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詩をジャズに乗せて!

2008-03-17 02:53:43 | 映画・演劇・文学
気の向くまま、時々更新、と言いながら、続けての更新です。今後とも、ご訪問・ご感想、よろしくお願いします。


さて、14日夜、“Printemps des Poètes”(詩人たちの春)の一環として行われた“Festival Jazz-Poésie”に行ってきました。

会場は、“Maison de la Poésie”(詩の館)。


場所は、ポンピドゥー・センターのすぐ北にある、パッサージュ・モリエール(Passage Molière)。パッサージュですが、ここは天蓋で覆われているのではなく、オープン・エア。しかも短く、すぐ反対側の出口が見えてしまうほど。でも、画廊や、この詩の館などが並び、芸術の雰囲気あふれるパッサージュになっています。

パッサージュ・モリエールにあるせいか、この詩の館は、別名モリエール劇場(Théâtre Molière)とも言われているようです。

さて、この夜のプログラムは、もちろんジャズと詩の朗読のコラボレーション。パリは昔から(特に第二次大戦後)ジャズが盛んで、今でもジャズのライブハウスも多く、ジャズとは関係の深い街。現代詩とのコラボなら、ジャズが最適なのかもしれないですね。

メンバーは、朗読が、詩人にしてこの日朗読された詩の作者でもあるゼノ・ビアヌ(Zéno Bianu:1950年生まれ、20冊以上の詩集を出すとともに、詞華集の編集、外国の詩の翻訳にも携わる、その中には芭蕉の俳句も)と詩人・作曲家・役者というマルチ芸術家として活躍するジャン=リュック・ドゥバティス(Jean-Luc Debattice:1947年生まれ)。演奏は、リーダーでギタリストのMimi Lorenzini、コントラバスがJean-Luc Ponthieux、ピアノAnn Ballester、ドラムスNoël McGhie、そしてサクソフォンがSteve Potts。

有料(20ユーロ)のイベントでしたが、120席ほどの会場が、満席。中高年に混じって、学生風の若い人も来ていました。

7人が舞台に登場すると、いきなりジャズの演奏。しばらくすると、そこに詩の朗読が重なってくる。作者のビアヌが落ち着いた声で感情を抑えながら詩を詠んでいく。ドゥバティスにバトンタッチすると、そこは作曲家にして役者、一気に盛り上がり、詩の朗読と言うよりは、シャンソン・リテレール。それもアポリネールの『ミラボー橋』などとは違って、いわばジャズ・リテレール。感動ものです。


この夜朗読された作品は、“Chet Becker”・・・1950年代に時代の寵児となった、ウェスト・コースト・ジャズのトランペット奏者、チャット・ベイカー(1929-1988)へのオマージュ。刑務所に入れられたり、麻薬中毒で入院したり、波乱万丈の人生。最後は事故なのか自殺なのか、アムステルダムのホテルから転落死。こうした稀有なジャズ奏者を、時に緊張感を持って、時にメランコリーに詠った作品です。ジャズに乗せて朗読するにはもってこいの作品。読み手も、感情移入したり、突き放してみたり・・・見事なドラマになっています。

しかも、ドゥバティスの顔が、面長で、ヘアスタイルも含めて、コメディ・フランセーズのちょっと北に建つモリエールの像そっくり。眼鏡をかけたモリエール・・・古典演劇も、詩と言えば言えるわけで、共通点も。演劇、詩、朗読、ジャズ・・・11世紀の吟遊詩人(トルバドゥール)以来の伝統が、今日の衣装をまとって現れたようなステージ。すごい、すごいと酔うように聴いているうちに、1時間はあっという間。拍手に答える姿は、まるでコメディ・フランセーズの役者たちのよう。そのせいか、コンサートとは違って、アンコールはなし。

やはり伝統なのか、音楽に乗せての詩の朗読は時々行なわれているようです。例えば、ブレヒトは自らギターを弾きながら自作の詩を歌ったようですし、フランスでも、例えばジョルジュ・ムスタキやレオ・フェレは20世紀の吟遊詩人などと言われました。どこからが歌で、どこからが詩なのか・・・その境界線はあいまいというか、無理に分け隔てする必要もないのかもしれませんね。



日本でも、歌い語る伝統はあったと思うのですが・・・。今日でも詩の朗読会など行なわれているのでしょうか。音楽に乗せて詩を聴く・・・詩の新たなファンも増えるかもしれないですね。日本でも、もっと暮らしに詩を!

最後に、パンフレットから、“Chet Becker”の一説を引用させてもらいます。

je suis allé au bout du souffle
avec le coeur qui pompe avec le coeur qui fait la pompe
avec le coeur
qui fait l'amour
implacablement
pour mieux montrer chacune des notes qui vont m'emporter
pour mieux apparaître ou disparaître être une apparence absolue
jusqu'à me défigurer
en vieux sorcier sioux
en home-médecine inguérissable

assez de trompe-l'oeil de trompe-l'oreille
écoutez mes leçons d’obscurité écoutez ma douce pénombre
c'est aussi une joie d’être
au monde
impeccablement désespéré
rien à démontrer rien à imposer
juste
la petite musique meurtrie de l'immensité

(上記の詩、本来はセンター揃い)

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卒業!

2008-03-16 00:22:34 | パリ
『卒業』といえば、ダスティン・ホフマンですが、そんな懐かしの名画に関係なく、毎年行なわれている卒業式。日本では、ちょうど卒業シーズンでしょうか。高校、荒れる中学、そして小学校。大学はもちろんとっくに授業が終わり、新社会人になるための準備、あるいは、卒業旅行。パリでも、2月下旬以降、学生風の旅行者を数多く見かけるようになっています。



数人グループで、あるいはカップルで、観光名所を訪ね歩いたり、ショッピングを楽しんだり・・・いい思い出になるといいですね。

そして、このブログもランキングを卒業させてもらうことにしました。初めて登録した日記ランキングを半年、そしてこの人気ランキングは去年の3月18日(日)からで、ほぼちょうど1年になります。それを機として、同じ日曜日(16日)、つまり今日ですが、を最後にランキングにはお別れしようと思います。

より多くの方にこのブログを知ってもらいたいとランキングに登録しました。ある程度上位にいれば、宣伝効果になるだろうと思っていたのですが、思いのほか多くの方々からアクセスをいただけるようになりました。



一日平均のアクセスIP数で750前後。閲覧ページ数は一日1,500前後。同じ日に過去に遡って多くの記事を読んでいただく方もいるかもしれませんが、それでも毎日1,000人以上の方々に読んでいただいているようで、本当に嬉しく思っています。

また、コメントをお寄せいただいた方々、リンク先等に登録していただいている方々、ご支援ありがとうございます。改めて御礼申し上げます。

これからは、気の向くまま、時々更新をしていこうと思っています。もし、引き続き訪問してくださるようでしたら、17日の早朝にランキングからは消えますので、お気に入りにでも入れていただければ幸いです。

ランキングへの投票、大きな励みになりました。本当にありがとうございました。そして、時々はこれからも覗いていただければ幸いです。


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巨大なバゲットを、見上げよう!

2008-03-15 01:52:39 | マスコミ報道
フランスパンの代名詞のような、バゲット。その巨大なものを、もしかすると、見ることが出来るかもしれません! どれほど巨大かというと、297m・・・297メートルです! ミリメートルやセンチメートルではありません。297メートル! そんなバゲットをどうやって作るのでしょう。


(12日のメトロ紙です)

ラ・デファンス地区のさらなる開発のシンボルとして、新たな高層タワーを建設しようという計画があるそうです。そのデザインコンペの最終選考に残った5案が発表になりました。トロフィーのようなもの、一皮剥くと素敵なビルが見えるといったアイディアがありますが、その中でもやはり目を引くのが、右から二番目、バゲット形のデザインです。どう見てもバゲットにしか見えませんよね。カタチも、色も。良くぞ最終選考に残ったという気がしますが、そのコンセプトなどが13日のフィガロ紙に、紹介されていました。


建築家の名は、ノーマン・フォスター(Norman Foster)。1935年生まれのイギリス人で、世界的な仕事を数多く手がけているそうで、最近では北京の新国際空港を手がけたそうです。インタビューに答えながら、いろいろ語っています。

まずは、バゲット、いや失礼、このラ・デファンス新タワーのコンセプトは・・・立地が歴史のある街と新しい街の交差するところだけに、伝統的な意匠とダイナミズムを両立させ、また、らせん状に伸びる段差部分のお陰で全フロアに自然の陽光を取り入れることが可能になっている。つまり、自然も大切にした設計思想になっているそうです。

このタワーが完成すると、8万平方メートルのオフィスと16階のホテルになるそうです。オフィスだけでは、昼だけの街になってしまう。ホテルと共存することによって、昼夜を分かず、人のぬくもりのある街になるそうです。でも、こうしたオフィスとホテルの共存した建物って、多くの国にすでにありますよね。フォスター氏自身、他の国でも建設済みだそうですが、わざわざ記事の中で紹介しているということは、フランス人記者には珍しかったのかもしれないですね。

ラ・デファンス地区に関しては、ここは先端的のビジネス街として開発され、世界的に有名で、ここをモデルにした街が世界でたくさん出来ている。しかし、それがゆえに、後から出来た開発地区は、より先進的になり、結果的にラ・デファンス地区はもはや後塵を拝するカタチになってしまっている。かつてフランスは多くの国々にとって、憧れ、羨望の的だった。それをもう一度取り戻すチャンスとしたい、つまりルネッサンス、その起爆剤にラ・デファンス地区の再開発がなってほしいと述べています。ということは、意地悪な見方かもしれませんが、フランスの栄光、今いずこ、とこのイギリス人建築家は言っているのかもしれません。何しろ、イギリスの再開発の成功例をしっかり紹介していますから。

そして、ビジネスだけの街から、商業施設もあれば娯楽施設もあり、住居施設もある、そうしたミックスされた街になるべきではないだろうかと言っています。もしかして、その人間の街の象徴が、バゲット?

そして何よりも、公共交通機関の整備が欠かせないとアドヴァイスしています。パリは素晴らしい街だが、郊外には問題を抱えた街が多い。それは、各エリアが孤立しているから。連携を取った開発にはなっていず、それぞれが勝手に作り出された街で、しかも公共交通機関さえ満足には整備されていない。フランスには世界に冠するTGVがあるのだから、パリ郊外の公共交通事情を香港レベルまで改善すべきだ・・・パリ郊外の公共交通機関の整備、この建築家氏にはかなり遅れていると見えているようです。建築家は、ビルひとつ建てれば良いというのではなく、都市開発、街づくりに関する視点もしっかり持っているようですね。

そして、個人的には、何よりも、この大きなバゲットをラ・デファンス地区で見てみたい! 設計案の最終決定は4月末に発表になるそうです。どの案になるか、楽しみ・・・ぜひ、バゲット案に!

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風刺画のミケランジェロ。

2008-03-14 02:10:05 | 美術・音楽
ルネッサンスの偉大なる芸術家・ミケランジェロに譬えられる風刺画家、それは誰でしょう。また、この風刺画家はフランスでもっともスキャンダラスな芸術家ともいわれています。いったい、この芸術家は・・・


4日付のフィガロ紙ですが、この特集記事が紹介するように、答えは、ドーミエ。ご存知ですよね。オノレ・ドーミエ(Honore-Victorin Daumier:1808-1879)。18世紀末にドイツで考案されたリトグラフの技巧を駆使して、風刺新聞で縦横無尽の活躍。その人間観察眼が確かなだけでなく、類稀なデッサン力に裏打ちされた作品は、芸術の域にまで高められているといわれています。そのドーミエの今年は生誕200年。その作品を多く所蔵しているフランス国立図書館が、リシュリュー館で美術展を行なっています。


その人生は、そんなにスキャンダラスだったのでしょうか。この答えは、ノンです。8歳の頃、家族でパリへ出てきたものの、貧しくて早くから働きに出たドーミエ。しかし、絵への興味が抑えきれずに、画家に師事。また、ルーヴルに日参しては先達たちの技法を学んでいったそうです。そこで身につけたデッサン力は確かなもので、リトグラフ以外に残している油彩や彫刻も素晴らしい作品になっているそうです。

では、何がスキャンダラスなのか。サド侯爵をはじめ立ち居振る舞いがスキャンダラスで投獄された芸術家は多くいますが、ドーミエの場合は、作品そのものがスキャンダラスだった。つまり、当時の権力者を、あるいは傲慢な人々を揶揄し、皮肉った風刺画そのものが、まだ風刺を受け入れるだけの余裕のなかった19世紀には、スキャンダラスなものと捉えられ、検閲のかっこうの対象になっていたようです。しかも、19世紀のフランスは、7月王政あり、共和制あり、第二帝政ありと、社会体制が大きく変化し、そのたびに検閲の基準も変わった。だからこそ、ドーミエが“la Caricature”(ラ・カリカチュール)とか“le Charivari”(ル・シャリヴァリ)といった新聞紙上に発表する風刺画は社会的スキャンダルになったのかもしれないですね。


(パンフレットからの複写)

ドーミエが常に希求したのは「自由」。支持したのは「共和制」。反対に攻撃の対象にしたのは「偽善」。権力や正義の御旗の陰で、とんでもないことを繰り広げている人たち・・・どこにも、そしていつの世にもいますよね。自分の懐を肥やすことしか念頭にない権力者はガルガンチュア(大食漢)として描かれ、本当の教養などない俄か成金たちは、劇場で踊り子たちのスカートの中だけをオペラグラスで覗いているし、人間を忘れた裁判官には一滴の慈悲の心もなく、楽器は弾けても芸術の分からない楽団員は、舞台の袖で居眠り・・・

また、当時の日常も描いています。冬のパリ、雪の吹き込む3等列車で凍える人々、建物の地下に暮らす人々は湿気や虫との戦い、夏は夏でやりきれない暑さに木陰を見つけては寝そべるだけの日々・・・丹念に描かれた当時の風習や風物詩は、やがて印象派にも影響を与えることになるそうです。

ティツィアーノやルーベンスから多くのことを学んだドーミエの風刺画。白と黒、そしてその中間のグレーのみの世界ですが、そこには濃淡があり、光沢があり、お互いにコントラストがあり、描かれるラインには太さにも鋭さにも変化があり、単なる挿絵、風刺画の域を超えている。だからこそ、こうして生誕200年の企画展も開かれる偉大な作家として認められているのでしょうね。その偉大さに最初に気付いたのは、詩人のボードレールなんだそうです。本物だけが本物を見分けることができる・・・詩人の後に、コロー、ドガが続き、やがてその影響は写実主義、印象派、表現派、そしてシュールレアリストまで連綿と続いているそうです。


(パンフレットからの複写)

ドーミエが描いたのは、権力や権勢・お金のある人たちばかりではなく、市井の人々の暮らしも。そこには、滑稽な人、気の毒な人、意地悪な人・・・いろいろな人がいます。それらは、まさにリトグラフで描かれた「人間喜劇」。同時代の偉大なる作家、バルザックが小説で描き出した世界を風刺画で描いたのがドーミエだったようです。

後世に残した作品が、4,000点のリトグラフ、1,000点の木版画、300点を超える油絵、数十点の彫刻。昔、オルセー美術館で、人物の顔を描いた一連の作品を見たときには、実に痛快で、爽やかなショックを覚えたものですが、今回の展示220点は、風俗や政治が対象の作品が中心。これはこれで面白いのですが、人間観察の結晶ともいえるような、その人物の性格を見事なまでに描き出した風刺画をもう一度たくさん見たいと思います。ドーミエの手にかかったら、皆さんはどのような人物に描かれるでしょうか。楽しみですか、怖いですか・・・



“Daumier. L'ecriture du lithographe”
Bibliotheque nationale de France, Site Richelieu
6月8日まで(7ユーロ)

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引っ張りだこ。しかして、宴の後は・・・

2008-03-13 02:36:56 | マスコミ報道
あちこちから引く手あまた。まるで自分を中心に地球が回っているような、そんな感覚に襲われる・・・スターと呼ばれ、スポットライトを急に浴びるようになると、そんな感じにとらわれるという話を、どこかで読んだか聞いた記憶があります。スターでなくても、仕事上でも、仲間内でも、人気者は引っ張りだこ。でも、それが一生続くという人は少ないのではないでしょうか。だからこそ、人生は糾える縄の如しとか、勝って兜の緒を締めよとか、人間万事塞翁が馬とか、いろいろ言われるわけですよね。大変なときもありますが、いつかは待てば海路の日和あり。そしてその逆も・・・

今、フランス政界で引っ張りだこなのは、中道政党のMoDem(民主現代党)。先の統一地方選挙第1回投票の結果は、すでにご存知のとおり、社会党が伸張したものの、政権与党のUMP(国民運動連合)も事前に言われていたほどには退潮しなかった。その結果、社会党とUMPの得票率が拮抗したままで16日の第2回投票へ、という選挙区が多くなっています。そこで、キャスティング・ボードを握るのが、左右両党に挟まれながら、それなりの健闘を見せた中道のMoDem。社会党はさっそく緑の党も含めて左派陣営と選挙協力を締結し、あとはMoDem。そこで左右両党からの選挙協力依頼が殺到。さまに、引っ張りだこの状態だそうです。党首は去年の大統領選挙で大健闘したバイルー氏。そこで・・・


11日のフィガロ紙ですが、右を見れば(向かっては左ですが)UMPのフィヨン首相、左を見れば社会党のオランド第一書記。いかに独自のポジションを保ちながら、党にとって有利な選択をするか・・・思案のしどころですね。


同じく11日のメトロ紙です。「みんなが言う、I love Bayrou」・・・左右陣営がともに秋波を送っているわけですね。どのような条件提示があるのでしょうか。


そして、11日のディレクト・マタン・プリュス紙。「MoDemが勝敗の中心に」・・・バイルー党首、思案顔ですが、にんまり。思わず笑みがこぼれてしまいます。

こうして、今や引っ張りだこのMoDem。しかし、この人気、いつまで続くでしょうか。そんな心配も人事ながらしてしまいますが、やはり政治の世界は魑魅魍魎(難しい漢字ですね、とても書けません)。日本でも、政治の世界は、一寸先は闇、と言いますよね。左右どちらの党と提携するか、選挙区ごとに対応が異なっているそうです。そこで・・・


12日のフィガロ紙です。左派と選挙協力した選挙区(一覧表のこれは向かって左)、右派と協力することにした選挙区(中央)、どことも提携せず最後まで独自の候補で戦うことにした選挙区(右)。見事に三つに分かれてしまいました。いくら個性を大切にする、あるいは個人主義の国とはいえ、ひとつの党の対応がこうも分かれてしまうと、党としての体裁をなさないのではないか・・・素人にもこう見えてしまいます。

そこで、この記事も、特に社会党と組んだマルセイユに見られるように、内部崩壊する可能性があるのではないかと言っています。マルセイユでは、MoDem支持者の三分の二は右派陣営を支持しており、左派陣営支持は三分の一に過ぎないと長年中道陣営を引っ張って来た重鎮も言っており、分裂の危機さえ指摘されています。

第2回投票を経て、中道政党のMoDemはどこへ行くのでしょうか。中道といっても、完全に中央ライン上に立っている人は少ないのではないでしょうか。左右どちらかに軸足を少し移している人もいるでしょう。それをひとつに束ねるのは至難の業のようにも思えます。完全に右なら右、左なら左と、はっきりしている方がまとめやすいのでしょうね。それに、日本の自民党にあるように、「権力」という明確な共通価値観があれば、何か問題があっても一つにまとまりやすいのでしょうが、日本の民主党を例に出すまでもなく、共通の価値が脆弱な場合、ひとたび何かあると内部崩壊しかねない、ということになるのかもしれないですね。

さて、宴の後のMoDem。民主党の明日を見るような気分で動向を見ていたいと思っています。

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終の棲家はどこで、そして誰と・・・

2008-03-12 02:48:59 | マスコミ報道
高齢化社会、増え続ける高齢者・・・長寿大国・日本では、高齢者をめぐる話題がよく登場します。高齢者の生きがい、高齢者へのサポート、そして高齢者をターゲットとしたビジネス、時には高齢者を狙った犯罪・・・

ベビー・ブーマー世代は日本だけでなく、多くの国共通の世代構成ですので、ここフランスでも当然増える高齢者への対策が話題になります。


9-10日付のル・モンド紙です。「老後を自宅で、2030年」・・・新しい技術開発のお陰で、さまざまなサポート体制ができつつあります。目覚めると、それを感知したセンサーがコーヒーを沸かし、カーテンを開け、インターネットに新聞情報をダウンロードしておく。そして、テレビ電話で離れて暮らす家族とあいさつを。また、手首にはめたブレスレットのようなセンサーが、脈拍数や血圧などの健康情報を、適宜医療センターに自動送信する。薬は決められたものが自動的にテーブルに並び、散歩するにもロボットが同伴し、事故などを防いでくれる。そして、万一体調が悪いとか、倒れたなどという場合には、すぐサポートが駆けつけてくれる・・・

夢物語のようですが、徐々に実現されつつあるそうです。もちろん、こうした技術は日本が進んでいますから、先行しているかもしれないですね。こうした技術革新とサポートで、安心の老後を・・・しかし残念ながらそうはいかないのが、人間の複雑なところ、あるいは、面倒なところ。

何が問題になるかというと、孤独感。自動化、ロボットの手助けなどにより、お年寄りがひとりでも生活できるようになる。でも、ひとりは、寂しい。これが、大きな問題なんだそうです。そこで、今フランスで考えられているのは・・・

お年寄りの集合住宅を作る。集会場や医療センターを設け、お年寄りたちが触れ合えるようにする。また、同じような価値観、趣味を持つ人同士が隣り合わせで住めるようにする。これならば、孤独感も癒せるのではないか。アメリカでは、お年寄りの街、一戸建てを整然と並べた街を造ったが、一戸建てに住む孤独感からうまくいっていない!

ということで、この記事はアメリカの例としてアリゾナ州フェニックス郊外にできているサン・シティを挙げています。実はここを訪問したことがあります。確かに、庭付きの一戸建てが碁盤の目のような街区に並び、そこをお年寄りたちがゴルフ場で見かけるカートで移動しています。一年中ほとんど快晴で、気温も高め。北部の人たちにとっては、老後住むには格好の場所。でも、確かに問題がある。それは、一戸建てだからというわけではない。フランスの都市部に住んで、一生集合住宅(アパルトマンというとカッコいいですが)に暮らす人にとっては一戸建てはよけい寂しいかもしれませんが、一戸建てに慣れている人にはそれ自体が問題ではない。何が問題かというと・・・年寄りばかりが住人だと、話題は当然、何丁目の誰さんが先週亡くなった、今度は何丁目の誰さんが危ないらしい・・・こうした話題ばかりになってしまうそうです。これは、一戸建てだろうが、集合住宅だろうが同じなのではないでしょうか。何階の誰さんが亡くなった、次は何階の誰さんらしい・・・

そこで、アメリカではこうした街に若い人にも住んでもらえるよう、企業誘致をしたりしているそうです。一方、フランスの場合、集合住宅が街の中心にできれば、外に出ればいろいろな刺激もあり、話題も広がるでしょうから、問題は多少解決されるのかもしれないですね。こうしたお年寄りの集合住宅、すでに建設が始まっていて、その第1号がこの5月にAigues-Vivesという街に誕生するそうです。住人の反応やいかに。

また外出時の不便さを解消する事も大切ですね。何しろ足腰も弱るでしょうし、階段ばかりの街では、出歩くのも億劫になってしまう。今のパリは、何かと不便ですよね。しかしフランスでは、幸いなことに、2005年2月に成立した条例で、2015年までに身障者にとって住みよい街づくりを各自治体が行なうことになっているそうで、その施策はお年寄りにとっても嬉しいサポートになりそうです。

集合住宅に住み、同じ世代の人々と暮らす。医療を中心にサポート体制も整う。そして、できれば周囲には世代を超えて人々が暮らす活気ある街並みがある・・・キーワードは、「連帯」(Solidarite)だそうです。

2040年にはフランス国内の75歳以上のお年寄りが1,000万人になり、その内200万人がアルツハイマーを患っているだろうと予測されているそうです。人生の最終章をどこでどのように書くのか。また、今後は男性の寿命が延びると予想されていて、カップルでいる期間が良かれ悪しかれ長くなる。終焉は、誰とどこで・・・その社会的サポートは・・・そして、日本ではどういう社会が待っているのでしょうか・・・

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黄色いアリは、いなかった!?

2008-03-11 02:04:48 | パリ
かつて、日本人をこう呼んだフランスの政治家がいました。

「日本人は黄色いアリ」
「日本人はウサギ小屋のような小さなアパートに住み、2時間もかけて通勤している」
「黄色いチビ」
「日本人はアリ。何度殺しても出てくるアリ」
「日本は規則を守らず世界征服を企む」

今から20年ほど前の発言です。出る杭は打たれるの譬えどおり、経済が成長を続け、ましてバブル、世界の不動産を買い漁ったりしていた頃ですから、黄禍論が出ていたのでしょうね。

しかし、それにしても、言うも言ったり。ウサギ小屋に住む黄色いアリ・・・これがフランス人女性の見る日本人像だそうですよ。そう、フランス人女性、この発言は、1991年5月から翌年4月まで、1年間だけ首相をつとめたクレッソン女史(Edith Cresson)の発言です。フランス初の女性首相。公式な場での発言、非公式なもの、外国メディアとのインタビューでの発言・・・いずれにせよ、首相在任中も含めてこうした発言をしたそうです。しかも、所属は極右政党ではなく、社会党。ミッテラン政権下で首相を務めています。農民のデモと地方選挙での敗北で、1年足らずで辞任に追い込まれていますが、全く歯に衣着せぬ発言が多かったのでしょうね。

こうした発言に、日本政府はもちろん抗議したのですが、一切の謝罪なし。ただし、嫌いなのは日本人だけでなく、アングロ=サクソン嫌いでも有名だったようで、「イギリス男はみんなゲイだ」と言ったとか。これに対して、イギリスのタブロイド紙は、「イギリス男に振られたからだろう」と言ったそうです。さすが、ユーモアと皮肉の国のメディアですね。日本も、生真面目に抗議するより、日本がアリならフランスはキリギリス、今に困っても助けませんよ、くらい言っておけばよかったのかもしれませんね。

そうした背景があり(?)、日本人としてはぜひ見なくてはと出かけたのが、le Palais de la decouverte(パレ・ドゥ・ラ・デクヴェルト)でやっているアリに関する特別展。


地球上に10億の10億倍いるというアリと、10億の2,400億倍いるというシロアリを紹介しています。ただ、社会性昆虫ということでアリ(une fourmi)とシロアリ(un termite)は似ているといえば似ているかもしれませんが(特に日本語では同じくアリとつく名前ですから)、実際は全く別の仲間。アリはハチ目に属し、シロアリはゴキブリ目。しかし、フランスでも同じ仲間のように思われているのかもしれませんね、一緒に紹介されています。それも、発見パレスなんていうきちんとした博物館でやる展覧会でも。いかにも、細かいことにこだわらないフランスらしいですね(日本が真面目すぎるという声もありますが)。

館内は、実際にアリの巣の中を歩くような狭い迷路になっていて、所々で映像によるアリの紹介がおこなわれています。


また、広くなったところでは、パネルや映像、そして実際に生きているアリも含めて、さまざまなアリの生態を紹介しています。


そこで見つけた、アリの分布図。

アリとシロアリの主な種類ごとに用意されたボタンを押すと、その種目が分布している地域にランプが灯るようになっています。しかし、いくつかあるアリのボタンをいくら押しても、日本のところにランプが点かない・・・故障でしょうか。ところがシロアリの1種目を押すと見事に点灯。ということは、このイベントでは日本にアリはいない! と見做しているのでしょうか。黄色いアリ発言から20年近く経過して、フランスはついに日本人アリ論を引っ込めた!・・・なんて訳ないでしょうね。単に細かい点にこだわらないだけでしょう、きっと。

館内の特別展は、他にもいくつかあり、そのひとつが地震と津波に関するもの。地震と津波・・・その対策は、やはり日本が進んでいるようです。

地震の速報と津波警報の事例をNHKの映像を使って紹介していました。それに、津波はフランス語でも“tsunami”

その語源を日本語を挟みながら説明しています(パネルの間が空いているのは、いい加減な取り付けなのではなく、地震・津波による被害を表現しているようです。フランス的な凝り方ですね)。また、地震の揺れを体験してもらう施設もあるのですが、まるで遊園地。実際の家のようなつくりにはなっていないので、子どもたちもただ楽しんでいるだけのようでした。

アリ、そして地震・津波。日本とフランス、思わぬところでもつながりがあるようです。


“le Palais de la decouverte ”
グラン・パレの裏側、入り口はAvenue Franklin D.Roosevelt側
入場=7ユーロ

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詩人に10回目の春。

2008-03-10 02:44:11 | パリ
このタイトルから、どんな内容か、想像つきますか? 詩人て、誰? どうして10回目の春?

“Le Printemps des Poetes”・・・「詩人たちの春」という文化イベントが3日から16日まで各地で行なわれています。このイベント、今年でちょうど10年目、というわけです。


(イベントのプログラムです)

1999年に始められたイベントで、最近日本でも行われている“La Fete de la Musique”(音楽のお祭り:こちらは1980年から)の「詩」版と見做していいようなイベントです。詩をもっと身近に、普段の暮らしに詩を! そんな願いで始められたそうですが、世話人のJean-Pierre Simeon(ジャン=ピエール・シメオン:1950年生まれ、数多くの賞を受賞している詩人)によると、詩のイベントなど最初は誰もまともに取り合ってくれなかった。どうして詩のイベントを、それも一般の人を対象に・・・詩はごく一部の愛好者に支持されているもので、日常生活からは消え去ってしまったもの。こんなふうにフランスでも思われていたそうです。

そこで、このイベントの目的は、エリートにだけ愛好されているような詩のイメージをぶち壊せ! 現実の生活、日常の生活に詩は生きていることを理解してもらおう!

こうした目的を達成するために、まずは、詩との出会い、詩人との出会いの場を! 多くの街で、その街に住む詩人が朗読を行い、詩に触れる機会を提供する。そこでは、単に朗読を聴くだけではなく、詩人と直接話す機会も設ける。

さらに、他の分野とのタイアップとして、郵便局や国鉄の駅、書店などで、詩の印刷されたリーフレットなどを配布する。また、公立図書館では、作品の展示なども。

(トロカデロにある市立図書館では、子供向け作品の展示を)

そして、恒例になっている、メトロ・サン・ジェルマン・デ・プレ駅での詩の投影を期間を延長して行なう・・・

(4月中旬まで、丸天井に詩の投影が行なわれています)

(プラットフォームには詩の作品が展示されていますが、その中には俳句の作品集も)

こうしたイベントが、今年は、フランス全土で1,400、その内400あまりがパリとその近郊で行われています。そのひとつ、6日に行なわれた朗読会に行ってきました。

会場は、ご存知の方も多い6区にあるアリアンス・フランセーズ。実はこの語学学校の地下には立派なホールがあります。

160~170人収容できるのですが、この夜は三分の一くらいの入りでした。しかも、聴衆はほとんどが中高年。詩人たちの意気込みは分かりますが、これが実態なのかもしれないですね。

まずは、去年Le Prix de la Vocation(ヴォカシオン賞)を受賞した新進気鋭の詩人・Vincent Calvetによる自作の詩の朗読。いかにも芸術家といった雰囲気を持った詩人で、手書き原稿の詩を朗読。詩といっても長いです。A4サイズの紙15枚ほど。朗読に10分ほどかかりました。はじめに編集者がごく簡単な紹介をしただけで、読み終わると拍手とともに壇上から降りて、お役ごめん。

つぎに登壇したのが三人の詩人たち。やはり編集者から簡単な紹介があり、後はそれぞれが自作の朗読。
・Mikael Haudchamp:1975年生まれ。2002年に初の詩集を出版。
・Jean-Yves Massonn:1962年生まれ。翻訳、編集も行ない、ソルボンヌの教授でもある。多くの詩集を出版。
・Jean-Claude Dubois:1954年生まれ。1988年に詩の賞を受賞。
編集者が紹介したように、三人の作品にはそれぞれに特徴があるようですが、それぞれの人となりにも個性が・・・

(左端、立っているのは紹介担当の編集者)

バッハやシューベルトなどの曲に喚起されて書いた詩なので、まずは、シューベルトの曲を聴いてもらってから朗読をしたい、では音楽を・・・30秒、1分・・・音楽が流れてこない。2分・・・さすがに係りの女性が、機械の調子がよくないので、まずは朗読を先にやってもらえませんか。いかにも大学教授といったイメージの詩人、にっこりと微笑んで、ノン! 事前に3回もテストをしたのだから、大丈夫なはず・・・さらに30秒。やっと曲が流れてきた。数分聞いた後、そのイメージで書かれた詩の朗読。長い詩を二編朗読。

つぎに若手の詩人。こうした席で読むのはあまり経験がなく、しかも上がりやすいので、とはじめに言っていたように、朗読はちょっと早口。詩集を持たない手は、汗ばむのか、ズボンの膝のところを幾度となく擦っている。長編の詩、時間の関係でそのいくつかのパートを朗読。

もうひとりは、最近はあまり出版していないのか、20年ほど前の作品なので、自分で読み返しても恥ずかしいとかいいながら、短い詩を朗読。一作読み終えると、次に読む作品をページを繰りながらその場で探しては、朗読。

全部で四人の詩人の自作朗読、合わせて1時間ちょっと。拍手とともにお開きでした。

詩には音楽としての側面もあるのでしょう。読むだけでなく、聴く。フランスでは、詩の朗読会が書店などでもよく行なわれています。それを大規模にして、より多くの人に詩を聴く機会を・・・プログラムによると、ジャズ演奏とのコラボレーションなんていうのもあります。また聴きに行ってみたいと思っています。「詩人たちの春」、日本でも駐日フランス大使館や日仏学院・学館、アリアンス・フランセーズなどで始めているようですが、詩を聴くチャンスが広がってくると良いですね。それも、フランス語だけではなく、日本語の詩を聴く機会も!

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公約は、口に苦し。

2008-03-09 02:35:24 | 自然・環境・健康
・・・いきなり、ちょっと変ですね。「良薬は、口に苦し」ですよね。それが、公約・・・そう、9日と16日はフランスでは統一地方選挙。区とか、市、県などの首長や議員を選ぶ選挙ですから、生活に身近な話題が多く取り上げられています。でも、当選後は、実際どのくらいの公約が実施されることになるのやら・・・つい日本の経験からそう思ってしまうのですが、こうした点は、フランスでも同じような傾向にあるようです。


2-3日付のル・モンド紙です。「環境」が首長たちの間で引っ張りだこ・・・公約に環境を取り上げる人たちが多いようです。それだけ有権者の間で関心が高いということなのでしょうね。温室ガス効果による地球の温暖化など、環境はよく地球規模で語られますが、実は一人ひとりが身近なところで工夫し、改善していくことが大切な問題でもありますよね。そして、地域自治体でも。

特にフランスの場合は、1982年と83年の地方分権に関する法律で、国民の日常生活に関してはかなりの施策が自治体に移管されたそうで、それだけに地方選挙では暮らしに直結した環境保護が大きなテーマになっているようです。そうした背景があるため、以前は環境といえば「緑の党」が力を入れて主張していた分野ですが、今では左右を問わずどの党の候補も環境問題について公約に掲げている・・・

ただし、環境は今回の選挙で突然脚光を浴びているわけではなく、自治体によってはすでに以前からかなり力を入れて取り組んできていたようです。最も積極的なのが、北部の工業都市・リールと、パリの南西、お城で有名なアンジェのニ都市だそうです。持続的成長をうたった「アジェンダ21」を90年代末にすでに採択し、環境問題への取組みを積極的に行なってきているとか。それに続いて、パリやリヨンといった大都市。排出ガス規制や省エネ、公共交通機関の整備などを行なってきています。路面電車(トラム)の再登場や整備もこの流れの中にあり、また公共のレンタサイクルも各地で実施に移されています。西部の町・ナントでは、市民の移動の実に41%が公共交通機関を利用してのものだそうで、全国平均のおよそ倍になっているとか。マイ・カー利用が減っているようです。

また、水質の保全、土地を汚染から守る、有機栽培による農業など、環境に直結した取組みも各地で行なわれているそうです。電力では、ごく最近話題になったペルピニャン。将来的に使用電力全てを風力と太陽光によるエネルギーでまかなうと発表しています。そこまで徹底していないまでも、ソーラーパネルを取り付ける際の補助などを検討しているところは多いようで、エコ・カルティエなどと呼ばれるモデル地域が各地で生まれつつあるようです。

こうして、各地の自治体では、さまざまな取組みが実際に行なわれているようです。しかし、それでも今回の選挙での環境に関する公約は、数も多く、またその内容も大規模、大胆なものが多いそうです。実際、どこまでが本気で、どこからが選挙用の空手形なのか見極める必要がある・・・環境団体や市民グループは、選挙後の監視を強めていきたいそうです。選挙公約は、どこまで本気なのか・・・どこの国でも、同じようですね。

首長や議員たちは当選してしまうと、まだ社会がこうした施策を受け入れる準備ができていないと言っては、先延ばしにすることがよくあるそうです。一方、市民は、政治家は公約を実行しないと非難する。こうしたネガティヴなキャッチボールはやめて、一緒に力を合わせ、地球の環境を守るべきだ、という声もあがっているそうです。その通りですね!


モンマルトルから見たパリの街並みですが、そのうち記事の写真のように多くの建物の屋根にソーラーパネルが取り付けられることになるのかもしれません。一面、ソーラーパネルの海・・・パリの外観もずいぶん変わってしまうでしょう。しかし、パリの空の下のイメージが変わってしまうのは残念ですが、これも私たちの地球、そして環境を将来にしっかり残すためですから、我慢するしかないですね。それほど環境問題は深刻になっている、ということなのでしょう。遅すぎたと後悔しないためにも、一人ひとりの取組みが今、求められているようです(パンフレットにあるような文章になってしまいました。でも本当にそう思いませんか)。

さて、9日の第1回投票と16日の決戦投票、その結果やいかに。どの党が伸張し、誰が市長に当選するのでしょうか。見守りましょう。

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女性の地位は、向上しましたか。問題はないですか。

2008-03-08 02:44:07 | パリ
3月8日は、国連の定める「国際婦人デー」。日本での取り組み、あるいは、メディアでの取り上げ方はどうですか。日本にいた時には、あまり気がつきませんでした。日本では、女性の地位は十分に改善されているということでしょうか。それとも、諦めなのか、今以上のことを望まないということなのか・・・フランスでは、まだまだ大きな課題になっているようです。


5日から、「国際婦人デー」を記念して、偉人を祭るパンテオンの正面に9人の女性の肖像画が掲げられています。いずれも、女性の解放、地位向上に貢献した人たちです。どんな女性たちでしょうか・・・9人を生まれた年代順に簡単にご紹介しましょう。

・Olympe de Gouges(1748-1793)政治家。フランス最初のフェミニストの一人。『女性と市民の権利宣言』などを著すも、断頭台の露と消える。

・Solitude(1772-1802)フランス領グアドループでの奴隷解放運動のヒロイン。1794年にいったん廃止された奴隷制度がナポレオン1世によって1802年に復活。それに反対して立ち上がった人々を代表する女性。出産の翌日、処刑される。

・George Sand(1804-1876)作家。離婚の自由と男女平等を主張し、自らも実践。ミュッセやショパンとの恋愛が有名。

・Maria Deraismes(1828-1894)政治家。フェミニズムのパイオニアで象徴的存在。女性の権利、子どもの権利、民主主義、男女の別のない「人権」を主張。

・Louise Michel(1830-1905)政治家。パリ・コミューンに参加した、戦う女性活動家。



・Marie Curie(1867-1934)科学者。ノーベル賞を二度受賞。物理学賞を1903年に、化学賞を1911年に。

・Colette(1873-1954)作家。社会的制約を拒否した自由な精神の持ち主。性の解放も主張。レジオン・ドヌール勲章を受賞。国葬に。

・Simone de Beauvoir(1908-1986)作家、哲学者。『第二の性』などを著し、女性解放の先頭に。「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」はあまりに有名。

・Charlotte Beldo(1913-1985)レジスタンス。抵抗運動に加わるも、捕まりアウシュビッツへ。そこを生き延びた49人の女性の一人。戦後は執筆活動も。

・・・信じる道に命を捧げた女性たちといってもよさそうですね。女性解放、そして何よりも人間としての尊厳を求めて立ち上がった女性たち・・・そして、今日の社会がある。

ところで、フランス男性は、女性に優しい・・・表面的にはそう見えますが、制度的には男性中心が根強く残っている社会のようです。女性に参政権が認められたのも、ようやく第二次大戦後。女性に門戸を開放したのが、やっと1972年という名門校まであります。その名門校とは、エコール・ポリテクニク。日本では「理工科大学校」とも訳されている、グランゼコールの一つで、文字どおり理科系の最高学府。1794年、フランス革命の混乱時に誕生したこの学校は、ずっと男子だけを入学させ、女子禁制でした。1972年(昭和47年)にはじめて8名の女子学生の入学を認めたそうです。

その翌年に入学した女性が、このたび、この男性中心の伝統を持つ名門校の理事長(日本風に言えば、たぶん学長でしょう)に女性としてはじめて就任することになったそうです。


7日付のフィガロ紙です。たまたまとはいえ、「国際婦人デー」を前に、重要なポストが女性に解放されたと伝えています。その女性は、Marion Guillou、53歳。エコール・ポリテクニク卒業後、農産加工品の安全性を中心とした専門家として、政府内で、研究機関で手腕を発揮するとともに、狂牛病発生時には駐英フランス大使館に出向しその対策に尽力したそうです。役人当時は、社会党政権になろうと保守政権になろうと担当大臣とうまく協調して、専門分野の行政をしっかり行なったそうですし、また、国立農業研究機構の理事長のときには、組織内の対立を時間をかけて解決し、研究機構が持続的に発展できるような体制作りに成功したとか。こうした経験が、フランス国内の大学だけで育ったほかの研究者にない強みなっているそうです。何しろ、学際、産学協働、国際競争の時代ですから。本人は、たまたま世代交代の時期にうまく当たっただけと謙遜しているそうです。

もうひとつ、「国際婦人デー」関連の話題が、7日のディレクト・マタン・プリュス紙に出ています。


「沈黙との戦い」・・・フランスの大都市郊外には多くの移民が暮らしています。中心は旧植民地から移り住んだ人々。そこでは、出身地の風習、しきたりが今でも生きていて、女性にとってはいっそう生き難い環境になっているそうです。そうしたエリアでの女性の地位向上、問題解決に取り組む団体も多くありますが、そのひとつ“Ni putes ni soumises”(娼婦でもなく服従でもなく)の代表を長年務めて、現在フィヨン内閣の都市政策担当閣外相になっているのが、本人もアルジェリア移民二世のファデラ・アマラ女史(写真中央)。親が決める結婚の強制、男性からの暴力、例えば、態度が気に入らないというだけで交際相手に殺された女性、結婚を断ったところ相手の男性にガソリンをかけられ火をつけられた女性・・・これらが21世紀のフランスで実際に起きている事件です。女性を取り巻く環境の改善を! アマラ閣外相の取組みが続きます。


「国際婦人デー」の8日、300ものカフェ・レストランでは女性客にバラの花をプレゼントするそうです。やっぱりフランスはおしゃれですね。でも、女性を巡る問題は、上記をはじめまだ解決していないものが多くあるようです。どちらを見るかで、フランスにおける女性の立場も、羨ましくなったり、気の毒に思えたり・・・くどくて恐縮ですが、良いところもあれば、嫌なところもある。さて、日本ではどうでしょうか。女性の日は、3月3日のお雛様でおしまいでしょうか。子ども中心の社会。でも、大人の女性にとって、生きやすい社会ですか。生きがいの持てる社会ですか。幸せを実感できる社会ですか・・・

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