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海綿状血管腫に対する治療について

2010年10月11日 | 脳卒中
このところ本疾患に対する相談やコメント、診察・治療依頼が多いのでwebsiteの記載に少し追加します。

まずこの病気は腫瘍ではなく血管奇形の一種と考えられています。ですから、生まれつきの病気ということになりますが、小さな血管の塊なので周囲に小出血を繰り返し大きくなることがあります。ただ一般的な脳腫瘍とは別の病気と考える必要があります。このため英語では「先天性」の要素を示すためにcavernous malformation(海綿状血管奇形)とも言われています。

診断にはCTやMRIが用いられますが、確定診断は主にMRIで行われます。
また他の血管奇形との鑑別のために脳血管造影検査も行われます。脳血管撮影では他の血管奇形は血管撮影でその流れが写りますが、海綿状血管腫は写らないからです。これは血管腫とは言うものの、その中を流れる血流はほとんどないか、ごくわずかであるためと考えられています。しかし海綿状血管腫のうち3割程度の患者さんは静脈性血管奇形(venous malformationまたはdevelopmental venous anomaly: DVA)を合併しており、その場合には脳血管撮影で描出されることになります。

治療に関しては私のWebsiteは脳卒中合同ガイドライン委員会の「脳卒中診療ガイドライン2009」の記載と自身の経験をもとに記載していますので、ここにガイドラインの推奨文のみ紹介します。

推 奨
1. 無症候性海綿状血管腫は保存的治療が勧められる(グレードC1)。
2. 症候性海綿状血管腫(出血、痙攣ほか)のうち、摘出可能な部位(テント上脳表付近)に存在する症例では外科的切除術を考慮する(グレードC1)。
3. 出血により神経症候をきたした表在性の脳幹部海綿状血管腫の症例には外科的治療が勧められる(グレードC1)。
4. 定位放射線治療には出血防止効果はあるが、合併症の危険が高く、外科的治療が困難な例にのみ考慮すべきである(グレードC2)。

そのもととなるエビデンスも同時に紹介されていますので、
http://www.jsts.gr.jp/guideline/168_170.pdf
をご覧下さい。

ここで、「グレードC」というのは、ランダム化比較研究などが行われていないため、エビデンスの質が高くないことを示しています。海綿状血管腫については、真にどの治療が有効であるかが比較研究で確定されたわけではないということです。このためひとりひとりの患者さんの病変の部位や大きさ、症状の程度、家族歴の有無、全身状態や年齢などを総合的に判断する必要がありますし、複数の専門家による意見を統合して選択されるべきです。
実際に海綿状血管腫と診断された場合には脳神経外科専門医、脳卒中専門医、放射線治療専門医などと良く話し合い治療法を決定されることをおすすめ致します。
コメント
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