博多住吉通信(旧六本松通信)

 ブログ主が2022年12月から居住を始めた福岡市博多区住吉の生活や都市環境をお伝えします。

デュアルユースの問題が問いかけるもの

2016年05月25日 | 時事

 (昨日の続き)日本の科学技術政策の根幹を定める「第5期科学技術基本計画」(今年1月22日閣議決定)には、次のような記述があります。

 (以下引用)④国家安全保障上の諸課題への対応:我が国の安全保障を巡る環境が一層厳しさを増している中で、国及び国民の安全・安心を確保するためには、我が国の様々な高い技術力の活用が重要である。国家安全保障戦略を踏まえ、国家安全保障上の諸課題に対し、関係府省・産学官連携の下、適切な国際的連携体制の構築も含め必要な技術の研究開発を推進する。その際、海洋、宇宙空間、サイバー空間に関するリスクへの対応、国際テロ・災害対策等技術が貢献し得る分野を含む、我が国の安全保障の確保に資する技術の研究開発を行う。なお、これらの研究開発の推進と共に、安全保障の視点から、関係府省連携の下、科学技術について、動向の把握に努めていくことが重要である。(以上、引用終わり)

 こちらが引用元です。⇒ http://www8.cao.go.jp/cstp/kihonkeikaku/5honbun.pdf

 さらっと書かれていますが、国として軍事研究を推進するという内容です。しかし軍事研究の何が問題なのでしょうか?誰だって人殺しの方法の研究など普通はしたくはないだろうという倫理的な問題があります。だから「自衛のためなら」というロジックが必ず出てくるのです。しかし、倫理的な問題だけでなく科学研究の本質を侵食する問題があります。 一つは研究の公開性が損なわれるということです。軍事研究は秘密性が第一ですから研究成果を公表することにも制約がかかります。当然ですね。しかし科学研究というものは広く同じ分野の研究者との議論を通して発展するものですから、公開性が損なわれれば、研究活動自体も衰退していき成果は出にくくなるでしょう。日本の大学院は、20年以上続く18歳人口の減少のため入学者が減少し中国など海外からの留学生で何とかもっているという側面があります。大学で軍事研究を行う場合は、そういう留学生は当然関与させられないでしょう。そういうコンフリクトは、ほとんどの国内の大学で起こりうるのです。

 面白いことに昨年防衛省が始めた「安全保障技術研究推進制度」では、自由に成果を社会に発表してもよいとしています。これは制度の目的が「防衛目的利用の可能性の探索」のために広く浅く研究情報を収集することが主眼なので、秘密性に関しては余りうるさくのないのでしょう。しかし、収集した情報の中で「ものになりそうな」研究テーマが見つかり、それを掘り下げる研究を推進するという段階になれば、もう秘密厳守となるはずです。今現在は公開可であっても安心はできません。


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