壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

踊り

2008年08月30日 21時53分14秒 | Weblog
 ゲリラ豪雨が来てもいい格好で、浅草へ行った。「浅草サンバカーニバル」を見るためである。
 昨年は割に早く、見物席を確保できたが、昨年より人出が多いせいか、適当な見物席がない。ゲリラ豪雨があると確信しているので、アーケードがあってしかもよく見物できる場所を探したのだが、2時過ぎに行ってそんな場所があるわけがない。サンバカーニバルはもうとっくに始まっているのだから。
 雷門通りの、Nマンションの階段の踊り場が、絶好の見物スポットなのだが、部外者が無断で入るわけにもゆかず、某うなぎ店の前で見物することに決めた。
 辛抱強く待てば、必ず前列の人の何人かは帰るので……。

 「浅草サンバカーニバル」は、今年で28回目だという。
 見慣れた、ということもあるが、何かが物足りないのだ。それが何であるのか、自分でもわからない。
 もちろん、本場のサンバカーニバルは見たことがない。だが、今日のサンバカーニバルは、単なる仮装行列にしか見えないのだ。衣装をまとったロボットが手足を動かしている、悪く言えば、そんな感じだ。そう、踊っているのではなく、動いているに過ぎないのだ。
 だから、見る阿呆に感動がないのだ。
 望遠付一眼レフカメラを持った撮る阿呆は、露出度の高いセクシーなダンサーにしか、シャッターを切らない。中には超連写で撮る阿呆も。

 腹が立ってきたところへ、豪雨の襲来。各商店の雨樋から、猛烈な勢いで雨水が噴出し、下水のふたの穴からも水が噴き出している。
 あわてて、うなぎ店の敷地内に逃げ込み、雨宿りをさせてもらい、小降りになるのを待つ。
 それでも、サンバカーニバルは続いているようだ。
 小降りになったのを見計らって、バス停へ。
 こうして、ほとんど濡れることなく無事帰宅。

 午後6時から7時は、地元、仲町商店街の「阿波踊」。
 出演?は、浅草・写楽連と川越の埼玉・葵連の総勢30余名。
 恒例らしいのだが、見に行ったのは今回が初めて。
 こちらも感動がない。感性が衰えたらしい。どこかの首相のように「感動した」と言ってみたいものだ。
 こちらの原因はわかっている。
 本場徳島で、それも徳島で一、二と言われる連の阿波踊を、眼の前で踊っていただいたのだ。このときの感動は、言葉にすることが出来ない。ただ涙が流れ落ちるだけだった。
 この印象を後に詠んだのが、「阿波踊の鉦のかなしきはずはなし」である。

 ただ涙した阿波踊と、比較しているのだ。最初に最高のものを見てしまったので、それを超えるものになかなか出会えないのだ。
 それでもいいと思う。
 わかっても、わからなくても、最高のもの・本物を観ることは、非常に大切だと思う。子どものうちから、最高のもの・本物に触れさせることは、もっと重要だと思う。
 最高のもの・本物を知ることにより、偽物・駄物を知ることが出来るのだから。


      鉦の音に遠き日のこと阿波踊     季 己