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筆者:木村葉子 毎日新聞 平成21年4月19日(日) 18面より
サブタイトル:「本の探偵」に依頼
読んだ年■ストーリー■表紙…手がかりもとに解明
これぞ、天職!
この記事を読んで、素直にそう思った。
リファレンサー。
日本語に約すと司書だが、この記事ではもっと、ずっと素晴らしい訳語を
充てている。
それは…
「本の探偵」
大阪府立国際児童文学館にいるリファレンサーの方を、取り上げた記事。
ここでは、訪問者の様々なリクエストに応じて、本探しの手伝いをしてくれる
リファレンサーがいる。
ただ、その本探しが並ではない。
通常なら、図書館司書としては、例えば70年代日本における文芸批評とか、
プロ野球の名勝負を扱ったもの、といったようなキーワードを提示されて、
本を抽出し、リストを提示するといった業務が主体となろう。
本の探偵は、そうした漠然とした問いかけではなく、特定の本を探している
のだけれど、タイトルも作者もわからない、という状況から、僅かなキー
ワードを頼りにその本を探し出してくれる。
一体、今現在出版されている本は何冊に及ぶのか。
その想像もつかない海から、一枚の貝を探し出すような作業を行ってくれる。
それが、本の探偵なのだ。
この記事で紹介された事例で感動したのは、以下のリクエスト。
「ラクダがぼんやり立っています」
たったこれだけのキーワードと、探している人が子供の時に読んでもらった
という情報から年代を推定し、見事に1940年発行の「動物園」
(大日本愛国絵本会(なんだか凄い名前の出版社だなぁ))を探し当て、
提示したと言うのだから、もう脱帽どころか、お腹を上にして寝転び、
尻尾を振りながら服従の意を示すよう位に感服しまくってしまうのだ。
う~ん。
こうした仕事って、いいなぁ。
やってみたいなぁ。
でも、読書傾向が偏向しているから、難しいだろうなぁ。
まあ本の探偵さんが、全ての蔵書を読んでいる訳でもないだろうから、
サーチング能力を磨けば大丈夫かなぁ。
いずれにせよ、こんな風に本に囲まれて、本探しを手伝って喜ばれる。
こんなにも素晴らしい仕事は、ちょっち思いつかない。
何十年も思い続けた一冊に再会し、涙ぐむ人もいるという、として、
この記事は締めくくられるが、むべなるかな、といったところである。
家の蔵書を見てみても、本を一冊ピックアップするだけで、それを
買ったシチュエーションやお店の様子、読んでいた頃に起こった
出来事、その当時の悩みや喜び等が、湧水のようにふつふつと
こみ上げてくるのだから。
ましてや、探しても探しきれなかった本(誰しも、一冊や二冊は
そうした本があるだろう)が見つかった時の喜びは、思い入れが
深ければ深いほど、感極まるものがあるというものだ。
そういえば、僕の大好きなS・キングにも、図書館に関する話が
いくつか出てくる。
有名なのは、「刑務所のリタ・ヘイワース」。
このタイトルに首を傾げても、映画「ショーシャンクの空に」の
原作といえば、おお!と手を打つ方も多いだろう。
映画もとても良かったが、原作も負けず劣らずに素晴らしかった。
読まれた、あるいは観られた方ならご記憶にあると思うが、
主人公は服役中に、刑務所内の図書室の係りに従事する。
そこで彼は、もう何年も蔵書の入れ替えも追加も無く、打ち捨て
られていたような、その図書室に少しずつ手を入れ、囚人達のレベルに
応じて、読みやすく、かつ関心を持ちやすい本をこつこつと集め、
貸すことで彼らの知的好奇心を徐々に育てていく。
その図書館を中心に、それまで荒んでいた囚人達の心が、少しずつ
ほぐれていく。そんな心に残るシーンがあった。
勿論キングのことだから、それで目出度しなんて話で終わる筈も
無いのだが。
#この作品、映画も原作も、とっておきのレビューネタに残して
あるのである。いつか、満を持して登場させる積りでいる。
それ以外には、「図書館警察」という本もキングは書いていた。
こちらは、司書とは少し異なるが、図書館から本を借りっぱなしの
子供のところに、或る夜、図書館警察が捕まえにやってくる、と
いうお話。
こちらはこちらで、名作なのだ。
こんなコラムを書いていると…。
一念発起して、今から転職してみようかと思ったが、残念ながら、
この図書館。
橋本府政の緊縮財政方針を受けて、今年度末に閉館するとか。
う~ん。やっと目指すべき仕事が見つかったというのに。
残念。と、嘆息する。
(この稿、了)
(付記)
ちなみに、ある図書館員の方の講演記録がある。
これがまた、滅法面白い。興味のある方は、ご一読を。
(付記×2)
読売新聞の書評欄では、本の探偵というコーナーがあって、読者からの
質問に応じて、本探しをしてくれることも発見。
読んでみると、探し手の方の思い入れがヒシヒシと伝わってきて、
こちらも実に面白い。
と、思ったのに、このコーナー。2008年度末で終わっていた。
いいコーナーだったのに、残念である。
ちなみに、原作はこちらに収録されている中篇。
サブタイトル:「本の探偵」に依頼
読んだ年■ストーリー■表紙…手がかりもとに解明
これぞ、天職!
この記事を読んで、素直にそう思った。
リファレンサー。
日本語に約すと司書だが、この記事ではもっと、ずっと素晴らしい訳語を
充てている。
それは…
「本の探偵」
大阪府立国際児童文学館にいるリファレンサーの方を、取り上げた記事。
ここでは、訪問者の様々なリクエストに応じて、本探しの手伝いをしてくれる
リファレンサーがいる。
ただ、その本探しが並ではない。
通常なら、図書館司書としては、例えば70年代日本における文芸批評とか、
プロ野球の名勝負を扱ったもの、といったようなキーワードを提示されて、
本を抽出し、リストを提示するといった業務が主体となろう。
本の探偵は、そうした漠然とした問いかけではなく、特定の本を探している
のだけれど、タイトルも作者もわからない、という状況から、僅かなキー
ワードを頼りにその本を探し出してくれる。
一体、今現在出版されている本は何冊に及ぶのか。
その想像もつかない海から、一枚の貝を探し出すような作業を行ってくれる。
それが、本の探偵なのだ。
この記事で紹介された事例で感動したのは、以下のリクエスト。
「ラクダがぼんやり立っています」
たったこれだけのキーワードと、探している人が子供の時に読んでもらった
という情報から年代を推定し、見事に1940年発行の「動物園」
(大日本愛国絵本会(なんだか凄い名前の出版社だなぁ))を探し当て、
提示したと言うのだから、もう脱帽どころか、お腹を上にして寝転び、
尻尾を振りながら服従の意を示すよう位に感服しまくってしまうのだ。
う~ん。
こうした仕事って、いいなぁ。
やってみたいなぁ。
でも、読書傾向が偏向しているから、難しいだろうなぁ。
まあ本の探偵さんが、全ての蔵書を読んでいる訳でもないだろうから、
サーチング能力を磨けば大丈夫かなぁ。
いずれにせよ、こんな風に本に囲まれて、本探しを手伝って喜ばれる。
こんなにも素晴らしい仕事は、ちょっち思いつかない。
何十年も思い続けた一冊に再会し、涙ぐむ人もいるという、として、
この記事は締めくくられるが、むべなるかな、といったところである。
家の蔵書を見てみても、本を一冊ピックアップするだけで、それを
買ったシチュエーションやお店の様子、読んでいた頃に起こった
出来事、その当時の悩みや喜び等が、湧水のようにふつふつと
こみ上げてくるのだから。
ましてや、探しても探しきれなかった本(誰しも、一冊や二冊は
そうした本があるだろう)が見つかった時の喜びは、思い入れが
深ければ深いほど、感極まるものがあるというものだ。
そういえば、僕の大好きなS・キングにも、図書館に関する話が
いくつか出てくる。
有名なのは、「刑務所のリタ・ヘイワース」。
このタイトルに首を傾げても、映画「ショーシャンクの空に」の
原作といえば、おお!と手を打つ方も多いだろう。
映画もとても良かったが、原作も負けず劣らずに素晴らしかった。
読まれた、あるいは観られた方ならご記憶にあると思うが、
主人公は服役中に、刑務所内の図書室の係りに従事する。
そこで彼は、もう何年も蔵書の入れ替えも追加も無く、打ち捨て
られていたような、その図書室に少しずつ手を入れ、囚人達のレベルに
応じて、読みやすく、かつ関心を持ちやすい本をこつこつと集め、
貸すことで彼らの知的好奇心を徐々に育てていく。
その図書館を中心に、それまで荒んでいた囚人達の心が、少しずつ
ほぐれていく。そんな心に残るシーンがあった。
勿論キングのことだから、それで目出度しなんて話で終わる筈も
無いのだが。
#この作品、映画も原作も、とっておきのレビューネタに残して
あるのである。いつか、満を持して登場させる積りでいる。
それ以外には、「図書館警察」という本もキングは書いていた。
こちらは、司書とは少し異なるが、図書館から本を借りっぱなしの
子供のところに、或る夜、図書館警察が捕まえにやってくる、と
いうお話。
こちらはこちらで、名作なのだ。
こんなコラムを書いていると…。
一念発起して、今から転職してみようかと思ったが、残念ながら、
この図書館。
橋本府政の緊縮財政方針を受けて、今年度末に閉館するとか。
う~ん。やっと目指すべき仕事が見つかったというのに。
残念。と、嘆息する。
(この稿、了)
(付記)
ちなみに、ある図書館員の方の講演記録がある。
これがまた、滅法面白い。興味のある方は、ご一読を。
(付記×2)
読売新聞の書評欄では、本の探偵というコーナーがあって、読者からの
質問に応じて、本探しをしてくれることも発見。
読んでみると、探し手の方の思い入れがヒシヒシと伝わってきて、
こちらも実に面白い。
と、思ったのに、このコーナー。2008年度末で終わっていた。
いいコーナーだったのに、残念である。
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ちなみに、原作はこちらに収録されている中篇。
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