予備校に勤めていた頃、ある高校の入学式に、予備校の案内物の配布に行ったことがある。
駅前で配るテッシュペーパーのような感じで、入学式のために校門に入っていく生徒に予備校の案内物を配る。
学生のアルバイトの男の子と、僕と二人で行った。
その配布(手配り)が終わって、周りのゴミを集めて帰り道でアルバイトの子が僕に言った。
「今日、手配りした高校、賢い高校ですか」と。
その高校は、その地域の中では、学力が割と高い子が行くという感じの公立高校だった。
それで「そうやで。この地域ではまあ賢い高校やで」と僕は言った。「でも、なんでそれがわかったの?」と続けた。
すると、そのバイトの男の子は一言「服装の乱れたやつが一人もおらん」と言った。
男の子らしい短い一言だったから逆にインパクトがあった。
「そうか、それでわかったんか」と僕は感心したように言った。
本当にある意味、男らしい観察力だなと思った。
今日、幹線道路の歩道を歩いていたら、寄り添ってあるく、高校生のカップルとすれ違った。
それから、また50メートルくらい後方から歩いてくる高校生のカップルと、すれ違った。
二組のカップルとも制服をきちんと着ているという感じだった。
僕は「服装の乱れたやつが一人もおらん」というあの時のバイトの子の言葉を思い出した。
そして、僕も、きっとそこそこ賢い高校のカップルなんやろうなと思った。
でも、この地域の賢い高校って?とその次の瞬間に考えている自分に、やっぱり、勤めていた頃の考え方のくせがいまだに抜けないんだなと思ってしまう。
でも、こんな、雨模様の日に高校生がカップルで歩いて、どんな気持ちなんだろう、と思わず想像してしまう。
まあ、うらやましいといえばうらやましい。
この年頃でないと味わえない感覚があるから。
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ヤクルトスワローズの青木選手が日米通算2500本安打を打ったと新聞に出ている。
そんなに派手さはないのにすごいなと思ってしまう。
2000本安打を達成した選手は50人以上いたと思うけれど2500本となると青木選手を含めて過去に11人しかいない。
2000本からのプラス500本がとても困難ということなのだと思う。
新聞に過去に2500本安打を達成した選手11人全員の名前が載っている。
こういう機会にそういう名前を見るのも楽しみの一つ。
本当にどの名前を見ても、名選手、大選手という顔ぶればかり。
そのなかに門田博光という名前がある。
懐かしいなと思う。
確か1988年、つまり昭和最後の年、そして、南海ホークスと阪急ブレーブス最後の年に僕は西宮スタジアムに阪急 対 南海の試合を見に行った。
当時南海ホークスに所属していた門田博光選手の打った打球が西宮スタジアムのライトスタンドの銀屋根にワンバウンドして夜空の場外に消えていったときの美しさを僕は今も忘れることができない。
人生で、一度だけ見た場外ホームランがとても美しかったというのは幸せなことかもしれない。
今は、あのあたり、芸術センターとかあるんだなと思う。
本当に西宮北口の駅をおりてダフ屋のおばちゃんに、「内野特別席安いよ」と声をかけられてそれを信じて買ったら、甲子園で言うアルプススタンドにあたる位置の席で、とても試合が見にくかった。
それ以来、タフ屋からはチケットを一度も買っていない。
しかし、最近、野球、見に行ってないけど、今でも「余れば買うよ、なければ売るよ」と言っているおじさんや、おばさんっているんだろうか。それともダフ屋もネットになっているのか、本当にそれもわからないくらい最近、野球、見に行ってないなと思う。
まあ、藤井寺とか、西宮とか、僕の好きなタイプのスタジアムがなくなってしまったせいもあるかもしれない。
それは、ともかく、一日いちにち無事にすごせますように、それを一番に願っていきたい。