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日々の戯れ

鈴柩の頼りない脳細胞に代わる記憶

チグリスとユーフラテス

2007-02-19 | 読書

「どこかの国の大臣が「女性は産む機械だ」と発言した」
と どこかの国のマスコミが騒ぎ
どこかの国の議員さんが「やめろやめろ」と大合唱
 
私は大臣さんにもマスコミさんにも議員さんにも
含むところはないので
できるだけ客観的に考察してみようと思う
 
まず発言の全文を確認しなくてはなるまい
この大臣さんは少子化対策を担当しており
人口の現況についての話のなかで
 
|特に、2030年にたとえば30歳になる人を考えると
|今、7,8歳になってなきゃいけない。
|生まれちゃってるんですよ、もう、
|あとは生む機械と言っちゃなになんだけど、
|装置の数が決まっちゃった ってことになると、
|機械っていっちゃ申し訳ないんだけど、
|機械って言ってごめんなさいね、

|あとは生む役目のひとが、一人頭でがんばって
|もらうしかない。
|2030年はもう勝負は決まっていると
|よく役人に言われる
 
という発言をした。
「女性は産む機械だ」と直接は言っていないねぇ
彼の言いたいことは
「2030年に子供を生める人の数は既に決まっている」
ということだ
 
それが、こんな大騒ぎになったわけを考える

 
①マスコミの事大主義
前述の発言を
「大臣は女性のことを『産む機械』だと発言した」
と報道する姿勢は明らかにセンセーショナリズムだろう
文意をまとめる能力が無かっただけだとしたら
それはそれで問題だ
「視聴率を稼ぐためなら遣らせも捏造もかまわない
 まして誇張することや
 都合のいい所だけ使う事なんて捏造とは言わない」
というマスコミの姿勢がここにも出てきている
 
②比喩に対する狭量さ
比喩表現として人間を機械にたとえることが
それほどいけないことだとは私には思えない
「男は種出し機械だ」
「お前は役に立たない種出し機だね」
別に腹は立たない
「いい例えじゃないな」と思うだけだ
パスカルは「人間は考える葦」だと言った
筒井康隆は「人間は歩く糞袋」だと書いた
比喩表現に狭量になるのは
ただのことば狩りである
 
③議員さんはどこに怒っているのか
特に議員さん達を見て思うのは
彼女らは機械だという発言に怒っているのではない
「機械」発言無しに
「女性が子供を頑張って産まないと少子化になる」
と言われても、やっぱり怒っていたのではないか
 
女性が子供を頑張って産まないと少子化になる
というのも当然の話で
男が子供を産めない以上
女が子供を2人以上産まないと
算術的に人口は減るばかりなのだ
 
だが彼女らは出産について非常に敏感に反応する
女は不可侵な存在になりつつある
問題や創価学会の問題に似てきた
マスコミは女性を腫れ物に触るように扱わねばならない

これも「女性をデキモノ扱い」したことになるのだろうか
議員さん達がヒステリックに騒げば騒ぐほど
女性の品位が地に落ちていくようで悲しい
 
こんな騒ぎの間に
肝心の少子化の問題が
議論されずに時が過ぎて行くことが残念だ
勿論、もしかすると少子化というのは
議論や対策なんて必要ない
必然的なものなのかもしれないけれど・・・
 
さて本の紹介をせねば
思慮の足りない大臣さんや
ヒステリックな議員さんにも
読んでもらいたい

チグリスとユーフラテス〈上〉 チグリスとユーフラテス〈上〉
価格:¥ 720(税込)
発売日:2002-05
チグリスとユーフラテス〈下〉 チグリスとユーフラテス〈下〉
価格:¥ 600(税込)
発売日:2002-05

文庫判も出てたのね・・・ 
チグリスとユーフラテスは
宇宙港を舞う蛍の名前であって
古代史の話ではない
1999年の日本SF大賞を受賞している
 
あらすじは詳しく述べない
原因不明の不妊症のために
滅び行く植民星の年代記である
滅びの約束された世界で子を産むことに対して
一人一人の女性が
それぞれの形で苦しみ足掻く姿
人類の最後に生まれた子供の苦悩と
それを叱りとばして救ってくれる女性
「レイディ」の目覚め
ああ
新井素子だ
 
誤読を恐れずに言えば
このお話は
作者が「自分の不妊」という無念を
自分への鎮魂歌として
更には全ての女性/人類への鎮魂歌として
昇華させた作品である
文体に好き嫌いはあるだろうが
私はラストシーンを泣きながら読んだ

コメント
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