原題:『RoboCop』
監督:ジョゼ・パジーリャ
脚本:ジョシュア・ゼトゥマー
撮影:ルラ・カルヴァーリョ
出演:ヨエル・キナマン/ゲイリー・オールドマン/マイケル・キートン/サミュエル・L・ジャクソン
2014年/アメリカ
SFアクション映画には贅沢な細かい演出について
2028年、巨大企業であるオムニコープ社が軍事用のロボット・テクノロジーの分野で支配的な地位を占めており、例えば、紛争地域であるテヘランにおいてロボット兵器は相手が武器を持っているかどうかで攻撃を加えるかどうかを判断し、父親を助けるために銃を持って外に出た子供も容赦なく撃ち殺すのであるが、そのような非人道的な兵器をアメリカ国内で使用することはドレフュス法で禁止されているという皮肉が効いている。
だから多少の「人情味」は必要であろうということで、オムニコープ社のCEOであるレイモンド・セラーズはたまたま瀕死の重傷を負った勤勉な警官であるアレックス・マーフィーを選び「ロボコップ」として改造するのであるが、両腕を失った患者がギターで「アランフエス協奏曲 (Concierto de Aranjuez)」を弾こうと試みるも、最初は上手く弾けていたのに、感情移入すると却って指運びがブレるように、「人情味」が災いし感情的になるために期待したようなロボット兵器にはならず、結局、コンピューターメイン仕様に変え、ドーパミンも2%まで下げることで、アレックスはほぼただのロボット兵器と化す。しかし妻のクララ・マーフィーと息子のデヴィッド・マーフィーに会うことでドーパミンが増加し、多大な犯罪に関する情報を詰め込まれた結果、警察組織の腐敗を暴き出すところなども皮肉が効いている。
さらに冴えている演出としては、レイモンド・セラーズの部屋の背後に飾ってある絵画で、フランシス・ベーコン(Francis Bacon)の作品である「Triptych Inspired by the Oresteia of Aeschylus(アイスキュロスの『オレステイア』にインスパイされた三連祭壇画)」(1981年)は、明らかにメカと生身の人間に2分化されたアレックスに対するオムニコープ社の「期待」として示されるのであるが、間もなくしてセラーズの部屋の背後に飾ってある絵画が、オブジェの写真に変わることで、感情の無いロボット兵器に徹したアレックスへの会社の方針の転換が示されるのである。