壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

針立

2011年09月03日 00時19分38秒 | Weblog
        針立や肩に槌うつ唐衣     桃 青

 雅の世界である砧(きぬた)を、卑俗な鍼按摩のしぐさに二重写しにした手法で、談林的な特色をかなり顕著に示している。このような手法は、当時流行の見立てであった。 

 「針立(はりたて)」は鍼医のこと。ここでは按摩を兼ねた鍼按摩であろう。小槌で鍼を打つ。
 「唐衣」は、砧といえばすぐ連想されるもので、衣を美しくいったもの。謡曲「山姥(やまうば)」にも、「世を空蝉(うつせみ)の唐衣……千声万声の砧の声」などとある。

 砧の句で秋。季語としては「衣うつ」。

    「鍼按摩が客の肩に鍼を槌で打ちつづけているが、そのさまは、あたかも
     唐衣――空衣を肩の上で打つ砧ともいえよう」


      山の水あつまり浅間秋めきぬ     季 己