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最も尊敬する人物はいつしか聖人・賢治に

 そして高校生になった私は、賢治のことも賢治の作品も共によくわかってもいないのに、次第に、賢治を最も尊敬するようになっていった。
 さて、私はなぜ当時賢治を最も尊敬するようになっていったのかということを今になって振り返ってみると、それは、賢治は貧しい農民のために己の命まで犠牲にして献身したという、いわば聖人・宮澤賢治像を私の中に育ませてもらったからのようだ。そしてどうしてそうなったのかというと、私が学校で先生から教わった国語の教科書がどのようなものであったかの記憶は定かではないが、国語の教科書等であの「雨ニモマケズ」等を教わったことが大きいと思う。今になって冷静になれば、賢治はあくまでも「サウイフモノニ/ワタシハナリタイ」と言っていただけなのだが、当時、先生から「賢治はこのように自己犠牲を理想にし、実行したのだ。このような犠牲的精神をあなたたちも心掛け、賢治のように生きてみなさい」と諭され、その当時は素直だった私は、そうだよな、何も出来ないにしても、
   ヒデリノトキハナミダヲナガシ
  サムサノナツハオロオロアルキ

をして、せめて「雨や風などに負けずに」生きていこう、などと自分勝手に解釈していた。
 そしてなにより、賢治終焉前日の、
 かれが死の前日、見知らぬ農夫が肥料のことで尋ねてきたとき、病状を知っている家人は気が気でなかったが、かれは病床を起き出て階下の玄関に客を迎えた。そして、一時間もきちんとすわってていねいに教えていたということである。〈『中等新国語 文学編 二上』(坪内松三編、光村図書出版、昭和26年)109p〉
というようなエピソードは私たちが習った教科書にも載っていたはずで、「すげぇ!、賢治は貧しい農民のために己の命まで犠牲にして尽くした凄い人だったのだ」と私はとても感動したおぼろげな記憶がある。
 こうして、私が最も尊敬する人物はいつしか聖人・賢治になっていった。

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 なお令和5年9月20日以降であれば、岩手県外にお住まいの方も含め、本書の購入をご希望の場合は葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,000円分(送料無料)の切手を送って下さい。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813
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『本統の賢治と本当の露』(鈴木守著、ツーワンライフ出版、定価(本体価格1,500円+税)

 岩手県内の書店やアマゾン等でネット販売されおります。
 なお、葉書か電話にて、入手したい旨のお申し込みを下記宛にしていただければ、まず本書を郵送いたします。到着後、その代金として1,500円分(送料無料)の切手を送って下さい。
            〒025-0068 岩手県花巻市下幅21-11 鈴木守  ☎ 0198-24-9813

『筑摩書房様へ公開質問状 「賢治年譜」等に異議あり』(鈴木 守著、ツーワンライフ出版、550円(税込み))

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