壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

土産(つと)

2010年03月25日 22時41分42秒 | Weblog
          竜 門
        竜門の花や上戸の土産にせん     芭 蕉

 滝を養老伝説をふんだものとして、伝説では酒を土産にしたように、自分は花を土産にしよう、と解するのは、やや談林的に見過ぎた解であろう。
 滝に沿って桜の咲く美しさにひかれて、これは酒好きの友に見せたい眺めだ、この景を帰ってから語ってやりたい、と感じただけのこととみたほうが、穏やかではなかろうか。貞享五年の作。

 「竜門」は竜門の滝。奈良県吉野郡竜門村にあり、竜門岳を背にし、吉野川に面している。
 「上戸(じょうご)」は酒豪のこと。竜門の滝そのものは酒とは関係がないが、酒中の仙と自ら称した李白は滝を愛した人であったから、それを心にしての作であろう。
 「土産(つと)にせん」は、みやげ話にしようの意。折り取ってみやげとして持ち帰る意ともとれる。
 季語は「花」で春。

    「竜門の滝に来てみると、美しい滝を囲んで、桜の花が咲きほこっている。このような滝の
     ほとりの花は、滝を愛する上戸の友への土産話(みやげばなし)にして喜ばせたい」


      山彦よもどれ薄暮の花見山     季 己