活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

遠い目をして食べるカツ丼を味わえ!(大阪日本橋 こけし)

2009-06-29 00:07:26 | 胃袋の海
食べ物のお店選びについては、別に保守的な方ではない。

その手のコラムやネットの情報を鵜の目鷹の目で集めて、
日夜新規店舗の開拓に勤しむ程ではないが、時折目にする
「これは!?」と思ったお店の情報があると、いそいそと
出向いて自分の耳目(この場合舌目かな?)で味わって
みるのも好きである。

それでも。
時折、無性に回帰して食べたくなる、まるでホワイトホースの
ような味(※)というものが僕の中には有って。

その中の一つが、これ。
大阪 日本橋は「こけし」のカツ丼である。

 ※ 昔、ホワイトホースというスコッチ・ウイスキーの
   CMのキャッチコピーが、"結局、ここに帰ってくる"
   だった。今では知っている人も少ないと思われ。



恐らく、大阪エリアに在住で日本橋を徘徊するする趣味を
お持ち、あるいは持っていた方の何割か。
(どちらかといえば、昨今の日本橋フリークではなく、
 旧型に属する人に、より多く含有すると思われ)

あるいは、日本全都道府県に支部を持ち、日夜明治以降の
文明開化の象徴的食文化であるカツ丼好きが集う秘密結社
「全国カツ丼をこよなく愛しちゃうんだもんね連盟」会員の全て。
(なぜか突然、似非椎名誠風文章になってしまった。
 彼の書くこうしたくねくねとした?文章は、好みが分かれる
 ところだろうが、僕は大好きである)

は、ここまででピン!と来るであろう。
少なくとも、そのあたりに普通にあるカツ丼屋よりは、
かなり知名度が高いことは間違いないお店である。


初めて、このお店で食べたのは何時の頃か。
もう正確には思い出せない。
はっきりとしているのは、もう20年近くは優に経っている、
ということである。

爾来、ふとしたきっかけから自分の中でスイッチが入る都度、
味わいに行く。僕の中では、そんなお店である。


さて、昨日。
久しぶりにそのスイッチが入り、バイクを転がして日本橋へ。
昔は昼時ともなるとお店の前に長蛇の列ができていたが、
昨日は到着したのが午後1時頃ということもあってか、
すんなりと店内に入ることができた。

店内は、U字型のテーブル席が数列と、カウンターで構成
されている。

店内を見渡すと、ん? 結構空いているなあ。
勿論、座席の埋まっている率の方が遥かに高いのだが、
昔は土日と雖(いえど)も、この時間帯だとこんな様子
では無かったはずなんだけど…。

なんだか、久しぶりに地球に降り立って、自宅のある町に
帰ってきたのに、その様子が異なっていることに戸惑う
アムロの心境ではある。

まあ、日本橋界隈を徘徊する人種が入れ替わりを起こして
いる
ことは間違いないし、その中で食べ物の趣向も当然
変わってくるのだから、こうした現象もむべなるかなと
言ったところである。

以下に、昨今の人種の特徴を記す。

・その昔:家電店舗をラウンドしての値切り交渉を無上の喜び
     とし、食事もなるべく簡潔に、かつボリュームたっぷり。
     食事しながら情報交換できるような場所なら、尚最高。

・昨今 :メイド喫茶の進出(日本橋の出店数が15を数えた
     というデータもある)が象徴するように、アニメ
     フィギュアやグッズを扱うお店が増え、反比例して
     家電量販店が大幅に減少した。
     日本橋に来る人は、もはや電化製品を求めるので
     はなく、PCパーツやアニメグッズを求め、その
     合間にメイド喫茶ではんなりする。そうした層と
     なっている。
     
     ※ メイド喫茶の出店数は、ハヤシケンジの小宇宙 
     「カエルのきもち」のホ~ムペ~ジ
を参照しました。
     ありがとうございます。


カウンターに座って、メニューを見る。
メニューも、昔は本のような形式だったが、今では一枚ものに
変わっている。
それでも、内容は変わらず。

ここの基本は、カツ丼とカツカレー。
それをベースに、ご飯大盛り(スーパー)、卵二つ(ダブルエッグ)、
カツ二枚(ダブルカツ)、これら全部(スーパー)と進化して
いく。
更に、ご飯の上に乗せるスタンダードか、具の皿を別に分ける
セパレートかも選ぶことができる。
(ボリュームにより、途中からはセパレートのみとなる)

僕の好みは、ご飯にもしっかりと味が染み込んで欲しいので
ダブルエッグの丼タイプ。

昔お店にいた威勢のいいおじいさんの姿はもう見えないが、
それでもお姉さんが快活にオーダーを取りに来てくれて、
かつての空気は感じられる。

オーダーして、約5分ほどで到着。
おお! これこれ。

美富士のように、はち切れんばかりに盛り上がっている訳
ではないが、それでもしっかりとボリューム感に満ちて
丼の中で自己主張しているご飯とカツ。

それを、上からダブルエッグがしっかりと綴じてくれる。
隠し味は、カツの下に敷かれた、よく煮込まれた玉ねぎ。

やや甘辛目に煮込まれた出汁が、玉ねぎ、ご飯、カツ、
全てによく馴染んでいて、絶妙のハーモニーを醸し出して
いる。

端から端まで満遍なく敷き詰められたカツは、その薄さが
少し心もとなさを感じさせるものの、味をしっかりと
行き届かせるためと思えば、それもまた由。

舌の記憶にあるそれと寸分違わぬ味わいに、郷愁とともに
嬉しさを噛み締める。

後は無心に、ひたすら丼を口につけてかっ込む。

ある程度食べて、喉が痞(つか)えたかな?と思った矢先に、
先のおねえさんが「はい!」と水を持ってきてくれる。
#お茶と沢庵は、ちゃんと最初から出ている。

冷たい水をゴクゴクと半分程一気に流し込み、人心地。
沢庵で箸休めをする。

すかさず、おねえさんが「沢庵、お代わりいる?」と言い
ながら迫ってくるシステムも、かつてと変わらず。
以前はおじいさんがやっていた仕事だったが、そのタイミング
といい、快活さと言い、お店のDNAはしっかりと受け継がれて
いるようだ。

結局沢庵とお水を3度づつお代わりをして、満腹感に浸りつつ
ご馳走様。

町の雰囲気は変わってしまったけれど、このお店の味と雰囲気
だけは、変わらずにいて欲しい。

又来るからね。「こけし」。

(この稿、了)

(付記)
「こけし」については色々なHPにUPされているが、
食べログのオイデPaPaさんの口コミに、詳細な写真
入りで訪問記があります。


(付記2)
今回、確認をし損ねたが、以前はトイレの扉の前にあった
求人ポスターに、「求む!明るさ50万ワットの人」といった
感じの手書きのポスターがあったなぁ。

ふと、懐かしく思い出してしまった。


ちょっとカツ丼でググって見たら、う~む、色んな本が
有るんだなあ。
嵐山先生がどのようにカツ丼に取り組んでいるか、是非
読んでみたい本である。
カツ丼の道 素人庖丁記2 (ランダムハウス講談社文庫)
嵐山 光三郎
ランダムハウス講談社

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日本橋の変遷を知るには、こちらで。
大阪人 2007年 06月号 [雑誌]

大阪都市協会

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メイド喫茶。
実は(という程でもないけれど)行ったことがありません。
まあ価値観は人それぞれ。ということで。
それにしても、商売として最初に目をつけた人は偉い!
メイド喫茶で会いましょう
早川 清
アールズ出版

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