原題:『花とアリス』
監督:岩井俊二
脚本:岩井俊二
撮影:角田真一
出演:鈴木杏/蒼井優/郭智博/平泉成/相田翔子/木村多江/大沢たかお/広末涼子
2004年/日本
「大人になる少女」というイメージ作りを得意とする監督について
中学生の頃からの親友である主人公の荒井花と有栖川徹子の関係は、入学した手塚高校の憧れの先輩である宮本雅志の、ガレージのシャッターに頭をぶつけて「記憶喪失」となったことを利用して花が宮本の恋人に収まったことからこじれることになる。宮本にとっては花が自分の恋人であるということが納得できない一方、別れた恋人とされた徹子(アリス)には何となく心が惹かれるからである。
例えば、宮本とアリスがデートをしている時に、宮本がアレルギーを持つ「心太」を巡って嘘がバレるのであるが、それならばまだ宮本の名前を知らなかったアリスが、姓名判断が得意ということで宮本に自分の名前を書かせることに宮本は疑問を持つべきであろう。
ストーリーの構築が弱いと思うが、アリスの父親が手品をするために持っていたトランプにはウサギが描かれていたが、宮本が持っていたハートのエースの裏にはウサギと共に「アリス」が描かれており、これはもちろんルイス・キャロルの『不思議の国のアリス』を想起させ、あるいはアリスが表紙を飾ったファッション誌は「Melmo(メルモ)」であり、手塚治虫の『ふしぎなメルモ』を想起させることで少女が大人になる過程の葛藤というイメージ作りはさすがに上手い。
「マツモトキヨシ」ならぬ「マツモトヒトシ」のギャグは押さえておきたい。