(2006年8月26日 ブルーノート東京) 僕にとって一番衝撃的だったチック・コリアは「ナウ ヒー シングス、ナウ ヒー サブス」。「マトリックス」のスピード感に腰を抜かした。ずっと聞いていたハードバップとは全く違った、駆け抜けるようなスピード感に夢中になった。これはもう30年以上前のこと。リターン・トゥー・フォー・エバーとかエレクトリック路線は余り好きじゃなかったかな。さて、チック・コリアのライブを観るのは4年ぶり位だと思う。前に見た時はアコースティック・ピアノ・トリオだった。今回は、チック・コリア&タッチストーン。「タッチストーン」はチック・コリアがフラメンコ・ギタリストのパコ・デ・ルシアをフィーチャーしてリリースしたアルバムの名前。たしか1980年代前半だったと思う。その頃僕はフラメンコにはまっていたので、パコ・デ・ルシアに惹かれて買ったのをよく覚えている。でも、今回のメンバーにパコは入っていない。どんなスパニッシュ路線のチックなのかに期待を膨らませてブルーノート東京に向かった。フルートの超有名プレイヤーのヒューバート・ロウズも見てみたかったし。会場は当然ながら超満員。僕達はかなり左寄りのピアノの後ろの席を選ぶ。時間よりやや遅れてチック・コリア登場。ウーム、太って横綱級になっている。最初にチックがおどけながらメンバー紹介をし、楽しく陽気な雰囲気の中でライブが始まった。メンバーは、チック・コリア(ピアノ/キーボード)ヒューバート・ロウズ(フルート)アイアート・モレイラ(パーカッション)ティム・ガーランド(サックス/バス・クラリネット)トム・ブレックライン(ドラムス)カルレス・ベナベン(ベース) 1曲目はチックの名曲「セニョール・マウス」。ヒューバート・ロウズのフルートの音が実にいい。CTI時代の音よりも暖かくて丸い音になっている。容貌も白い髭をたくわえて柔和な視線で「ジェントルマン」といった感じ。バス・クラからテナー・サックスに持ち替えてのティム・ガーランドのソロも盛り上げ方が上手で中々。2曲目はフリーな雰囲気の中でスリリングなソロが展開され、スパニッシュ・モードを基調とした演奏で、リズムをめまぐるしく変化させながらどんどんテンションが上がっていく。カルレス・ベナベンの切れ味の鋭いベースが印象的。この独特の切れ味からしておそらくピックで弾いているんだと思うけど、チックの大きな背中に隠れて手元は見えなかった。それにとても「イケメンおじさん」だ。ひきつめて後ろで束ねた長髪とスペイン的な彫りの深い知的な容貌。ソロがヒートアップすると、束ねた髪が乱れて前に垂れてくるところがとてもセクシー。それにしても、このベースはすごい。ゲイリー・バートンの時のスティーブ・スワローも格好良かったけど、やはりベースってカッコいいなと再認識。そしてフラメンコ・ダンサーのアウシ・フェルナンデス登場。いかにもフラメンコ・ダンサーといった感じの美人。最初はステージ右手で手拍子。フラメンコののりが濃厚になってくる。ステージ中央に出て踊りだすとバンド全体のテンションも最高潮に達し、ダンサーのタップとチックの掛け合い、情熱的な「演劇」を見るような感じのフラメンコ・ダンスに目は釘付けとなる。オーソドックスなフラメンコの踊りとはかなり違うような気はするけど、バンドのサウンドにマッチしていてとても魅力的だった。バンドのメンバー達のフラメンコのビートを完全に共有した手拍子を見ながら、高校生の頃にフラメンコ・ギターを習いに行っていた時に練習させられたソレアのリズムを思い出した。僕はリズム感が悪いので、何度やっても先生の打つような手拍子が打てなかったな。最後はやはりこの曲「スペイン」。オール・スタンディングとなってライブは終了。時計の針はすでに12時近い。<今日の感想>それにしても、チック・コリアはエンターテイナーだな。 <追伸>このライブレポートは、僕の個人的な感想をさらさらと書くことを基本スタンスにしているので、書くにあたってあまり調べたりはしないんだけど、ベーシストのことがとても気になったので少し調べてみた。何とこの人は、昔のパコ・デ・ルシア・セクステットのベーシストだった。僕がフラメンコに夢中だった20年以上前に熱心に聞いた「ソロ・キエロ・カミナール」でベースを弾いていた人。今はこのレコードが手元にないので聴き直せないけど、当時はパコばかり聞いていて余りベースは記憶に残っていない。きっと狭い感性で聞いていたんだろうな。最近、少し音楽の楽しみ方の幅が広がったような気がする。ほんの少しだけだけど。
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あんまり話題になっていないアルバムですがチックの「アルティメット・アドベンチャー」グループって感じですね。
>やはりベースってカッコいいなと再認識。
そうなんです。ベースってかっこいいんです(笑)
カルレス・ベナベンは今回のアルバムでもぶっ飛びですが、昔の「タッチストーン」「アゲイン&アゲイン」でもめちゃくちゃカッコイイベースを弾いていましたよね。個人的にはチックのこれまでのバンドの中で一番好きなベーシストかも。「アゲイン&アゲイン」も隠れた名盤だと思います。
昔の「タッチストーン」はスパニッシュ全開でしたが、今回の「アルティメット」は北アフリカ的な音もたくさん聴ける感じがします。とはいえ、ライブで聴いている方にはなぁぁんにも言えないなぁ。ライブに接した人が一番偉い!!
ブログ慣れしてないのね、ごめんなさい。