原題:『犬猫』
監督:井口奈己
脚本:井口奈己
撮影:井口奈己/ 鈴木昭彦
出演:榎本加奈子/藤田陽子/忍成修吾/小池栄子/西島秀俊/小松留美
2004年/日本
登場人物の「仕種」を楽しむ作品について
物語そのものは、主人公のヨーコとスズが好みの男性のタイプが似ていることから距離を置いていたにも関わらず、ヨーコから略奪したであろう同棲中の恋人の古田の家から逃げ出して、共通の友人であるアベちゃんの家に転がり込み、先に留守番を頼まれていたヨーコと結果的に2人で暮らすようになってしまったことから起きる小さなエピソードが綴られているといったものである。
決して多弁とは言えない物語に対して、観客は主人公たちの心情を彼女たちの動きから捉えなければならないはずで、例えば、古田の家から飛び出してくるスズが階段から駆け下りてくる正面からのショットから、背後から坂道を駆け下りていくまでの2カットのスムーズに結び付けられるシーンに彼女のひと時の自由が感じられるし、ヨーコやスズの三鷹との十字路や坂道における逡巡を経て、喧嘩の後の2人の、それぞれのカメラとの「競争」など、あくまでも本作は登場人物の仕種を犬や猫を見るように楽しむ作品なのである。