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伝統を守るために、新しくなる。

2008-02-13 04:55:31 | 美術・音楽
ルーヴル美術館が、またさらに大きくなる―――。ニューヨークのメトロポリタン美術館などとともに、世界でも最大規模の美術館と言われているルーヴルが、展示スペースの拡大やいろいろな改修を計画しているそうです。


5日のフィガロ紙です。去年一年間で、フランスの国立美術館を全て合計すると2,380万人の入場があったそうです。5年前には1.500万人。ここ5年で50%以上も増えたことになります。そうした増加する入場者数の中でも、突出して多くの観客を集めているのがルーヴル美術館。去年は830万人の入場があったそうで、国立美術館全体の三分の一以上を占めています。収蔵品のリストはもちろんですが、入場者数を見ても、フランスで、そして世界で有数の美術館になっています。

ナポレオンの外交官だったヴィヴィアン・ドゥノンによって創設されたのが1793年、そして一般公開が1801年からという長い歴史を誇っていますが、常により新しく、より良きものへと、変革を遂げています。アンリ・ロワレット館長曰くは、決して完成されることはないとルーヴル美術館の遺伝子には書き込まれているのだそうです。近いところでは、1989年、I・M・ペイ設計によるガラスのピラミッド、また2006年からはアメリカ・アトランタのハイ・ミュージアムに作品を貸し出し、その対価として約9億円近い寄付を引き出しています。2010年には、フランス北部・ランスに別館を開設予定。その設計は、日本人設計事務所SANAAが担当しています。そして、賛否両論かまびすしかったアラブ首長国連邦のアブダビにできる美術館へのルーヴル美術館の名の使用許可(30年間、作品は15年間貸し出す)。しかし、この「砂漠のルーヴル」とも別名言われる美術館への協力のお陰で、ルーヴル美術館は4億ユーロ(約640億円)を手にすることができ、それを元手にさまざまな改修、増築などを行うそうです。


独立行政法人になり、入場収入を独自に管理できるようになったとはいえ、その代わりに国の補助金は削減された。そこで、独自に資金を集め、自己革新していく・・・まさに自己変革の気概が遺伝子として引き継がれているようです。そして、こうした革新あればこそ、常に世界のトップ美術館でいられるのかもしれないですね。伝統を守るだけでは、いつか飽きられてしまう。古きを守りながらも、常に新しく・・・なかなか、できそうで、できないことですね。


10を超えるプロジェクトを中面で詳しく紹介しています。例えば・・・詰めかける多くの入場者に対応できるようガラスのピラミッドの一部を改修、チュイルリー公園の改修、フロール翼やシュリー翼に新たな展示スペースを開設、ヴィスコンティ宮にイスラム美術コーナーを開設・・・これらを実施するのに2億5,000万ユーロ(約400億円)の予算をかけるそうです。上にご紹介した外国美術館からの寄付以外にも、メセナを中心に国内外からの寄付を募るとともに、基金設立の準備もしているようです。

今年前半には、版画家としてのヴァン・ダイク、バッチョ・バンディネッリ(Baccio Bandinelli)のデッサンと彫刻、バブリエル・ドゥ・サン=トバン(Gabriel de Saint-Aubin)、ジャン・ファーブル(Jean Fabre)などの企画展が予定されています。こうした企画展を増やし、また現代美術も展示することにより、若い観客の入場も増やすことができたと館長が述べていますが、企画の中身にも改革が行なわれてきたのですね。


伝統に胡坐をかかず、新しさを加えていく。満足することなく、常により良きものを希求していく。それでいて、伝統からは逸脱しない。綱渡りのようですが、それをうまく乗り切っているからこそ、常に多くの美術愛好家、観光客を惹きつける「ルーヴル美術館」であり続けることができるのでしょうね。拍手!

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コメント
 
 
 
進化する美術館 (Bon)
2008-02-13 13:53:47
さすがにルーブル、名前の使用許可だけで、640億円ですか・・・・。
国の補助金が削除されても、資金集めには事欠かないということでしょうか。
『伝統を守るだけでは、いつか飽きられてしまう。古きを守りながらも、常に新しく』
何事にも当てはまることですね。
進化し続けるルーブル美術館、次回訪れるのが楽しみになりました。
それに引き換え、我が国日本の美術館ではどのように資金集めをしているのか心配になってきました。

 
 
 
変化 (take)
2008-02-13 16:50:04
Bonさん

変化をどう捉えるか、難しいですよね。伝統を破壊すると捉えるか、より良くなる進化と捉えるか・・・伝統芸術、伝統芸能、伝統のあるチーム・・・特に伝統を大切にする日本では、いろいろな所で確執があるのかもしれないですね。
 
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