壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

ロートレック展

2008年02月26日 20時34分52秒 | Weblog
 「ロートレック展」(サントリー美術館)のメンバーズ内覧会へ行ってきた。
 通常、火曜日は休館なのだが、会期中に一度、サントリー美術館メンバーズ・クラブの会員に限り、13時30分~15時30分まで、ゆったりと観覧できる仕組みだ。
 ざっと数えたところ100人強といったところか。お気に入りの作品の前で、心ゆくまで鑑賞できるのが、何よりうれしい。

 ロートレック(1864~1901)は、19世紀末のフランスを代表する画家の一人であり、ポスター作家、版画家としてもよく知られている。
 日本でいえば、正岡子規(1867~1902)と同時代の人で、宮沢賢治(1896~1933)と同じく36歳で亡くなっている。(こんなことは、関係ないか…)

 南フランスのアルビの名門貴族の家に生まれたロートレックは、歓楽街のモンマルトルでその才能を開花させ、ダンスホールやキャバレー、劇場、娼館などに入り浸り、芸人たちや娼婦、そしてそこに集まる人々の姿を、鋭い観察眼と卓越したデッサン力でとらえ、魅力的な作品に仕上げていった。

 今回の展示では、36年の彼の短い生涯の中で、多くの傑作を残した晩年の10数年間に焦点を絞り、日本初出品のオルセー美術館のロートレック・コレクションをはじめ、各国から集められた油彩画の名品の数々、さらに版画とポスターの代表作を網羅したという。

 じっくり観られたせいか、ロートレック芸術の本質や、ロートレックの情熱のすべてを一望できた、至福の2時間であった。
 250点余りの作品のなかで数点、心揺さぶられるものがあった。特に「イヴェット・ギルベール、ポスターの原案」の前では、足がすくみ、胸が締め付けられるような感動をおぼえた。
 誇張され、生き生きとした顔、イヴェットのトレードマークである黒い長手袋のなかの手の表情、指先の緊張感まで伝わってくる。
 さらっと描かれているのに、的確で非常に勢いのある線。線が生きていて本当にすばらしい。また、上半身のみで、ほとんど下半身を省略して描かないことに感銘を受ける。省略のきいた、余韻嫋々たる名句を、目の前にしている感じだ。生涯に一句でいいから、こんな句を詠んでみたいものだ。

 東京ミッドタウン内の名店を数店のぞき、銀座の山野楽器で江戸囃子のCDを買い、浅草へ……。


      ロートレック見て浅草へ春の宵     季 己