伊羅古に行く道、越人酔ひて馬に乗る
雪や砂馬より落ちて酒の酔 芭 蕉
この句、『合歓(ねぶ)のいびき』(明和六年刊)にある。原本は、「落ちて」の「て」が、「よ」または「そ」とまぎらわしい字体であるという。
「落ちよ」だと興じすぎているようだし、「落ちそ」だと落ちるなと戒めている句意になる。「落ちて」には旅の心のはずみが出た、即興的な味が感じられる。
「伊羅古(いらご)」は、愛知県渥美半島西端の岬。伊良湖岬。
『伊羅虞紀行』(安永六年刊)には、
一かさ高き所は卯波江坂とて、むかし越人、翁にしたがひ、酔うて馬にのられし時、
「雪や砂馬より落ちて酒の酔」と翁の口ずさみ給ふとなん。
とある。「卯波江」は、「宇津江」の誤聞であろうといわれ、その坂を下りた村落に「江比間」があり、古い地図には「酔馬(えひま)」とあるという。
芭蕉は、この名に興じてこの句を詠んだのではないかと考えられている。
季語は「雪」で冬。
「道は海沿いの砂の道つづきで、おまけに雪が降っている。越人はついに馬から落ちて
砂まみれ雪まみれになったが、いっそう酒の酔いを発して興じたことだ」
凍返る橋につぶやく修行僧 季 己
雪や砂馬より落ちて酒の酔 芭 蕉
この句、『合歓(ねぶ)のいびき』(明和六年刊)にある。原本は、「落ちて」の「て」が、「よ」または「そ」とまぎらわしい字体であるという。
「落ちよ」だと興じすぎているようだし、「落ちそ」だと落ちるなと戒めている句意になる。「落ちて」には旅の心のはずみが出た、即興的な味が感じられる。
「伊羅古(いらご)」は、愛知県渥美半島西端の岬。伊良湖岬。
『伊羅虞紀行』(安永六年刊)には、
一かさ高き所は卯波江坂とて、むかし越人、翁にしたがひ、酔うて馬にのられし時、
「雪や砂馬より落ちて酒の酔」と翁の口ずさみ給ふとなん。
とある。「卯波江」は、「宇津江」の誤聞であろうといわれ、その坂を下りた村落に「江比間」があり、古い地図には「酔馬(えひま)」とあるという。
芭蕉は、この名に興じてこの句を詠んだのではないかと考えられている。
季語は「雪」で冬。
「道は海沿いの砂の道つづきで、おまけに雪が降っている。越人はついに馬から落ちて
砂まみれ雪まみれになったが、いっそう酒の酔いを発して興じたことだ」
凍返る橋につぶやく修行僧 季 己