MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『哀愁しんでれら』

2021-02-10 20:54:59 | goo映画レビュー

原題:『哀愁しんでれら』
監督:渡部亮平
脚本:渡部亮平
撮影:吉田明義
出演:土屋太鳳/田中圭/COCO/山田杏奈/ティーチャ/水石亜飛夢/銀粉蝶/石橋凌
2021年/日本

「シンデレラと家族 The Family」について

 主人公で26歳の福浦小春は児童相談所に勤め、子供が親に虐待されていないかどうか調べている。それは子供の頃に小春自身も母親に捨てられた経験を持っているからであろう。
 小春が酔いつぶれて電車が近づいてくる踏切のど真ん中で寝ているところを助けた男は41歳の開業医の泉澤大悟で、前妻との間の娘のヒカリにも気に入られた小春はすぐに結婚をするも、籍を入れたとたんにどうも小春が想像していたように物事が運ばないことを感じるのだが、結婚直前まで一緒に暮らしていた祖父の一郎が風呂場で倒れ、急いで祖父を運ぼうと父親の福浦正秋が運転する車に酔っ払いが運転する自転車を避けようとして自損事故を起こし、その間に留守をしていた実家「福浦サイクル」は蚊取り線香の火の引火により半焼してしまい、10年間交際していたバンドマンの広夢が小春の職場の同僚である白石礼奈と騎乗位で性交している現場を目撃したりしていて散々な目に遭っていたので、それよりはマシだという思いはあったのだと思う。
 ところがお弁当に5円玉を入れて握ったおにぎりを弁当箱に入れても文句を言わなかったヒカリが嘘をついていることを突き止めるのだが、登校拒否を始めたヒカリを母親として守ろうとした小春が大悟と取った行動は驚くべきものだった。しかしこれには伏線があり、実は本作の冒頭で子供の虐待を疑った母親が娘をブランコに乗せて楽しく遊んでいる場面を小春は目撃していたのである。
 つまり自分の子供を全身全霊で守っているつもりが、いつの間にか子供に「操られている」というアイロニーが本作の主題なのだが、終始ポップな画作りで、「人殺し」という落書きでさえポップに見えることを認めるとしても「哀愁しんでれら」というタイトルがどうも主題を捉え損なっているという気もしないではない。それは娘のヒカリを演じたCOCOが飛びぬけた演技により主役の土屋太鳳を喰ってしまったこともあるだろう。
 『AWAKE』(山田篤宏監督 2020年)は第1回木下グループ新人監督賞グランプリ受賞作(2016年)で、本作は「TSUTAYA CREATORS' PROGRAM FILM 2016」でグランプリを獲得した企画を元にした作品である。監督の経験値の差が出たような感じだが、どちらも完成までに時間がかかり過ぎているように思う。


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