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宮澤賢治の里より

下根子桜時代の真実の宮澤賢治を知りたくて、賢治の周辺を彷徨う。

賢治の甥の嘆きに大ショック

2023年09月22日 | 「賢治研究」の更なる発展のために

 さて、岩手大学の学生になった頃の私はどうであったか。
 同級生の中には、授業をサボって花巻を訪ね、下根子桜やイギリス海岸に行ってきたなどという賢治好きの輩もいたが、私は現地を訪ねることもせず、賢治の作品を読み込むこともせずに、はたまた学生運動華やかなりし時代だったがそこまでのめり込むこともなくのほほんと暮らしていた。せいぜい賢治に関して知ったことは、賢治が昭和3年に下根子桜から撤退したのは、「八月、心身の疲勞を癒す暇もなく、氣候不順に依る稻作の不良を心痛し、風雨の中を徹宵東奔西走し、遂に風邪、やがて肋膜炎に罹り、歸宅して父母の元に病臥」という通説ぐらいなものだった。そこで私はますます、「賢治は貧しい農民のために己の健康まで犠牲にして献身した」のだと確信するようになっていった。
 そして3年生の頃になると、就職を気にし始めていたせいもあってか、尊敬する人物は誰ですかと問われると、「破滅的で微分的な啄木と違って、積分的で求道的な生き方をし、貧しい農民たちのために己の命さえも犠牲にして献身しようとした天才詩人で童話作家の賢治です」などと粋がって答えていた記憶がある。
 ところが問題は、4年生になってとてもショックなことに出遭ったことだった。それは私が所属を希望した講座に新任の教授が赴任してきたのだが、同教授は私たちを前にしてある時、あの「賢治はあまりにも聖人・君子化され過ぎてしまって、実は私はいろいろなことを知っているのだが、そのようなことはおいそれとは喋れなくなってしまった」という意味のことを嘆いたのだ。私は大ショックだった。それは、その頃私が最も尊敬していた人物は他でもない、まさに賢治だったからということだけでなく、実は新任の教授は岩田純蔵氏であり、賢治の甥(賢治の妹シゲの長男)だったからなおのことであった。甥であったならば、確かに「いろいろなことを知っている」はずだ、と。そして、そうか、巷間言われている賢治と本当の賢治とでは違うところが少なからずあるのかと、私の賢治像は大きくぐらついてしまったのだった。

【新刊案内】
 近々『このままでいいのですか 『校本宮澤賢治全集』の杜撰』(鈴木 守著、録繙堂出版、1,000円(税込み))

が、岩手県内の書店で販売されます。
 なお令和5年9月20日以降であれば、岩手県外にお住まいの方も含め、本書の購入をご希望の場合は葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,000円分(送料無料)の切手を送って下さい。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813
【旧刊案内】
『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)

 岩手県内の書店やアマゾン等でネット販売されおります。
 なお、葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,500円分(送料無料)の切手を送って下さい。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813

『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))

 アマゾン等でネット販売されております

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