壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

ほととぎ朱

2010年06月16日 22時34分31秒 | Weblog
        岩躑躅染むる泪やほととぎ朱     桃 青(芭蕉)

 これは躑躅(つつじ)の色を見て、衣の色を連想したものであろう。表が紅で裏が紫の襲(かさね)の色目を「いわつつじ」というので、躑躅の別名の杜鵑花(つつはな)から連想して、杜鵑(ほととぎす)の泪(なみだ)が染めた紅だと興じた発想。
 「ほととぎ朱(す)」と書いてあるのもその縁なのである。杜鵑は口中が赤く、俗に、「鳴いて血を吐く」といわれている鳥で、それが心にあったものであろう。
 なお、表白・裏紅の色目を「つつじの衣」、表紫・裏紅を「もちつつじ」などという。『増山井』に「つつじ衣」を三月に掲出、「表蘇芳(すおう)・裏青」とある。
 
 「躑躅」は春の季語であるが、この句では「ほととぎす」が季語で、夏季をあらわす。

    「“ほととぎ朱”はその名の通り、血の涙によって、あの岩躑躅を真紅に染めたので
     あろうか」


      夕虹のあとに立ちたる雀かな     季 己