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歴史に学べば、見えてくる

2022年10月27日 | 読書
 「歴史に学ぶ」という点で共通項があり、現状の乗り越え方について考えさせられる新書を二冊読んだ。


『生贄探し 暴走する脳』(中野信子・ヤマザキマリ 講談社+α文庫)

 世界史、中世の知識がもう少しあればより楽しめたかもしれない。多様な心理模様を語る脳科学者と、イタリアと日本を行き来する人気漫画家の対談はシビアだ。「魔女狩り」を切り出しに、現代日本社会の闇を突く。人間の脳は他との比較によって楽しみを得ようとすることを止められないという結論にどう対するか。

 ヤマザキは異質なものに対して「まずはそれを興味深く、面白い現象として受け入れてみればいい」という。つまりは好奇心と想像力。個人的には衰えをどう食い止めるかが焦点か(笑)。「生贄」で浮かんだのは、先日NHKで放送されたドラマ『山女』。飢饉にあえぐ東北寒村で追いつめられた人間の怖さ、極限を見た。



『孤独のすすめ』(五木寛之 中公新書ラクレ)

 老齢になっても人気作家であり続けるのは、相応の魅力に惹かれる者が多いからだ。繰り返しの言述にもどこかに変化球を入れて、楽しませてくれる。「下山」という語を世に知らしめたのは著者だと思うが、それは個の人生だけでなく、この著では我が国の社会全体がその時期にあるという認識が強く打ち出されている。

 「心配停止社会」と名づけた見事さに頷く。古代ローマを引き合いに「パンとサーカス」つまり権力者から与えられる「食糧と娯楽」に麻痺している現状を憂う。そこから堕する筋道を「嫌老社会から賢老社会へ」というスローガンで提言し、具体的な内容も示している。どこへ力を注ぐべきかが見える。


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