活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

タスマニアの香り運ぶ(味な人たち)

2009-09-02 03:21:50 | 活字の海(新聞記事編)
※ 樹齢100年以上でようやく花開くという、レザーウッドの花
                (ヴァイアンドカンパニーのHPより)


2009年8月18日(火) 毎日新聞夕刊 17面 夕刊ワイド欄より
筆者:門上武司(食雑誌「あまから手帳」編集主幹)
取り上げられた方:唄淳二さん(インポーター)
サブタイトル:タスマニアの香り運ぶ


タスマニアと聞いて。
皆さんは何を連想するだろうか?

絶滅危惧種としての、タスマニアデビル。
ボンバーマンのワラビー。
最後の純潔アポリジニであった、故ツルガニニさん。
或いは、映画「タスマニア物語」(但し、未見)。


僕の知識のたな卸しは、これで終わりである。


そのタスマニアが今。
食材の輸入先として熱い視線を浴びているとは。
そして、その食材が京料理の世界にまで活用され出してきていたとは。

今回のコラムを読むまで、知る由も無かった。

コラムで取り上げていたのは、インポーターの唄淳二さん(ヴァイアンド
カンパニー
)が取り扱うマウンテンペッパー・ベリーという胡椒。

どのような風味を持つものかといえば。
コラムの記述によると、

「口に含んだ瞬間は果実の甘みを感じ、後からさわやかな辛味が
 追いかけてくる。

 とはいえ辛みは柔らかく、前菜からメーンまで幅広く使うことが
 可能なのだ」

ということである。

なんだか、読んでいるだけでも美味しそうで、食してみたくなる
ではないか。

とはいえ。
僕のペッパーに対するイメージは、精々がシチュー等への味付けや、
ステーキ、目玉焼きやウインナーへの仕上げといったものである。
(ステーキは、多分に見得である(笑))

隠し味に使うことは、スープその他の煮物等でもあるのは判るが、
茶懐石を出す割烹店でも使われだしているとは!


このペッパー以外にも。
タスマニアには、様々なまだまだ日本では知られざる食材が
溢れているらしい。

その中でも極め付きは、レザーウッドの蜂蜜である。

これも、レザーウッドという言葉すら僕は知らなかったが。
樹齢70~100年を経て、初めて花を咲かせる樹木らしい。
もう究極の遅咲き(笑)である。

これくらいのスパンで育つ樹木。
果たして絶滅の危険は無いのか?と心配になるが、中には樹齢
1000年を越えて尚、花を咲かせるものも有るとか。

その蜂蜜がまた。
「エレガントでハーブのような甘みがある」として、今人気を
博し始めているらしい。

 ヴァイアンドカンパニーのHPで売られているものでも
140gで945円(税込)
もするので、なかなかおいそれと
食べることも出来ないけれど、それでも一度何らかの機会に
この蜂蜜を使った料理は味わってみたいものだ、と思う。


茶懐石に代表されるような、伝統料理。
ただ。
伝統の味を守る、という意味は、大きく二つに分けられると思う。

一つは、何時の時代にも変わらぬ味を希求するということ。

そして。
もう一つは、どのような食材を用いようとも、その料理に対する
ポリシーを一環して貫いていくということ。

前者の、何時の時代にも変わらぬ味を。
という考え方は、食材の変化。人々の嗜好の変化。その他、様々な
要因を考えれば、事実上不可能に近いと思う。

いくら、雅な京料理の伝統を踏襲するといっても。
時代背景を考えれば、今の世に平安の当時の食材と調理方法を固守
した調理をしたとしても、それが受け入れられるとは思い難い。

むしろ。
その料理に対するスタンスに重きを置いて、どのような食材を
用いようが、食材をどのように扱い、どう調理するのかという
考え方を遵守していくという方が、よほど伝統を守るという
本来の趣旨に沿うものとなるだろう。


その意味では。
正しく、唄淳二さんが紹介する様々な食材を、どのように料理に
取り入れていくかということは、伝統を守っていくということと
少しも矛盾はしないのだろう。

決して、奇を衒(てら)う訳ではなく。
それでいて、従来の手法に安閑と甘んじる訳でもない。

食材をどのように扱い、同調理していくのかという考え方は、
しっかりと伝統に則(のっと)りつつ。
その時代にもたらされた食材をフルに活用して、人々の嗜好に合致
した味を希求していく。


それこそが、真の意味で伝統を守る、ということであれば。

食材のインポーターである唄氏が、新たな食材を発見~紹介していく
ことこそが、時代に合致した料理を生み出すことに繋がる。

そして、そうした食材をそれぞれの料理文化に沿った形で、如何に
取り入れ、調理していくのかということが、料理人に問われることと
なる。

当初は、割烹でもタスマニアの香辛料が使われだしたという記述を
読んで驚いたけれども、こう考えてみると何も可笑しな話でも無い。

実(げ)に、料理というものの奥は深い、ということだろう。


(この稿、了)


そうした考え方を、よく表わしていると思われる一冊がこれ。
殿下の料理番 皇太子ご夫妻にお仕えして―伝統と新風 皇室のいま (小学館文庫)
渡辺 誠
小学館

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与えられた食材をどう活用していくのか、という点においては、
その右に出るものがいないと思われる一冊。
創意工夫の、ある意味究極のスタイルが、笑いのスパイスとともに、
ここにはある。
面白南極料理人 (新潮文庫)
西村 淳
新潮社

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2 コメント

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Unknown (シャドー81)
2009-09-03 23:27:36
タスマニアと言えば、「蕎麦」ですかね。
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Unknown (MOLTA)
2009-09-05 03:23:05
蕎麦?とびっくりして検索すると、ほんとだあ!

タスマニアで蕎麦の栽培が定着して約20年。
日本と四季が逆なおかげで、夏にも新蕎麦の香りと味わいを楽しむことが出来るようになったという記事に行き着きました。

う~ん。世の中、奥が深い。
シャドー81さんの博識に脱帽です。
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