壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

虎渓三笑

2010年01月02日 16時26分54秒 | Weblog
 今年は、平成庚寅(かのえとら)年である。そこで、寅年にこと寄せて……

 中国江西省九江の南、廬山に、虎渓(こけい)という人の恐れる渓谷がある。
 晋の高僧・慧遠(えおん)は、廬山の東林寺に隠居して、虎渓を渡るまいと誓った。
 ある日のこと。その慧遠のもとに、陶淵明と陸修静の二人の詩人が訪れ、夜の更けるまで談笑に時を過ごした。「これ以上いては相済まぬこと」と、別れを告げた。
 すると慧遠は、「それでは、ちょっとそこまで」と、両人を送るため家を出た。しかし、なおも尽きせぬ談笑のうちに、いつしか人の恐れる“虎渓”を過ぎていた。
 三人が気づいた時はすでに遅く、引き返すことも出来なかった。けれども、何ごともなかったので、三人ともに大笑したという。
 おそらく、虎にも風流心があったのであろう。清談の面白さになすこともなく、聞きほれていたのかも知れない。
 これが、世に言うところの「虎渓三笑(こけいさんしょう)」の故事である。


      笑ひすぎても減ることはなし福袋     季 己