壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

たえだえ青し

2010年03月13日 21時59分32秒 | Weblog
        笹折りて白魚のたえだえ青し     才 麿

 出典は『東日記』。『東日記』には、この句の前に、芭蕉の、「藻にすだく白魚やとらば消ぬべき」という句を載せる。「藻のあたりに群れ泳いでいる白魚は、清らかに透きとおって、そのか細くあえかな姿に、手にすくいとったなら、きっと消え失せてしまうに違いないと感じられるほどだ」という意である。
 この二句は、共に白魚の脆弱なはかなさにも似た美しさを、感覚的にとらえた佳句である。芭蕉の場合は、白魚そのものに即しているところがずっと鋭い。才麿の句は、実景を直截に表現した力強さをもっている。また、「白魚」と「青し」という色彩的な表現も印象的である。
 ともあれ、この二句は、「枯枝に烏のとまりたるや秋の暮  桃青(芭蕉)」、「芋洗ふ女に月は落ちにけり  言水」などと共に、新風を志向する『東日記』を特色づけた先駆的作品ということができる。
 季語は「白魚」で春。

    「笹の葉を折り敷いたうつわに、いきのよい白魚を並べて置くと、半透明の白魚を通して、
     ところどころ笹の葉の緑が透けて見える」


      強東風にペンキ剥げたる朝礼台     季 己