀は2008年に文芸誌の新人賞を獲ったものの、その後が続かず10年間スランプに陥っているのだが、引っ越し先のアパートの隣人の若田美和子と娘の菜子を巡って諍いになり、それをネタに小説を書き、弟の多田直哉が2人がベランダで言い争っている様子を撮ってネットに挙げたことからさらにバズりだす。
 しかし同じ場面を若田夫妻の観点から描かれるとそれまで見えなかった夫妻の苦悩が明らかになる。夫妻は子供を亡くしておりそれが原因で夫の茂夫は心を病んでいたのである。
 あれほど関係をこじらせたにも関わらず、結局、真紀と美和子は和解して「ウィンウィン(相互利益)」の関係で終わらせることには納得しかねる。若田夫妻にも菜子に対しても慮ることができないから真紀は小説を書けないのではないのかと思ってしまう。「純文学」から「エンターテインメント小説」へ「逃げた」ように見えるのである。


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