壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

おぼつかな

2010年07月31日 21時25分38秒 | Weblog
        蛍見や船頭酔うておぼつかな     芭 蕉

 瀬田川の石山の下にあたる螢谷。そのあたりの早瀬に、蛍見の舟を浮かべたときの作であろう。
 ここの蛍は、大きさも他よりすぐれており、北は瀬田の橋、南は供御が瀬まで25町(約2725㍍)にわたって飛び交う。夏至を過ぎると宇治橋あたりへ下って、有名な蛍合戦が行なわれるのである。
 当時は瀬田川に舟を浮かべ、一献傾けながら豪奢な蛍見が行なわれたらしい。軽い即興的な句であるが、「おぼつかな」は、乱れて明滅する光を闇に追う蛍見の心持ちをもあわせ味わうと、いっそう生きてくると思う。
 『猿蓑』に、「闇の夜や子供泣き出す蛍舟  凡兆」に続けて掲出。元禄三年ごろの作か。

 季語は「蛍見」で夏。蛍見物の情趣が主になった発想。

    「瀬田川へ蛍見の舟を出したが、船頭が酔ってしまって、この流れを漕ぐには
     どうやら頼りなくなってきたようだ」


 ――7月の最終土曜日は隅田川花火大会。隅田川に舟を繰り出し、一献かたむけながら絢爛豪華な花火見物をされた方も、おられることだろう。
 ところで、芭蕉さんには、花火の句は一句もない。仕方がないので、「花火」の代わりに「蛍」にした次第。

 脱水症状のため入院させた母も、おかげさまで元気になり、手すりにつかまって階段の上り下りが出来るようにまでなった。入院当日は、車椅子に乗せられ、階段を4人の看護師さんによって担ぎ上げられた母が。来週、血液検査をやり、それで退院ということになるだろう、とのこと。
 ということで、今週まだ一度も行っていない「画廊宮坂」へ行ってきた。妙高高原に別荘を持っている画家さん4人による『高原の仲間たち展』の最終日だ。
 画廊へ入るやいなや、一冊の本を渡された。「お客さんのAさんからの預かりものです」と宮坂さん。Aさんには先週こちらでお会いし、お話をしたばかり。抗ガン剤治療と一緒に、ビタミンC大量点滴療法をするとよい、とのことで、その本をプレゼントして下さったのだ。
 また昨日は、先週個展をなさった平野純子さんから、例の「天王原たまご」が送られてきた。荷を解くのももどかしく、すぐさま生のまま飲んだ。そのおいしいこと、いや「ウメー」ことといったらない。これまで食べたことのない卵の味がした。
 それから間もなく、うまそうなクリームソーダが溶けもせずに届いた。日本画家・菅田友子先生からの「はがき絵」である。菅田先生は毎月、励ましの「はがき絵」を送って下さる。
 このように、「画廊宮坂」で知り合った多くの方々に助けられ、生かされている幸せ。しみじみ有難く、感謝の念でいっぱいである。

      猫になるライオンの夢 夏の夢     季 己