壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

更衣

2010年05月31日 21時39分41秒 | Weblog
        更衣世に逆はず虔(つつま)しく     福田蓼汀
        更衣へ晩年の計ほどほどに      角川源義

 「更衣」と書いて「ころもがえ」と読む。更衣は元来、平安時代に始まった宮中の儀式の一つであった。陰暦四月一日に、天皇はじめ貴族たち百官が、「もろもろの御装束・御殿の御帳のかたびらまで、夏の御よそほひに」あらためられた。江戸時代になると、幕府が制度として決め、一般人はこの日に綿入れを袷に着替えた。名字に「四月一日」と書いて「ワタヌキ」と読ませるのもこれによるという。
 陰暦四月一日に、綿入れを脱いで袷に着替え、五月五日の端午の節句に、袷から帷子(かたびら)に着替えるようになった。
 十月一日にはまた、夏の衣装から冬の衣装に替えた。十月の更衣を「後の更衣」という。
 現在はいっせいに更衣をする風調はうすれ、六月一日と十月一日の更衣を守っているのは、学生の制服とサービス業関係の制服が中心のようである。

 今朝、玄関の絵を、小嶋悠司先生の「陽」から花岡哲象先生の「六月の屈斜路湖」に、飾り棚の東田茂正先生の「瀬戸黒茶碗」を、同じく東田先生の「黄瀬戸茶碗」に、それぞれ替えた。これが、我が家の更衣といえるかも知れない。
 奇しくもその直後、東田先生からお電話をいただいた。先日のブログを読まれて、心配してくださったのだ。そのうえ、かねてからの念願である「茶碗をつくりに来ませんか」というお誘いも……。
 こうした多くの方々との関わり合いのおかげで、今、ここにこうして生きていられるのである。
 “おかげさま”で元気にしております、と縁ある方々に感謝せずにはいられない。


      更衣すれど脱毛手のしびれ     季 己