壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

玉や吐

2011年09月17日 00時29分43秒 | Weblog
        釣上し鱸の巨口玉や吐     蕪 村

 「つりあげし すずきのきょこう たまやはく」と読む。
 「巨口」は、蘇東坡の『後赤壁賦』の「巨口細鱗状如松江之鱸」から来ている。
 「玉や吐」の比喩は、
        閻王の口や牡丹を吐んとす     蕪 村
と似ているが、銀輪冷ややかな鱸としてはかなり自然な連想であって、「閻王の口」の場合ほどの奇想天外的な飛躍ではない。
 なお、全体があまりにも理想化され装飾化されようとする危険を、「釣上し」の現実感をもって十分に救い得ている。

 季語は「鱸」で秋。「鱸」はスズキ科の海産の硬骨魚。近海産で南日本に多く分布する。体長五〇~六〇センチ。鱗や歯は小さ口は大きい。背は薄い青色で腹は白色。夏は海より川に、冬は川より海に移る。稚魚から成長するにしたがって「せいご」「ふっこ」「すずき」と呼び名が変わる。

    「秋水の中から、いま釣り上げたばかりの水滴のしたたる鱸。細かく銀鱗は
     輝いて、その巨口からは今にも玉を吐くかと怪しまれるほどである」


      向日葵のうれしき刻は影をもつ      季 己