当事者
今日の朝日新聞の文化欄に,NHKの朝ドラ『お帰りモネ』についての記事が出ていた。
わたしは,このドラマについて,登場人物一人ひとりの台詞の内容が,「重い」という印象を持っている。
脚本を担当した足立奈緒美さんは,執筆前に宮城に足を運び,震災で受けた影響や痛みが,いろいろな立場によって全く異なることを知る。そして,間違いないと思えたことは,「人の痛みはその人にしか分からない」という,単純なことであった。しかし,足立さんは,当事者とそうでない者との間に「一線」が引かれたら,手を伸ばしても互いに触れ合うことのできない「寂しい」関係が出来上がってしまうと考え,モネの恋人の菅波医師から,「わたしにはわからない。この事実を変えることはできない。けれどわたしは心から,あなたのことをわかりたいと思っている。」とモネに語らせ,「一線」を越えさせようとしたという。
あらためて,台詞の含蓄の深さを感じた。
森山真弓さん
森山真弓さんがお亡くなりになった。
ずいぶん前になるが,カミさんと二人で新宿駅から山手線に乗ったら,前に森山さんが座っていた。わたしは,森山さんの名前の辞令を頂戴したばかりだったので,すぐ気がついた。大臣ともあろう人が,一人で山手線に乗っていることに,少し驚いた。森山さんは,カミさんに席を譲ろうとなさった。丁重にお断りした。それだけのことだが,印象に残るふれあいで,時々思い出す。
ご冥福を祈ります。
稲 藁
昔ならただで貰へた稲藁に三百円の値札つきたり
長野県 千葉俊彦様 (10月17日 朝日歌壇より)
コンバインによる刈り取りが始まる前は,刈り取った稲は束ねて稲架掛けし,脱穀した後の藁を草履,筵,俵などの藁細工に利用した。子供のころ,藁束をもって村の藁細工小屋に行き,草履を編んだのは懐かしい思い出だ。
今は,コンバインで稲を刈り倒し,籾だけ運んで行って,藁は田んぼに捨てられている。