活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

♪fly me to the hospital  MOLTAの事故顛末記(5)

2009-11-19 14:27:58 | バイクの海
■14日昼過ぎ(なおも、事故現場より)

やっとのことで、氏名等の一連の個人情報を言い終えた頃と前後して。
救急車が停止する気配があった。

ここは、病院だろうか?
あいにく、がちがちに固定されている身では、視界は救急車の天井しか
無く、確認しようもない。

なんだか、随分と騒がしい音がする。
この甲高い、空から降ってくるような音は…  

ヘリか!?
結局、ドクターヘリの手配が付いたということなんだろうか?

やがて、
「頭に気を付けろよ~!」
の怒号と共に救急車の後部扉が開き、ストレッチャーは青空の下へと
引き出された。

空が、高い。
とても澄んだ色をしている。

そんなことをじっくりと思う間もなく、ストレッチャーは運ばれて
ヘリの中へ。

ガタガタと揺れながらストレッチャーがヘリの座席に押し込められ、
固定される。
その振動からくる激痛に、目を開けることもままならない。

「ごめんね~。ヘリの中は狭いから。」

お姉さんの声がする。

いえいえ。
人間、立って半畳、寝て一畳、天下取っても二合半。
これだけのスペースが有れば、十分ですから。
ただ、この振動だけが辛いのですよ。はい。

そんな減らず口を叩く余裕すらなく歯を食いしばる僕に、
引っかかる言葉があった。

振動?

ヘリが飛んだら、一体この振動はどうなるのだろう?
どれほど揺れるんだ?
僕はそれに耐えられるのか!?

その想像は恐怖となって、僕の心を侵食する。

が、無論どうすることも出来ないうちに、やがて一際ローターの
音が高くなるや、ヘリはふわりと空に舞い上がった(らしい)。



飛行中は振動も騒音も少なく、思いの外快適だった。
横には、素敵な声のお姉さんもいる。

これで、ベッドに括り付けられ、顔は上しか向けられず、
目に入るのは天井のみという状況で無ければ、だが。


お姉さんの声が、降ってくる。

「痛いところはない?」

「はぃ ゼヒゼヒゼヒ  大丈夫  ゼヒゼヒゼヒ です ゼヒゼヒ
 ただ ゼヒゼヒゼヒ 息が  ゼヒゼヒ 出来ません ゼヒゼヒ…」

「そう。
 後10分もしないで着くからね。もう少し頑張ってね。」


ヘリの操縦士?と病院側が何か交信している声も聞こえてきたが、
何を話していたのかまでは、よくわからなかった。


やがて…。
ローターの音が変わると共に、再びヘリが大地に(実際には病院
屋上のヘリポートに、だが)繋がりを持った感覚が、背中越しに
伝わってきた。

ショックの無さは、流石である。
操縦士さんの技量に、多謝である。


改めて、ありがとう。
ドクターヘリの皆さん。
救急隊員の皆さん。
通報してくださった皆さん。
その他、全ての本件に関わった人への感謝に咽ぶ僕を乗せて、
ストレッチャーは病院内へと吸い込まれていった。



■14日 昼過ぎ(某県立医大病院より)

ER(救急措置室)にストレッチャーが固定される。
頭上におなじみのライトや沢山の人影、手が見える。

と。
ここでも、またおなじみの氏名等の確認だ。

この辺りから。
だんだん事故から何時間経ったのか、時間間隔が無くなって来た。

ふと気がつくと、ジャキジャキという音がする。
Oh!僕のカッターが、シャツが、ズボンが、パンツが。
鋏で切られていっている(らしい)。

あっという間に、僕は素っ裸。
身に着けているのは、口を覆う酸素吸入器のみ。

もう人間というより、実験体の気分である。
たまにだれかが気を利かせて毛布を体にかけてくれたりもするが、
あちこちから伸びている手によってしょっちゅうずらされるので
殆どがむき出しである(とほほぅ)。

何の目的かは良くわからないが、左右の太ももの付け根に注射される。
これが滅法痛くて、久しぶりに胸以外で呻き声を上げる。


そんな僕の反応はお構いなしに。

「では、ファースト…」

そんな声が聞こえてくるとともに、
色んな手が、色んな方向から伸びてきて、僕の体を触り出す。

頭部の損傷、無し。
目、耳、鼻、口からの出血、無し。

そんな声に混じって、「ここは痛くない?」の質問も混じり出す。

そして触診が右胸まで来た時に走った痛みによって、自分が傷ついて
いるのがどうやら右胸であることが明確になってくる。

肋骨の中ほどを触られると、とんでもなく痛いのだ。

後は、お腹、骨盤、大腿骨、OK。
両膝は擦過傷。右は重症。
ひざから下、足首も、足もOK。

「こりゃあ、肋骨が1~2本いったかなぁ?」

そんな先生の声を受けて、今度はレントゲンとCTスキャンを撮りに
再びストレッチャーは動き出す。


(この稿、なおも痛がりながら続く)


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2 コメント

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ER (宇宙ハンター55)
2009-11-19 21:41:57
そして、MOLTAは鳥になった。

ここまでくると、貴重な体験を自慢しているとしか思わなくなった。(笑)

>もう人間というより、実験体の気分である。

そう、あなたはモルモット。

MOLTAのMOLはモルモットのモル。
返信する
覚えていましたか (MOLTA)
2009-11-20 10:32:29
よくそんな裏話を覚えていましたね(笑)。

そう。確かに、僕はモルモットでした。

その影には、モルモットにさえなれなかった奴もいましたが(笑)。

返信する

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