壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

庭一杯の

2010年08月17日 22時11分54秒 | Weblog
        此の寺は庭一杯の芭蕉かな     芭 蕉

 みごとに広げた芭蕉の葉を、「庭一杯の」と把握したところが眼目である。即興的な調子が感じられる。取り立てて言うほどの作ではないが、やや弾んだ気持は出ている。
 『蕉翁句集』に、元禄五年として収める。

 季語は「芭蕉」で秋。中国原産で、バショウ科の多年草。高さ五メートルにも及び、葉鞘は互いに抱いて直立。葉は鮮緑色の楕円形で、長さは二メートルほど。長柄を持ち、支脈に沿って裂けやすい。秋に巨大な花穂を出し、帯黄色の単性花を段階状に輪生する。
 松尾芭蕉が、「その性 風雨に傷みやすきを愛す」といって、自らを芭蕉と号したことは、よく知られている。その松尾芭蕉が、「芭蕉」を即興風にとらえたもの。

    「さして広くもないこの寺の庭ではあるが、芭蕉が、いまそれだけで庭一杯
     になるほどまでに葉を広げ、みごとな眺めを見せていることだ」


      芭蕉葉や風も地熱をかつさらふ     季 己